地磁気の逆転と大陸移動



大陸と海洋

 水に覆われているところも含めて、地球上の全ての地域の海抜高度を表にしてみると、面白いことが分かります。海抜高度は滑らかには分布しておらず、ある特定の2 つの値の付近に集中する傾向があることが分かるのです。

 陸地の大部分はせいぜい数百メートルまでの海抜高度であり、一方ほとんどの海洋の底は約3キロメートルの深さとなっています。これらの中間に当たる、1キロメート ルくらいの深さの海底は非常に少くなっています。例えば地図を見てみると、アメリカ合衆国の周りの海洋では大陸からある一定の距離のところまでは少しずつ深くなって いきますが、ある所で突然深くなってそのままになります。

 これはどういうことでしょうか?つまりこれは、地球の表面が滑らかな1つのつながりで、たまたま一部が水の上に出ているというようなものではな いということを意味します。地球の表面は2つのタイプに分かれ、各地域はそのどちらかに属するのです。海洋は一様に深く、一方、大陸は水の上に出る(または端が浅い海に覆われている)くらい分厚いばらばらの塊なのです。

     アルフレッド・ウェゲナー

大陸移動

 20世紀の初頭を生きたドイツの北極探検家で、地球物理学者でもあったアルフレッド・ウェゲナー(Alfred Wegener)は、大陸と、海氷が割れてできる北極海の浮氷とが似ていることに気が付きました。割れて離れた浮氷同士が割れた部分でぴったりと合うように、アフリ カ大陸と南米大陸などいくつかの大陸の海岸線はぴったりと合致します。これらの大陸も、元は一緒だったのではないでしょうか?

 ウェゲナーはこの他にも、ぴったりと合う大陸の海岸線の双方の側で岩石の組成が一致するなどの対応を発見して、大陸も浮氷のように漂っていくという、「大 陸移動」の理論を1918年に発表しました。ウェゲナーは、大陸がもっと深いところにある層の上に浮かんでいて、100万年以上かけてその層が厚い流体のように動い て大陸が移動すると考えました。そのエネルギー源は、おそらく地球内部の熱でしょう。

  ウェゲナーの説は、従来の地球物理学者たちからは猛烈な反対を受けました。特にイギリスのハロルド・ジェフリー卿は、地球の深部は流体では ないと指摘し、提案された移動という考えに強固に反対しました。ウェゲナーが1930年の北極遠征中に不慮の死を遂げて以後は、ウェゲナーの説を支持する のは、ごく一握りの人々だけとなりました。大陸移動説は、決定的証拠に欠けていたからです。しかし後年、地磁気がその決定的証拠をもたらしました。 

地磁気の逆転

 火山から溶岩が噴出すると、溶岩は固まって岩石になります。ほとんどの場合、それらは玄武岩として知られる黒い岩石で、溶鉱炉から出てきた鉄と同様にかすかに 磁気を帯びています(このような過程があることは、ギルバートもすでに気付いていました)。そしてその帯磁は、溶岩が冷えたときのその場所での地磁気の方向を向いているのです。

  ある種の装置を用いれば、玄武岩の磁気を測定する事ができます。そこで、火山が過去において何度も溶岩を噴出しているならば、それらの磁気を調べて、過去 に地球の磁場の方向がどのように変化したのかを調べることができます。驚くべきことに、ある時期の溶岩の中には、現在の地磁気と逆向きに帯磁しているものが発見されました。いろいろな説が提案されましたが、あらゆる観点から検討した結果、遠い昔に実際に何度か地球の磁場が反転したと考える以外に、それを説明することはできないと結論付けられました。

ちなみに: このウェブサイトでは、地磁気の逆転について以下のような質問をよく受けます。
  地磁気の逆転は地球上の生命に危険を及ぼすのですか?
  地磁気の逆転は近いうちにまた起こるのですか?
  地磁気の逆転はどれくらい素早く起こるのですか?
こ のような質問に対する答えについてはこちらをクリックしてください。


海底の磁場

  大西洋中央海嶺
 1950年代に電磁式磁力計が開発されました。方位磁針を使った古い機械と違って、新しい磁力計は飛行機や船で曳航することができました。石油会社は石油の埋蔵場所を探すために、すぐに 飛行機に磁力計を乗せて岩石の弱い磁場を測り、それを地図にしました。しかし、陸地では磁気の模様はごちゃ混ぜで、意味のある規則性はありま せんでした。

1960 年ごろになってこれらの測定の範囲を海にまで広げると、驚くべき違いが明らかになりました。海底では、磁場は規則的な帯状の構造をしていたのです。特に 大西洋 の海底の縞はすべてが大西洋中央海嶺に平行になっているようでした。大西洋中央海嶺は、ヨーロッパ−アフリカ大陸とアメリカ大陸との中間に位置するほぼ南北に(いく らかジグザグに)走る海底火山の山脈です。その周辺では地震が集中的に発生したり、火山島がいくつかあることで注目されており、より最近では潜水艇による 調査で時折海底火山の山頂から溶岩が流れ出しているのが観測されています。

                海底の磁場     (USGSの図より)


磁 気の帯は大西洋中央海嶺に平行になっているだけでなく、その構造と分布が海嶺の両側で明らかに対称になっています。たとえば海嶺からある距離だけ東に行っ た所に狭い幅と太い幅の磁気の帯のペアがあるとすると、海嶺から同じくらいの距離だけ西に行った所にも同様のペアがあり ます。しかも、そのペア同士は、鏡に映したように海嶺をはさんで裏返しになっているのです。

海洋底拡大

 この不思議な帯は、1962年にローレンス・モーレイ(モーレイの論文は推論に過ぎるということで雑誌に掲載拒否された!)と、それとは独立にドルモン ド・マシューズおよびフレッド・ヴァインによって説明が与えられました。モーレイやマシューズたちは、海底が毎年数センチの割合で中央海嶺か ら引っ張られて、一定の移動をしているという説を提出したのでした。

 大西洋中央海嶺の両側のプレートが引っ張られると、溶岩が間から流れ出て固まって、そのときの磁場を「記録」します。 新しく作られた玄武岩は、プレートにくっついて一緒に引っ張られます。片方はヨーロッパとアフリカの方へ引っ張られ、もう片方はアメリカの方へ引っ張られます。平 均で50万年に一度地磁気が反転し、海底の磁場も反転します。それぞれの帯はそれゆえいずれかの磁場の極性の時代を表し、対称性も同時に説明されます。まるで 海底は巨大なテープレコーダーであるかのようであり、一対のテープが大西洋中央海嶺から出てきて、出てきたときの地球の磁気を記録し、互いに反対の方向に動いて いくのです。似たような磁気の帯は、他のすべての海洋でも見つかりました。

      海底の拡大 (USGSの図より)

 もし海底が動いているとすると、丁度ウェゲナーの考えたように、海底に隣接する大陸もそれとともに移動することになります。ウェゲナーの考え方との主な違いは、大陸は半流体に浮いて漂うのではなく、 その流体中の「ベルトコンベヤー」の上に載っているという点です。ベルトコンベアーの役割を果たすプレートは、海洋の中央部から出てきて、少なくともそのうちのいくつかは日本の近くやカリブ海にあるような深い海溝に再び沈んで行きます。

 地球の地殻の形成に関する科学は、テクトニクスの名で知られています。上で説明したメカニズムこそが、「プレートテクトニクス」の真髄です。地球の地殻は常に配置を変える個別のプレート群で構成されていて、時により、各プレートは大陸の全部または一部を運ぶのです。そして、これらのプレートの運動 は、地球内部の熱によって駆動されているのです。

 たとえば、カリフォルニアに接する太平洋プレートは北に動きながらゆっくりと回転しています。カリフォルニアの端はそのプレートに密着していて一緒に北 に動いていますが、北米大陸自体は北には動いていません。そのため、両者の接合部分では、一方が他方に対してずれていくことになります。また、 この接合部分は有名なサンアンドレアス大断層の一部に続いています。


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さらに興味のある方は

  合衆国地質調査所(USGS)から、ジャクリーヌ・キオウス、ロバート・ティリン著『生きている地球』という本が1966年に出版されました。この本は全体がウェブに掲載されており、ここから見ること ができます。この本は(このページで引用したものを含めた)多くのイラストとともに、分かりやすい言葉で書かれており、しかも、プレートテクトニクスについて、このページよりもずっと厳密かつ正確に記述されています。多くの興味深い節がありますが、その中の一つでアルフレッド・ウェゲナーの 生涯と業績が描かれています

 地球物理学がご専門の方は:
"Brunhes' Research Revisited: Magnetization of Volcanic Flows and Baked Clays," by Carlo Laj, Catherine Kisel and Hervé Guillou, Eos (Transactions of Amer. Geophysical Union), 27 August 2002.


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原著者:   Dr. David P. Stern
原稿更新日 2002年11月14日