2つの磁石があるとき、それらの極性の組み合わせにより、それらがどのように互いに引き合ったり反発しあったりするのかについて、ギルバートは熟知してい
まし
た。
しかしその一方で、鉄は通常、磁石に引き寄せられるのみであり、反発することを知りません。これは、磁石から離されると磁力を完全に失う軟
鉄
で
さえも、その例外ではありませんでした。
ギルバートは、永久磁石の近くに置かれた鉄は、その磁石と互いに引き合うような極性を持った、一時的な磁石となる性質があるのではないかという、見事な推
測を行いました。これはつまり、例えば磁石のS極に接触させられた鉄の棒は、その側の端が一時的にN極となるので、磁石に引き付けられるのではないかとい
う考
えです。磁石の極は常にペアで現れるという性質があるので、このとき、 棒のもう一方の端は一時的にS極となり、さらにまた別の鉄を引き
付けることができるようになるのでしょう。
これは、コップに小さな鉄の針を多数入れて、そこに馬蹄形磁石を入れてすぐに引き上げてみれば、確かめることができます。磁石に直接くっついているピンが
一
番多
いことは当然ですが、よく見ると、磁石に直接くっついているピンにさらに別のピンがくっついていることに気付くと思います。
でも、それらのピンを磁石から引き離すと、ピンは再び磁力を失うのです。
鉄は、磁石の近くに置かれると、一時的な磁石となる(現在で言うところの誘導磁化) − ギルバートは、その推論を確かめるため、次のような実験を考えま
した
(挿絵参照)。2本の鉄の棒を、互いに平行になるように紐を使って、テレラの磁極の上にぶら下げます。すると、鉄の棒は互いに反発しあうの
です。テレラの影響で、2本の棒はともに一時的な磁石となるのですが、その時、同じ極性の一時的な磁石となるために、鉄の棒同士は反発しあうのです。