ロードストーン(天然磁石) |
(「De Magnete」では天然磁石を表す単語として”loadstone”が使われていますが、現在では” lodestone”という綴りが一般的です) |
もし天然磁石がなかったら? 中国人はたぶんコンパスを発明できなかったでしょう。磁気学の発見はもっと遅れたでしょ
うし、発見されるにしてもどうやって発見されたか想像もできません。コンパスがなければ、コロンブス、バスコ・ダ・ガマ、マゼランなどによる大航海時代
の発見は無かったでしょうし、世界史はまったく違ったものになっていたはずです! 化学的、鉱物学的に言えば、天然磁石は磁鉄鉱です。これは鉄鉱石の一般的な形で、鉄の酸化物であり、ビデオテー
プやコンピューターのフロッピーディスクの表面を覆っている茶色の物質の中に含まれています。磁鉄鉱は自然界ではありふれた物質ですが、天然磁石の性質を
持っていることは稀です。な
ぜ、天然磁石は磁鉄鉱の中でも稀なのでしょうか? |
最初に、ワシレフスキー博士は、すべての磁鉄鉱が天然磁石となるわけではないことを示しました。天然磁石になるには、ある組成と結晶構造が必要なのです。 しかし、仮にそうで あったとしても、ただ単に地球の磁場の中に数百年置いただけでは磁化されません。 磁化のためには、強い磁場の印加が必要です。磁場の印加は、コンピューターのフロッピーディスクやビデオテー プが記録ヘッ ドを通り過ぎる時のように、非常に短い時間で構わないのですが、その磁場の強さはある値を超えている必要があります。 |
ワシレフスキー博士は、雷が適当な磁鉄鉱の塊に落ちた時にこうしたことが起こると考えています。雷は雲にたまった電荷が放電して起こる現象 で、ほんの1秒以下の時間に大電流が流れるため、その間だけ強い磁場が生じます。 この考えを確かめる実験が、ニューメキシコ技術協会・ラングミュア研究所によって行われました。この研究
所は雷研究の中心的な研究所で、頻繁に雷が落ちるニューメキシコ州・ソッコロ近くの南ボールディー山の頂上に建てられています。ワシレフスキー博士は、雷
が落
ちるところに適当な結晶構造を持つ磁鉄鉱を置いて、天然磁石を作ることに成功しました。 ウィリアム・ギルバートはこの磁化メカニズムの手がかりをつかんでいましたが、重要な点を見落としてしまいました。で も、これは仕方がないことです。『磁気論』の中で、ギルバートはイタリアで出版された本から次のような一説を引用しています。
後になってみると、これは教会の塔に雷が落ち、鉄を磁化したのではないかと推測することができます。しかしながら、ギルバートは「鉄の かけらの端を非常に長い間、極に向けておいたため」と書いているように、地球の磁場中に長期間置いたことがその原因と考えたのです。
熱の働きによる磁化ギルバートは、鍛冶屋が熱を加えることによって鉄は磁石の性質を持つということも目にしました。
ここで「ある力」とは磁力を意味しています。この観測は非常に正確です。つまり、ある温度「キュリー点」)以上では、鉄はその磁性を完
全に失いますが、冷えてその温度以下になると、鉄は地球の極によって存在する周囲の磁性を「獲得」します。このとき獲得される磁力は、雷が落ちることで生
成される磁力に比べると強くはありません。それでも、ギルバートが観察したように、長い鉄の棒ではその両端に明らかな磁力が生じます。 地球の磁場の下で、物質の加熱・冷却サイクルによって「獲得」された磁性は、後のセクションで議論するように、プレートテクトニクスの 発見に重要な手がかりとなりました。同様のプロセスは、火星や月の表面に見られる切れ切れの磁性を生成するのに重要かもしれません。
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更に興味のある方はラングミュア研究所のホームページ(英文) には、天然磁石に関する概説も含めて、雷研究につ いての詳しい説明があります。
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原著者: Dr.
David P. Stern
原稿更新日 2001年11月25日