大いなる磁石、地球


デビッド P. スターン

コルチェスターのウィリアム・ギルバートの著作、
『磁石論』出版400周年を記念して




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William Gilbert
 ウイリアム・ギルバート
     今からおよそ400年前の、西暦1600年のことです。後にイギリスの女王エリザベス1世の侍医となったウィリアム・ギルバート(William Gilbert)が、『磁石論』という壮 大な著作を出版しました。それは、方位磁針が北を指すという不思議な性質に対して、地球そのものが巨大な磁石で あるからだという合理的説明を初めて与えた書物でありました。その意味で、ギルバートは、近代物理学・近代天文学の新たな時代を切り拓いたパイオ ニアでした。『磁石論』は、ガリレ オ、ケプラー、ニュートンなどの偉業に代表される科学の世紀、17世紀の幕開けに、まさにふさわしい書物であったと言えるのです。
     も し、皆さんが1600年当時のロンドンに住んでいたとしたら、『磁石論』を7シリング6ペンスで購入することが出来たことでしょう。当時の科学界ではラ テン語が使われていたため、この書もまたラテン語で書かれています。この時代に生きていた人々だけが、グローブ座で上演されたシェークスピアの初回公演 を、 お金があればバルコニーに座って、お金がなくてもステージの前に立って観劇するという貴重な特権を享受することができたわけですが、代わりに、夏などはペ ストの恐怖に怯えて過ごさなければならない時代でもあったのです。
このサイトでは、1600年当時のロンドンの簡単な紹介も含めて、ギルバートとその著書『磁気論』についてご紹介します。そのほか、 ギルバート以前の時代の、磁気に関する研究についても述べたいと思います。さらに、ギルバート以後現代に至るまでの、地磁気の研究の概観、例えば、
  • ハレー、クーロン、エールステッド、アンペール、ガウスによるすばらしい発見の数々
  • 太陽黒点の活動と地磁気との間の意外な関係
  • 地磁気の原因と考えられている、地球の深部で起こっている「ダイナモ作用」
  • 地磁気の極性の逆転という奇妙な現象
  • 大陸移動の証明に貢献した地磁気
  • 地球周辺の宇宙空間、さらには他の惑星にまでその研究対象が広がった地磁気研究
などについてもご紹介します。さあ、科学史の中でもまれに見る、感動的な冒険の物語に出発しましょう!

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原著者:   Dr. David P. Stern
原稿更新日: 2004年9月23日

   翻訳者: 佐納康治・能勢正仁・二穴喜文・永田大祐・家森俊彦
掲載責任者: 家森俊彦
  メール   iyemori(アットマーク)kugi.kyoto-u.ac.jp
最新更新日: 2008年11月19日