加速、または、加速度 (acceleration):
力学の用語(自由落下やニュートンの法則)で、加速度は物体の速度の変化のこと。
磁気圏、太陽、宇宙物理の分野では、加速とはしばしばオーロラの
電子や放射線帯のイオンなどが大きなエネルギーを
得ることを指す。
アルファ過程
(alpha processes):
(磁場の)増幅 (amplification (of a magnetic field)):
導電性流体中で弱い磁場を強くする過程。太陽では磁力線の
引き伸ばしが磁力線の保存と相まって磁場を増幅する。
反ダイナモ理論
(anti-dynamo theorem):
カウリングの定理の別名。軸対称な自励ダイナモは存在しないという定理。
*オーロラオーバル
(auroral oval):
いつでもオーロラが見える地域のこと。典型的には磁極から3度夜側に中心を持つ
半径約2,500kmの円形の帯の形をしている。地磁気嵐のときに広がり、地磁気静穏時には縮まる。
*オーロラ帯 (auroral zone):
長年にわたるオーロラ観測に基づいて定義された、平均的にオーロラが見えやすい地域のこと。
磁極を中心とする半径約3,000kmの帯状をしている。いろいろな規模のオーロラオーバルの出現位置
を平均したもの。
*オーロラ (polar aurora):
極光とも呼ばれる。主にオーロラ帯において
空に見られるほのかな光。大気中の原子に電子が衝突することにより発光する。
普通、エネルギー3000〜15,000電子ボルトの電子に
よって高度100km付近に現れる。ほとんどのオーロラは酸素原子から出る光である緑色か赤色
を呈している。
地上から見えるオーロラ弧を作る電子は、磁気圏内で
地球と宇宙をつなぐ電流によって加速されている。
しばしばオーロラオーバルを取り巻く環状の領域として
人工衛星から観測されるオーロラを構成している電子は、地球の磁気圏
尾部からやってきたものである。それらの光はとても暗いので肉眼では見えない。
玄武岩 (basalt):
火山の溶岩が冷えて固まったときに普通に見られる黒い岩。
玄武岩はそれが冷えたときにあった磁場の方向に微弱に磁化している。
*彩層 (chromosphere):
太陽において、光を放つ光球直上の大気の層。およそ高度5000kmにある。
皆既日蝕のときに赤い層として肉眼でもみえる。
太陽表面ではその光は光球の光にまぎれてしまうが、特定の原子によって出されるスペクトル線のみを
透過するフィルターを用いて観測できる。
彩層はフレアや他の活発な太陽活動が起こることや高温のコロナへ
と遷移していく領域として興味深い。
Coition:
磁石の間に働く引力を表すために、ウィリアム・ギルバートによって作られた造語。現在では死語となって
いる。
ギルバートはいかなる力も対称であることを知らずに、磁石の引力の対称性を強調しようとした。
大陸 (continent):
地表の巨大な土の塊。重く、より深部にある岩石圏のプレートの上に浮かぶ花崗岩の板。
大陸移動(説)
(continental drift):
アルフレッド・ウェゲナーが1915年に提唱した理論の名前。この理論によりウェゲナーは、
大陸はより深い層の上に乗っているだけではなく、北極海の流氷のようにゆっくりと動くと主張した。
(地球の)核
(core (of Earth)):
地球の中心を取り囲む球状の高密度の領域。地震波の伝播を調べることで、核は流体であることが
判明した。また密度の推定値から、核は融けた鉄でできていると推測された。
現在では流体核の中にさらに小さな固体の"内核"が存在することが示されている。
熱を発生し、電流を流すことができる流体核は、地球磁場のダイナモ理論の構成要素の
ひとつになっている。
*コロナ (corona):
太陽大気の最も外側の層。光球面から5,000kmの高度から始まる。
コロナの外側は太陽風とつながっている。
コロナは非常に高温であることが、多くの電子を剥ぎ取られた原子(鉄の場合13個)から
発される光によって明らかになった。それらの原子は100万度以上のガスの中でもまれているらしい。
その熱源はいまだ論争中である。コロナは非常に高温なので宇宙空間からエックス線と極端紫外光(??用語チェック)で
観測できる。地上からはコロナ全体は皆既日蝕のときに数分間しか観測できない。
内側のコロナは適切なフィルターを用いて観測することができる。
*コロナホール (coronal hole):
遠紫外光やX線の長波長側で太陽コロナを見た時に現れる暗い領域。
コロナホールから出た磁力線が太陽表面に戻らないことから、高速の太陽風粒子の
源と関係していると考えられている。太陽表面のほとんどのところではコロナホールは
変形したり不規則に現れたりするが、太陽の極域では常にコロナホールがあるようである。
*コロナ質量放出
(CME:coronal mass ejection):
時々太陽から引き出される巨大な高温プラズマの雲。CMEはイオンや 電子を加速する。しばしば衝撃波面を前面に伴いながら惑星間空間
を
移動し、時には地球の公転軌道あるいはそれ以遠にまで達することもある。
衝撃波が地球に到達すると、磁気嵐が起こることがある。
コロナストリーマー (coronal streamers):
皆既日蝕時や、それと同等の効果を用いた宇宙空間からの写真に見られる太陽コロナの長い筋。
コロナストリーマーは太陽の磁力線に沿って
曲線を描いていると考えられている。
(地球の)地殻 (crust (of Earth)):
地球の岩石の最も外側の層。厚さ約30kmと、比較的薄い層である。
地磁気偏角 (magnetic
declination):
コンパスの針が示す磁北と、地軸の方向の水平投影である真の北とのずれ。
伏角 (dip angle):
磁場が水平面となす角。如何なる方向にも向けられる磁針か、磁気的東西に沿った水平の旋回軸を
持つ磁針を備えたディップサークルという測器を用いて測定される。
磁気双極子 (dipole):
2つの磁極を持つ磁場
のまとまった源。
小さな棒磁石やコイルまたは電流ループは双極子場を作る。
地球の磁場は、粗い近似としては地球の中心近くにある双極子場と類似している。
ダイナモ (dynamo):
発電機とも呼ばれる。導体と電磁石の相対運動によって電流を作る機械。
地磁気の用語では、自然に発生して電流を生成する磁場中の流れのことを指す。
自励ダイナモは生成された電流がダイナモが働く際の磁場を作るダイナモ。
ダイナモ過程 (dynamo process):
電流を通す流体中において、熱対流など他のエネルギー源によって流体運動が駆動され、
その流体運動によって磁場を発生させること。
ダイナモ理論
(dynamo theory):
流体ダイナモの理論。最初、運動学的ダイナモ理論はダイナモ過程そのものが可能で
あるかどうかを論じたが、数十年の研究の結果、可能であることが示された。
磁気流体ダイナモ理論は自己無矛盾な圧力と力の構造をも満足する
ダイナモを探究している。
流体ダイナモ (fluid dynamo):
電荷 (electric charge):
イオンと電子が
互いに引き合ったり、同種の粒子が反発する性質。
電子の電荷は負(-)の電荷と呼ばれ、イオンの電荷は正(+)の電荷と呼ばれる。
ガラスや毛皮や布は互いに擦ると電荷を帯びる。電子は一方の物質から他方の物質に移る。
正と負の電荷は化学反応によっても分離できる(例:電池)。
ベンジャミン・フランクリンが電荷の研究と命名に果たした役割については *こちらを参照。
電流 (electric current):
電気を通す物質中の連続的な電荷の流れ。電流はイオンまたは電子によって運ばれる。
電流は普通、最初も最後もない閉じた回路を流れる。日常生活では電流は一般的に電池や
発電機によって作られる電圧によって銅線中を流れる。
宇宙プラズマ中の電流も同様に流れることがあるが、イオンや電子が磁場中で動く
方法(ドリフト)によっても流れる。
電気 (electricity):
電荷と電流の口語的表現。日常生活中で、電荷と電流はそれぞれ物質に付着したり
物質中を流れる流体としてみなされる。語源は、ギリシャ語で琥珀を示す"elektron"に由来する。
琥珀は乾いている時に軽く擦ると(静電気によって)小さなものをひきつけることができる。
古代ギリシャ人とローマ人は既にそのような引力について知っていた。
しかし、ウィリアム・ギルバートがそのような物質を"electricks"と呼んだことが、
現在の用語の基となった。
*電子 (electron):
負の電荷を運び、あらゆる原子の中に存在する軽い粒子。電子は光や衝突によってエネルギーを
得たり、原子から剥ぎ取られたりさえする。電子は固体中やプラズマ中の多くの電気的現象に関係
している(1897年の電子の発見については*こちらを
クリック)。
強磁性 (Ferromagnetic):
鉄のような物質は一時的または恒久的に強く磁化される。
ウィリアム・ギルバートはそのような物質を「マグネティクス」と呼んだ。
*場 (Field):
「ば」と読み、ある特定の力が観測される領域のこと。力の種類に応じて、重力場、電場、磁場
(または両者が速い振動によって結ばれる時は電磁場)、核力場のことを言う。
物理学の法則によると、場は観測される力の可能性以上のものを表し、
エネルギーや運動量さえも場は伝達する。例えば、光波は場で完全に記述される現象である。
そういうわけで、場はしばしば場を表す力の源によって変形した空間と見なされる。
電場 (electric field):
電荷の近くなど、電気力が観測される領域。場を参照。
電磁場 (electromagnetic field):
電流、電磁石や放送アンテナなどの近くの空間。電気力と磁気力が働く空間。
時間変化しない電気的現象と磁気的現象はそれぞれ電場と磁場のみで扱えるが、
電波や光のような波動現象は時間変化する電場と磁場の固い相互作用を含み、
電磁場の表れとみなされる。場を参照。
閉じた磁力線 (closed field line):
磁気圏物理学の言葉で、開いておらず、両端が地球に接続する磁力線。
地球上のほとんどの場所に繋がる磁力線は閉じており、荷電粒子を捕えることができる。
開いた磁力線 (open field
line):
磁気圏物理学の言葉で、磁力線の片方の端が地球、即ち、高層大気の電離層に接続しているが
もう一方の端が太陽風中に広がっている磁力線。おそらくそのような磁力線は 磁
気再結合(リコネクション)を
受けたものと考えられる。プラズマとエネルギーは磁力線に沿って簡単に流れるので、
これらの磁力線はエネルギーとプラズマが太陽風から地球磁気圏に
流入することができる経路を提供している。
*磁力線の保存 (field line
preservation):
(理想プラズマを含む)完全電気伝導流体の予想された性質。
多くの宇宙環境で非常によく成り立つ。この性質によってもともと同じ磁力線上にあった2つの粒子は、
磁力線が変形したとしても、未来において同じ磁力線上にあり続ける。また、
この逆も成り立つ。即ち、異なる磁力線上の2つの粒子はいつでも異なる磁力線上にある。 (これが成り立たない事例については、磁力線再結合(リコネクション)の項を参照)
*磁力線 (magnetic
field lines):
緯度線や経度線を地球上の位置の表現に使うように、視覚的に磁場を表現する空間の仮想的な線。
空間内のあらゆる点で、磁力線の方向はその位置に置かれた3方向に自由に回転できる理想的な磁針の
指す方向を表す。また、磁力線の方向は、その位置に置かれた単磁極が感じる磁力の方向でもある。
プラズマ中では磁力線はイオンと 電子の運動を導き、時には
それらを捕えたり、電流の方向を決めたりする。
磁場 (magnetic field):
*太陽フレア (solar
flare):
太陽面上の急速な爆発。通常、活発な黒点の近くで起こることが多い。
突発的な発光(水素から発せられる赤色の輝線のみを通すフィルターを用いなければ観測困難)に続き、
X線、電波雑音や時には高エネルギー粒子が太陽から地球に届くなどの粒子加速の兆候が見られる。
黒点の磁力線からも明らかなように、フレアは光球面よりかなり高いところでの急速なエネルギー
解放と関係しているものと考えられている。同じく太陽磁場と関係していると考えられる現象に
コロナ質量放出があるが、フレアとコロナ質量放出との関係はいまだ明らかではない。
磁束 (magnetic flux):
磁力線の束に含まれる磁場のエネルギーの尺度。磁束は磁力線の束の垂直断面積と
磁場強度の積で与えられる。
磁気的に硬い物質 ((magnetically) hard materials):
地磁気伏角 ((magnetic) inclination):
(地球の)内核 (inner core (of the Earth)):
地球は球状の液体の核(外核)と、その中に外核の4分の3の半径を持つ固体の核(内核)を
持つ。内核は外核中の溶融鉄が固体化して作られていると考えられている。そのような固体化は
熱を放出するので、これが地球の内部ダイナモを支える流体の運動のエネルギー源の一つと考え
られている。
逆2乗の法則
(inverse squares law):
力が源からの距離の2乗に逆比例して減少することを示す数学的公式。
距離をRとすると、働く力は1/R2に比例する。
重力や離れた電荷間に働く力や離れた磁極間に働く力はこの法則に従う。
ここで源は点状で小さいと仮定する。しかし、一様に源が分布した球は球の中心に
ある点状の源と同じように働くことが示せる。
*イオン (ion):
普通1つ以上の電子を剥ぎ取られた原子や正に帯電した粒子のこと。
イオンは地球磁気圏における大きなスケールの電流の多くを担う。
陰イオンは1つ以上の電子を得た原子やそのようなイオンになることのできる分子のこと。
運動学的ダイナモ (kinematic dynamo):
流体ダイナモの理論において、力のバランスや他の物理的考察(熱輸送など)から流れのパターン
を導出せず、代わりに流れのパターンを天下り的に与えたダイナモ過程。
(訳者註:すべての条件を調和的に解くダイナモは MHDダイナモと
呼ばれる。MHDダイナモ理論はあまりに
難しすぎるので、粗い近似として運動学的ダイナモが論じられることがある。)
溶岩 (lava) :
稲妻
(lightning):
力線 (line of force):
マイケル・ファラデーが現在磁力線として
知られているものを指して用いた用語。
岩石プレート/地殻プレート(Lithospheric plates)
厚い岩盤からなる大きな地殻の塊。大陸や海洋は、その上に乗っている。
地球表面は、いくつかのプレートによって覆われている。プレート同士の相対運動
により、プレートテクトニクスが説明される。
(テイル)ローブ((tail)
Lobe)
地球の極域から出て、磁気圏尾部側に広がる磁力
線の束。磁力線の一端は北磁極の付近に、もう一端は南磁極の付近につながる。
テイルローブは希薄なプラズマから構成されており、サブストームの
際に放出される磁気的エネルギーを蓄えている場所である。
天然磁石(Lodestone
(Loadstoneとも綴られる))
強い永久磁化を獲得している、珍しい鉱物。
長年にわたり、人類は、天然磁石以外に磁場を作るものを知らなかった。
天然磁石は、細粒状の磁鉄鉱からなり、雷撃によってその強い磁化を獲得したと考えら
れている。
磁気ボーデの法則(Magnetic Bode's law)
ボーデの法則とは、太陽から各惑星までの距離を近似的に表す経験則であるが、
その必然性を説明する理論はない。同様に、惑星の大きさとその磁場の強さ
との間に近似的に成り立つ関係式は、磁気ボーデの法則と呼ばれており、
やはり、理論的後ろ盾のない経験則である。太陽系内で一番大きな惑星である木星が、
太陽系の惑星の中では最も強い磁場を持ち、二番目に大きな惑星である土星は、
惑星の中で二番目に強い磁場を持つというように、一定の法則性は認められる。
しかし、地球よりもほんの少し小さいだけの金星にほとんど磁場がないことや、
金星よりもはるかに小さい水星が磁場を持っているなど、この法則が必ずしもい
つも成立しているとは言えないと見る向きもある。
(訳者註:磁気ボーデの法則は、元々、惑星の自転による角運動量と、
その惑星の磁場の強さとの関係を表す経験則であった。従って、惑星の大
きさのみと磁場の強さを考えているわけではない。惑星の大きさ、質量、自転周期などと、
磁場の強さとの関係を表している。たとえば、地球と金星とはほぼ同
じ大きさであるが、金星の自転速度は極めて遅い。そのために、ほとんど
磁場を持たないと考えることもできる。)
磁気誘導(Magnetic induction)
この言葉は、誘導磁化と電磁誘導の両方の意味に用いられる。
後者は、大雑把に言えば、導体(電気伝導性を持つ物質)に時間変動する磁場が加わると、
導体内に渦電流が流れる性質であると定義できる。磁場の強さそのものが時間変化しても電
磁誘導は起こるし、導体が磁場に対して相対運動しても起こる。ダイナモ過程は、
このようにして流れる電流によって担われている。
磁極(Magnetic pole)
(1)
棒磁石の磁極と言う場合には、棒磁石の両端の、あたかもそこから磁力線が発せられて
いるように見える点を言う。棒磁石の磁極は常にN極とS極のペア
で現れる。実際には、磁力線は棒磁石の磁極から発せられているのではなく、
棒磁石の両端からその中に吸い込まれて、棒磁石に沿うように収斂するのであっ
て、棒磁石の内部にも磁力線が通っている。
(2)
地球の磁極と言う場合には、あたかも方位磁針が指し示すと思われる、地球上の2点を指す。
磁極において、方位磁針は垂直となる。地球では、磁極の位置は地
理的な極(自転軸が地表と交わる点)にかなり近いが、同じではない。
天王星や海王星では、磁極の位置は、地理的な極から非常に離れている。
磁気(スカラー)ポテンシャル(Magnetic (scalar) potential)
空間内のある点における磁場は、ベクトル量
である。そのため、例えば大きさと水平・垂直方向の向きなど、3つの成分を指定しなければ決まらない。
しかし、地球近傍など、電流が流れない空間における磁場について
は、1つの成分だけで指定できるという、簡単かつ特別な性質を持つ。重力場と似た性質である。
磁気スカラーポテンシャルは、地球の磁場を表現するためにガウスによっ
て導入され、球面調和関数の級数によって表されている。
この表現方法は、現在でも使用されている。
磁気嵐(Magnetic storm)
磁気圏内に発生する大規模な擾乱であり、
多くは、太陽からの惑星間空間衝撃波の到来が引き金となって起こる。
磁気嵐が発生すると、磁気圏尾部から大量のイオ
ンが地球近傍の磁気圏に流入し、赤道環電流を増強する。
赤道環電流が強ければ強いほど、オーロラ帯は赤道側に広がる。
特に大きな磁気嵐の場合、オーロラがめったに見られない中緯度でもオーロラが見られる幸運に
恵まれることがある。流入した多量の粒子によって強められた赤道環電流は、
地球磁場とは逆向きの磁場を作り、そのために地表の磁場強度は通常12時間程度の短い時間内に
急速に弱められる。その後、数日という長い時間をかけて、ゆっくりと元の磁場強度に回復していく。
誘導磁化
((induced)
Magnetization)
鉄や、その他の磁性体が、磁
石の近くに置かれたときに磁性を獲得すること。磁気的に
軟らかい磁性体の場合、この磁化は一時的なものであり、磁石から引き離されると磁化を失う。
磁化する(Magnetize)
磁気を帯びさせること。永久磁石や電磁石などが作る強い磁場の中に物質を置いたときに、
その物質は磁化することがある。磁性体が加熱された後、冷却する過程においても、
磁性体は磁場を獲得して磁化する。熱した鉄や、玄武岩質の溶岩などがその例である。
磁力計(Magnetometer)
磁場の強度や方向を測定する装置。
人工衛星や惑星探査機などは、大きさと方向とを決定できる3成分を測定できる
フラックスゲート磁力計を搭載することが多いが、フラックスゲート磁力計は
校正が必要である。
ルビジウムを用いたアルカリ蒸気磁力計は、磁場の大きさだけしか測定できない代わりに、
原子定数を利用した磁力計であるため絶対測定が可能であり、校正を必要としない。
フラックスゲート磁力計
((Fluxgate) Magnetometer)
磁性体の飽和磁化を利用した磁力計であり、非常に高感度にできる。
プロトン歳差磁力計((proton precession)
Magnetometer)
磁場中におけるプロトン(水素原子核)の歳差運動の周期を利用して磁場強度を測定する磁力計。
プロトンは小さな磁石であり、その双極子モーメントは、(プロトンの質量がそうであるように)
普遍的な物理定数である。このため、磁場中でのプロトンの歳差運動の共鳴周波数を測定することにより、
磁場強度を決定できる。これは絶対測定であり、比較校正を必要としない。
オーバーハウザー効果磁力計((Overhauser effect)
Magnetometer)
前項のプロトン磁力計に使用される励磁物質にある種の化学物質を加えることで、
感度が大幅に改良されることがわかった(オーバーハウザー効果)。これを利用し
た磁力計である。
(訳者註:実際には、オーバーハウザー効果は、単に化学物質を加えただけでなく、
その上で、ある種の高周波磁場を印加することにより、空間
的に近接したプロトン間に相互作用を生じさせ、感度を向上させている)
光ポンピング磁力計((alkali vapor) Magnetometer)
プロトン磁力計と同じように、原子核の共鳴過程を利用した磁力計であり、
従って、比較校正を必要としない絶対測定が可能である。ルビジウムやセシウムなど
のアルカリ金属の蒸気をガラス管に封入し、これに特定の波長の光を当てながら高周波磁場を
印加する(この高周波磁場は、測定したい磁場とは別に、人工的に
加える磁場である)。高周波磁場の周波数を変えていくと、特定の波長の光が吸収されることがある。
そのときの高周波磁場の周波数から、周囲の磁場の強度が測定できる。
(訳者註:アルカリ蒸気磁力計と呼ばれることもあるが、日本では、
光ポンピング磁力計の名称が一般的である。磁場中のゼーマン効果を利用し
た磁力計であるが、地磁気は微弱な磁場であるため、ゼーマン効果による準位の偏移は極めて小さく、
これを直接測定することは困難である。ゼーマン効果で分離した2つの準位に属する粒子数は、
当てる光が円偏光している場合、個数密度に不均衡を生じる。この個数密度の不均衡を利用して
粒子の共鳴を引き起こし、その共鳴周波数(ラーマー周波数)を測定することにより、
磁場強度を測定している)
磁気圏界面
(Magnetopause)
磁気圏の境界面のこと。地球周辺のプラズマ(磁気圏内部)と、太陽風(磁気圏外部)との境界。
磁気圏
(Magnetosphere)
地球に属する、最も外側の環境。地球の磁場が主役を演じる領域でもある。
地球などの惑星が磁場を持つとき、その磁場によって太陽風が遮られ、
あたかも太陽風内に空洞のような領域が形成される。この領域の中には放射線帯などが存在し、
多様かつ複雑な現象が起こっている。地球のみならず、磁場を持つ惑星であれ
ば、その周囲の空間に磁気圏が形成される。
磁気圏尾部
(Magnetotail)
磁気圏の、地球から見て夜側の部分を指す。太陽風によって吹き流され、
尾をたなびくように長く伸びている。サブストームは、この磁気圏尾部、
およそ地球から、地球半径の8倍程度離れた場所から始まり、少なくとも
地球半径の220倍離れた場所においても観測されている。 プラズマシート、
テイルローブを参照のこと。
(地球の)主磁場(Main field (of Earth))
地球内部に起源を持つ磁場のこと。地球外部に起源を持つ磁場の対義語として、
研究者たちによってしばしば用いられる言葉である。
マウンダー極小期(Maunder minimum)
E. Maunderにより1900年に提唱された概念であり、1646年ごろから1715年ごろにかけての、
太陽黒点がほとんど現れなかった時期を指す。その理由は不明である。これとほぼ同じ時代、
少なくともヨーロッパでは気候が寒冷であったことが分かっており、それとの関連性が
考えられている。
MHD
磁気流体力学を表す"magneto-hydrodynamics " の略語。地球の流体核や プラズマに関する理論に応用されている。
MHDダイナモ
理論
(MHD dynamo theory)
力のバランスを考慮して、電導性流体中でのダイナモ作用を解く理論。
中央海嶺(Mid-ocean ridge)
海洋底の海嶺。火山活動性を帯びている。2枚の岩石プレートの境界でもあり、
ここから溶岩が湧き出してプレートを成長させる。そのため、プレートは、中央海嶺から両側に次第に広がって行く。 大西洋中
央海
嶺などがその典型例である。
磁石の北極(North seeking pole)
棒磁石の磁極のうち、磁石が吊り下げられた
(あるいは水に浮かべられた)状態の時に北を指す方の極。磁石のN極とも言う。
なお、地球自体を1つの大きな磁石とみなしたとき、北極はN極ではなく、S極となることに注意しよう。
地上においた磁石のN極が北を指すと言うことは、地球の北極はS極なのである。
Orb of virtue
(of the Earth)
ウィリアム・ギルバートが、地球が磁石に対して力を及ぼすことのできる空間範囲
(現在の用語で言えば、地球磁場)を指して用いた用語。「orb」とは
古い英語で球体のことであるので、現代英語で言えば、さしづめ、
「sphere of influence」とでもなろうか。
光球(Photosphere)
太陽大気のうち、可視光を放射している領
域。太陽は極めて高温であるため、物質はすべてガス、それもプラズマ状態になって
いる。
光球は約5500度のプラズマからなっている。
プラズマ(Plasma)
イオンと電子と
に電離した状態のガスで、
電気伝導性を帯びている。完全電離したプラズマ以外に、
地球の電離層大気や蛍光灯内部のガスなど、中性粒子を含んだ
不完全電離プラズマ(弱電離プラズマ)も存在する。
プラズマシート(Plasma
Sheet)
磁気圏尾部のうち、赤道面近くの、比較的密度
の高いプラズマと弱い磁場からなる領域。磁気圏尾部内の テイルローブは、プラ
ズマシートによって2つの領域に
仕切られている。サブストームの起こる場所であり、 オーロラの源となる場所でもある。
プレートテクト
ニクス
(Plate tectonics)
中央海嶺で作られた
岩石プレートがゆっくりと移動し、最終的には海溝に沈み込むという理
論。
プレートの運動が、大陸や海洋の移動を引き起こす。
極移動説
玄武岩に記録された化石磁場の方向を調べると、その当時の地磁気極
の位置が推測できる。その位置は、化石磁場の年代により、異なる地磁気極の場所を示した。
地磁気極が地理的極の付近にあると考えるならば、これは、地球の自転軸が時代とともに
移動したことを示唆する。これが極移動説である。極移動説は、1950年代初頭には広く
受け入れられていたが、現在では否定されている。
(訳者註:もちろん、実際には極が動いたのではなく、
大陸の方が移動したためにそう見えたのである。)
ポロイダル場(Poloidal field)
2種類ある磁場のモードのうちの、1つのモードを指して言う用語。ダイポール磁場を始め、
地表で観測される磁場は、ポロイダルな磁場である。地球の流体核内には、
もう1つのモードであるトロイダル場も存在している。
(訳者註:磁場には、電流が流れている領域内に閉じ込められている磁場のモードと、
電流が流れている領域外にも広がる磁場のモードとの2種類がある。前者がトロイダル磁場、
後者がポロイダル磁場である)
放射線帯
(Radiation belt)
高エネルギー粒子が、地球磁場に捕獲されて集積している領域。
*(内、外)放射線帯((inner,
outer) Radiation belts)
地球磁場に捕捉された高エネルギー粒子は、2つの放射線帯を形作る。内放射
線帯と外放射線帯である。これらは、その場所が異なるばかりでなく、
構成する粒子の種類、エネルギー、そして、放射線帯の生成原因
が異なっている。
内放射線帯は、およそ10MeVから50MeV(1MeVは100万eV)程度の高エネルギー
プロトンからなり、宇宙線に
よって作られている。宇宙線として地球に飛来する粒子は非常に高いエネルギーを持っており、
この粒子が地球大気に進入したときに、大気中の原子と衝突して、大気中の原子を大きく
跳ね飛ばす。宇宙線の粒子が、地球大気に対して深い角度で入射した場合は、宇宙線粒子との
衝突で大気中の原子が跳ね飛ばされても、それらは地球方向に向かい、宇宙空間へは出て行かない。
しかし、もしも、宇宙線の粒子が、地球大気に対して非常に浅い角度で入射したならば、
跳ね飛ばされた大気中の原子の中には、宇宙空間に向かって出て行くものが出てくる。
宇宙線粒子との衝突で、大気中の原子が分解されて原子核になったとすると、
その中には中性子も含まれている。中性子は電荷を持たないため、地球磁場には影響されず、
直進することができる。そのため、宇宙線粒子との衝突の後、跳ね飛ばされた方向が宇宙空間を
向いていた場合、中性子は、本当に宇宙空間に向かって跳ね飛ばされてしまう。
中性子は単独では安定な原子核でないため、10分程度の半減期で、プロトン(陽子)と
電子とニュートリノとに崩壊する。しかし、半減期というのは平均値であり、中性子の中には、
わずか数秒で、プロトンと電子とニュートリノに崩壊するものも存在する。中性子が数秒以内に
崩壊した場合、中性子はまだ地球磁気圏内にいるので、中性子の崩壊によって生じたプロトンは、
その場で地球磁場に捕捉され、地球周囲の軌道を回ることになる。特に、プロトンが赤道上空
3000kmから6000kmの位置で地球磁場に捕捉された場合、軌道の安定性から、そのプロトンは
永らく地球の周りを回ることになる。このようにして、高エネルギープロトンが次第に蓄積し、
そして、内放射線帯が生成されたのである。
外放射線帯は、地球磁気圏内で加速されたプロトンと電子の両方からなり、
地球中心から、地球半径の2倍から5倍程度の距離だけ離れた領域に広がっている。
電子の最大エネルギーは、1〜2MeV程度であるが、それ以下のエネルギーの電子も多数存在する。
プロトンの最大エネルギーは1MeV程度であるが、やはり、それ以下のエネルギーのプロトンも多数存在する。
これらの電子やプロトンは、磁気圏尾部内で加速されたものと
推測されるが、そのメカニズムの詳細は、必ずしも明らかではない。また、それ以外に、 *惑星間空間衝撃波が
地球に到来した際に、
その衝撃で加速されたと思われるものも存在する。
*磁力線再結合((magnetic)
Reconnection)
プラズマ中において、2本の磁力線が相互につなぎ変わること。宇宙空間内のプラズマのように、
電気伝導度が無限大であるとみなせるプラズマ中においては、プラズマを構成する粒子は、磁力線とともに
運動する(磁力線の保存の項を参照)。すなわち、プラズマの粒子が、
磁力線を乗り換えることはないはずである。しかしながら、磁力線の再結合が起こった場合は、
例外的に、ある磁力線上にあったプラズマの粒子が、他の磁力線に乗り移ることが可能になる。
これにより、太陽風内の磁力線と、地球から発せられる磁気圏内の磁力線とがつなぎ変わり、
太陽風内のプラズマが、地球磁気圏側に流入する。すなわち、磁力線再結合は、太陽風と地球磁気圏との
間のエネルギー輸送に対して、極めて重要な役割を果たしているのである。
磁力線再結合は、宇宙空間内の磁気中性点(あるいは磁気中性線)において起こる。
前述したように、電気伝導度が無限大であるならば、磁力線再結合は起こらない。すなわち、
磁気中性点(あるいは磁気中性線)付近においては、電気抵抗またはそれに代わりうる何かが存在し、
電気伝導度が無限大ではないことを意味している。
磁場の逆転
((magnetic) Reversals)
地磁気の南北が入れ替わること。地球を磁石と見たとき、N極とS極とが逆転することを指す。
過去の地球史をひも解くと、地磁気は、おおよそ50万年程度の間隔で、南北を逆転させてきたことが分かる。
太陽の場合は、磁場の逆転は、11年周期で起こっている。
(訳者註:このようなことが可能なのは、地球が大きな電磁石であるからである。
永久磁石であれば、磁石の南北が入れ替わることはあり得ない。
しかし、電磁石であれば、地球内部の電流の向きが何らかの原因で逆転すれば、磁石の南北も入れ替わる。)
赤道環電流
(Ring current)
地球磁場に捕捉された陽イオン(最大で65000eV程度のエネルギーを持つ)と電子とが、
地球の周囲を周回運動することによって生じる電流。空間のかなり広範な範囲に広がっている。
海洋底拡大
(Seafloor spreading)
海底が、中央海嶺から
両側にだんだん離れるように動いていくこと。
地磁気永年変化((geomagnetic) Secular variation)
地磁気のゆっくりとした変動のこと。地球内部の磁場に原因がある。
磁気的に軟らかい物質((magnetically) Soft materials)
軟鉄のような物質は、永久磁石や電磁石のそばに置かれると一時的に磁化されるが、
磁石から引き離されると磁性を失う。このような物質を、磁気的に軟らかい物質(軟磁性体)と言う。
*太陽活動(Solar activity)
太陽において見られる諸現象を一般的に指す語。太陽周期とともに変動することが多い。 太
陽フレアはその一例である。
太陽周期(Solar
cycle) (太陽黒点周期 (sunspot cycle)とも言う)
太陽黒点数(および、それに関連した太陽面爆発の回数)の増減に見られる、約11年の周期。
ただし、それほど正確な周期というわけではない。太陽磁場の周期性と関係があると考えられて
いる。実際、太陽磁場自身も、11年周期で南北が入れ替わっている。
フレア(Flare)
太陽風
(Solar wind)
太陽の上層大気(コロナ)から周囲の空間に流れ出す、高速な高温ガスの流れ。
余りに高温であるため、太陽の重力を振り切って、宇宙空間に向かって流れ出している。
太陽大気と同じく、主として水素からなる。その速度は毎秒400km程度であり、
太陽から地球まで到達するのに要する時間は、4日ないし5日である。
太陽風と地球磁場が相互作用することにより、磁気圏が作られる。
太陽風はまた、オーロラや磁気
嵐など磁気圏内に起源を持つ諸現象の、エネルギー供給源でもある。
磁石の南極(South seeking pole)
棒磁石が自由に回転できる状態に吊るされた時、南を指す方の極。磁石のS極とも言う。磁
石の北極も参照のこと。
球面調和関数
(Spherical harmonics)
地磁気の磁
気ポテンシャルを、空間内の位置の関数として表すための数学的表現方法。
地磁気ポテンシャルの球面調和関数は、通常、級数展開された形で表され、
そのうち、距離の2乗に逆比例する項は磁
気双極子(ダ
イポール)を、距離の3乗に逆比例する項は磁気四重極子
(quadrupole)を表している(さらに高次の項も同様)。ダイポールの磁場強度は、
大雑把に言って距離の3乗に逆比例するが、その磁気ポテンシャルは次数が1つ減って、
距離の2乗に逆比例することに注意されたい(他の項も同様)。全地球的な磁気測量の結果は、
100項あるいはそれ以上の数の球面調和関数に対する係数群として表される。
また、地磁気永年変化は、これらの係数の時
間変動として表される。
(訳者註:厳密には、球面調和関数とは、地磁気ポテンシャルを空間座標の関数として表現した場合の、
角度部分を表す際に用いられる関数のことである。しかし、地球電磁気学においては、距離の関数と
なっている部分も含めて、球面調和関数と言うことが多い。)
*磁気サブストーム((magnetic)
Substorm)
磁気圏尾部のプラズマが加速され、地球方向に流れ込むことにより、オーロラが生じたり、大規模な沿磁力線電流が生
じたりする現象。典型的な継続時間は、30分ほどである。
*太陽黒点(Sunspot)
太陽表面において、磁場が特に強くなっている部分。この部分は周囲の 光球よ
りも若干低温となっており、そのために黒ずんで見える。
光球よりも低温である理由ははっきりしていないが、黒点の強い磁場により、光球側から
高温の大気が流入しにくいからではないかと推測されている。黒点は、太陽表面で起こる種々の
爆発現象と密接な関わりがある。また、黒点数は、太陽周期に
呼応して増減を繰り返している。
太陽黒点周期(Sunspot cycle)
テレラ(Terrella)
ウィリアム・ギルバートが用いた、地球を模した球形の磁石。ギルバートは、
1600年に著した『磁石論』の中で、テレラの実験の詳細について記述している。また、
1900年頃、ビルケランドが行った実験に使われた球形磁石も、テレラと呼ばれた。
トロイダル場(Toroidal field)
2種類ある磁場のモードのうちの、1つのモードを指して言う用語
(ちなみに、トロイダル場以外のもう1つのモードとは、ポロイダル場である)。
トロイダル場は、特に、球体や球面であるような幾何学的形状と関係が深い。
無限に長い直線電流が、その周りに作る環状磁場(トーラス状とも言われる)などが、
トロイダル場の典型例である。太陽内部においては、ポロイダル場と差動回転(赤道と極とで異なる
自転速度であるような回転)との相互作用により、強いトロイダル場が作られている。
(訳者註:この、強いトロイダル場が太陽表面に浮き上がってきたものが、
太陽黒点磁場であろうと推測されている。)
ねじれ秤(Torsion
balance)
シャルル・クーロンにより、1776年に発明
された高感度測定装置。繊維または金属の細い糸で磁石などを吊るし、その捩れを利用して、
微小な力を測定する。クーロンは最初、この装置を用いて磁力を測定した。
その後、クーロンは、電気力の測定にもこの装置を応用し、電気力の逆2乗則を
導いた。
(訳者註:クーロンはフランスの物理学者であるが、同時代のイギリスの物理学者
キャベンディッシュとは、歴史的に奇妙な関係にあった。キャベンディシュは
(ねじれ秤とは異なる方法で)電気力に関する実験を行い、1772年に、電気力の逆2乗則を導いた。
しかし、キャベンディッシュはこれを公表しなかった。クーロンは、自身が発明したねじれ秤を
用いて実験を行い、1785年にキャベンディッシュとは独立に電気力の逆2乗則を発見した。
そのため、電気力の逆2乗則は、「キャベンディッシュの法則」ではなく、「クーロンの法則」と
呼ばれることになった。しかし、クーロンは、ねじれ秤を、重力の測定には用いなかった。
一方、キャベンディッシュは、クーロンの発明したねじれ秤を用いて、1789年に、地球の比重を測定した。
後に、この方法で万有引力定数が測定できることが分かり、ねじれ秤は非常に有名になった。
そのため、「クーロンのねじれ秤」よりも、「キャベンディッシュのねじれ秤」と言われること
の方が多くなった。)
*粒子捕獲(Trapping)
プロトンや電子などの荷電粒子を、長期間にわたり、磁力線近傍の空間内に閉じ込めること。
それほどエネルギーの高くない荷電粒子は、磁力線に巻きつくように運動するため、
磁力線に沿っての運動はできるが、磁力線から離れることはできない。
これが、磁力線による荷電粒子の捕獲である。
厳密に言うと、磁力線に巻きつくだけでは、荷電粒子の捕獲は成立しない。
なぜなら、地球の閉じた磁力線の両方の根元は地球表面に
あるので、荷電粒子が閉じた磁力線に沿って運動し、もし、地球表面にまで到達するならば、
荷電粒子は大気中の
分子と衝突して電荷を失い、磁力線による束縛から解放されるからである。
すなわち、粒子捕獲は短時間で終了するはずである。
しかし、実際には、荷電粒子は、長期間にわたって磁力線に捕獲されたままの状態を保つ。
これは、荷電粒子が、地球大気内には進入しないことを意味する。
実は、荷電粒子が磁力線に巻きついたときの巻きつき幅(ピッチ幅)は、磁場が強くなればなるほど、
小さくなるのである。そして、磁場の強さがある一定値に達すると、荷電粒子の螺旋運動の
ピッチ幅は0となってしまう。宇宙空間内で、ある磁力線に捕獲された荷電粒子は、
磁力線の周りを螺旋運動しながら、磁力線に沿って進む。磁力線は、地球表面につながっているため、
荷電粒子は、地球方向に運動する。しかし、地球に近づけば近づくほど、磁場の強さが強くなり、
そのため、荷電粒子の螺旋運動のピッチ幅が小さくなって、荷電粒子が地球に接近する速度は遅くなる。
そして、あるところまで来ると、ピッチ幅はついに0となり、荷電粒子はそれ以上進めなくなる。
そして、荷電粒子は磁力線に沿って、宇宙空間の方に戻って行くのである。磁力線の反対側の端も、
やはり地球につながっているため、同様の現象が起きる。すなわち、荷電粒子は、地球大気圏に
到達する前に跳ね返されてしまい、宇宙空間内で、磁力線に沿って往復運動を繰り返すのである。
こうして、長期間にわたる荷電粒子の捕獲が成立する。
海溝((oceanic) Trenches)
海底の中でも、最も深い部分。深い谷が長く連なったような形状をしている。
岩石プレートが運動し、再び地球内部に沈んで行く場所でもある。
一般的に言って、海溝は海岸線あるいは島嶼に平行に走ることが多く、また、
それらの海岸線あるいは島嶼は、火山に恵まれていることが多い。
日本、アリューシャン列島、南米大陸などは、その典型例である。これらの火山の溶岩は、
岩石プレートが沈み行く際に、軽い物質を遊離したものが湧出してきたものであると考えられ
ている。
変化角(Variation)
ギルバートの『磁石論』において、地理的な北と磁気的な北との間のずれの角度を
指し示して言った用語。現在で言うところの、「地磁気偏角」に相当する。
ギルバートの時代、「偏角」という用語は、他の意味に用いられていた
(天球上の位置を表す角度の1つとして用いられていた)ため、「変化角」という造語を
ギルバートは作ったのであった。
ベルソリウム(Versorium)
ギルバートの『磁石論』において、
垂直な回転軸の周りを自由に回転できるようにした針のこと。針として方位磁針を
用いれば磁力が、針として非
磁性の
ものを用いれば電気力が測定できる。
Verticity
ギルバートの『磁石論』において、鉄の棒のように磁化されうる性質のことを指す造語。
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