News and Announcements [in Japanese]


 

★地磁気センターニュース・No.33・1995年9月28日★

1.新着地磁気データ  前回ニュース(1995年7月25日発行,No.32)以降入手、または、当センターで入 力したデータの内、主なものは以下のとおりです。(観測所名の省略記号等につ いては、データカタログまたはデータベース'GEOMAG'をご参照ください。)  (1)アナログデータ    ノーマルランマグネトグラム: Sodankyla(Jun-Jul,1995), Nurmijarvi(Jun-Jul,1995) Brorfelde,Narsarssaq,Thule,Godhavn(Jun-Jul,1995) Memambetsu,Kakioka,Kanoya(Apr-Jun,1995) Niemegk(Apr-Jun,1993),Syowa-station(Jan,1993-Jan,1995) Wingst(Oct,1994-Mar,1995)    ラピッドランマグネトグラム : Kanoya,Memambetsu(1994), Wingst(Oct,1994-Mar,1995)    観測所年報等 : Niemegk(May-Jun,1995), Finnish Obs.(SOD,OUJ,HAN,NUR; Jun-Jul,1995) Tsumb(1993-94), Leirvogur(1994), San Fernando(1993) French Obs.(CLF,MBO,PPT,CZT,BNG,AMS,PAF,DRV;1991-92)  (2)ディジタルデータ 地磁気1時間値: Lunping(Jul-Aug,1995), Addis Ababa(1986-89) Chichijima(Jan-Mar,1995), Leirvogur(Jul-Aug,1995) Kakioka,Memambetsu,Kanoya(Jul-Aug,1995) 地磁気1分値: Kakioka,Memambetsu,Kanoya(Jul-Aug,1995), Lunping(Jul-Aug,1995) Kiruna(Apr-Jul,1995), Leirvogur(Jul-Aug,1995), Valentia(Apr-Jul,1995), Hatizyo(Jul-Aug,1995), Chichijima(Jan-Mar,1995) 地磁気1秒値: Kakioka(Jul-Aug,1995)  (3)Kp指数    Kp指数表(Jun-Aug,1995)  なおデータの注文等は、当センター宛、書面またはFAXにてお願いいたしま す。 2.一時間値Dst指数の算出と配布  1995年5月から7月までのDst指数(Provisional)を算出し、関係機関に 配布いたしました。またfinal Dstの1993年と1994年分も算出しました。 ご希望の方は、郵便またはファクシミリにて、京都大学理学部地磁気世界資料解 析センターまでお申し込み下さい。 3.オンラインデータベースの更新   京都大学大型計算機に構築し、N1ネットワークを通して公開サービスしてお りますデータベースGEOMAGのデータテーブルのうち、カタログ情報(デー タ収集状況および観測所情報)を納めたSDTおよびSTATは、9月20日現 在のデータに更新いたしました。また、Kp指数や太陽黒点数等を収納したDS TKPテーブルには、1995年4月のデータを追加しました(WDC-GEOMA G上のカタログも同じく更新されています)。Provisional Dst指数につきまして はこのデータベースには入力されておりませんので、当センターミニコン上のデ ータベース’WDC−GEOMAG’ (IP address: 130.54.59.254, USERNAME: wdcguest, PASSWORD: stepuser)をご利 用ください。 このデータベースからは、上記カタログ情報の他、信楽MUレーダー(京都大 学超高層電波研究センター)敷地内で行っている磁場観測1秒値も、準リアルタ イム(1−2分の遅れ)でモニターすることができます。(ソフトウェア上の問 題のため5月以降データ転送が頻繁に停止してましたが、9月13日以降この問 題は解決しております。) 4.Provisional Geomagnetic Data Plots No.12 (January-June,1995) の印刷と配布  世界各地で測定された地磁気1分値データをプロットした 'Provisional Geoma gnetic Data Plot No.12' を印刷し、配布致しました。期間は1995年1月か ら6月までです。新たに配布希望の方は、郵便またはファクシミリにて、京都大 学理学部地磁気世界資料解析センターまでお申し込み下さい。また、ポストスク リプトファイルによる画像データ(4月〜6月分)も、当センターのデータベー ス(WDC-GEOMAG)に追加しました。図の形式は印刷物と同じく2日分が1画面 になっています。 5.地磁気センターのWWWサーバーの公開と新ロゴマーク  当センターのWWW(World Wide Web)ホームページは現在構築途上ですが、試 験的に公開を始めました。アドレスは、http://swdcdb.kugi.kyoto-u.ac.jp/ です。 ホームページ作成に当たっては、京都大学大学院理学研究科学生・斉藤昭則氏お よび日立エネルギー研究所・高橋俊氏の助力を得ました。また、新規に当センタ ーのロゴマークとして、京都大学大学院理学研究科学生・橋本武志氏作成の図案 を採用いたしました。 6.ティクシー観測所(ロシア)訪問記 AE指数にデータを提供してくれている12の観測所のうち4つがロシアにあっ て、そのデータの質の向上とデータの迅速な入手が、AE指数の算出に重要な課題 となっている。その一つの方向として、ロシアの観測所から直接データを送って もらってリアルタイムでデータを収集しようという試みを以前から行ってきた。 その最初の場所として最も条件の良いと思われるティクシーからのデータ入手を 1990年にUSGS、インターマグネットと共に始めた。ところが種々の理由でな かなか実現出来ていない。  これを何とか改善したい為ロシア側の条件が全て整うのを待っていられないの で、今出来る事をやってしまい、ロシア側の努力をうながそうという事になり、 今回訪問する事になった。  現在、ティクシーには2つの観測所がある。一つはペテルスブルグのArctic & Antarctic Reserch Institute (AARI)の運営する観測所とヤクーツクのInstitute of Cosmophysical Research & Aeronomy ( IKFIA )の運営するティクシー地球物理研 究所の観測所でAARIの方はティクシーの町の東5km位の所、IKFIAの方はティクシ ーの南4km位の所にある。(持って行ったGPSで測った値はティクシー研究所の部 屋でN71 5'30" E128  今までAE-indexはAARIのデータを使用して来た。これはAARIがWDCを通して のデータ公開を受け持っており、標準観測所として絶対測定を行っている為とIKF IAが主に変化データを考えて来た為である。今回は、色々ないきさつと研究者同 士のつながりの方が国の機関(AARI)を動かすより易しいだろうという事でIKFIAの 方にお世話になる事になった。  今年はちょうどAEの問題をIUGGで説明する為の旅費を得る一つの方法として京 大後援会への応募で条件がちょうど一ヶ月分の外国旅費まで認められるとの事で、 IUGG出席(米国ボルダー)とこのティクシー行きを組合せた所、運良く通った為、 7月16日にIUGGが終わって直接モスクワに飛びモスクワでインターマグネット のロシア側実質責任者のIZMIRAN (Institute of Terrestrial Magnetism, Ionosphere & Radio Wave Propagation)のボリスベロフ氏と会い、一緒にティク シーに一週間行ったのである。  ティクシーに行くには、ヤクーツクからの飛行機、モスクワからの飛行機、又 はヤクーツクからのエナ川下りの船便しかない。今回はヤクーツクへの用はない と思ったので、モスクワからの便を用いた。この便は面白い事に国内線であるが 外国でチケットが買える便で、日本で買って行く事が出来た。調べてみると去年 のルーブル下落時に設定された価格である為、少しルーブルが戻った今、ルーブ ルで買うより円(実際はドルだて)で買う方が安い事が分かり、ボリスベロフ氏 の帰りの便については日本で買って渡した。行きの便は調べる前に買う事ができ たので、逆に少し高い値段で買ってしまったとの事であった。  7月19日深夜0:30ブヌコボ空港発の便であったが、間違ってロシア人用の長 いチェックイン列に並んだ所、ボリスベロフ氏の鞄にIZMIRANと書いてあったのを 見て一人のロシア人が声をかけて来た。その人は、ティクシー研究所の所長 セ ルゲイ・リブチュック氏であった。結局、だいぶ離れた国際ツーリスト用カウン ターに行かされたが、ロシア人でごった返した所からがら空きの入口を通り、が らがらのバスに運ばれて飛行機に乗った。後で彼には世話になったので、この時 会えて運が良かった。イガルカという所に一度止まって外へ出たら、雨で、シベ リアはずっとこんな天気かと心配した。が、ティクシーに着く直前に一転天気が 良くなって、3日間は白夜の快晴のシベリアを見る事が出来た。白夜で、昼も夜 も犬と子供たちが町を走り回っている光景が続いた。印象的だったのは、乳母車 を押して若いすらっとした女性が何人か窓の下を通っていった事であった。日 本で乳母車を押して道を歩く光景は見た事がなかったし、モスクワでも見た事は ない。それと、白夜の低い太陽でリンリンと乳母車を押す、すらっとした女性が でぶっとしたロシア人のおばさんにいつ変わるのかも不思議であった。  ティクシーの町の研究所に泊まり、観測所へは毎日車で送り迎えがあった。研 究所も観測所も古いものをなんとか使っている様子で、特に送迎の車は初めジー プであったが、エンジンが止まりそうになって走っているなあと思っていたら、 案の定、故障しどこからかバスを借りて来た。と思ったら、最後は消防車に変わ ってしまったのである。ティクシーには火事はないのかと聞くと2年前にあった きりだとの返事だった。消防の義務とかを考えると、とんでもない事だが、そう いう事が まかり通る場所なのだと考えを切り替えないといけないのだろう。ただ、 消防車がガタガタ道では一番乗り心地が良かった。  観測所はゆったりとした登りの道を辿って行く。ダダッ広い草原に古い木造の 小屋がポツリポツリと並び、アイオノゾンデ等電離層観測施設が入口付近、今は 使われていない宿泊施設が100M先、発電器や宿直のおじさんの小屋が更に100m先、 そして我々の地磁気リオメーター、光学観測の建物(これがここでは一番広く、 建て増しが多い為、複雑な構造である)と続き、100m離れて磁気センサー小屋が 2つある。更に別方向にはプレファブの宇宙線関係の施設、大気環境の施設等が 並んでおり、観測所を除くと見渡す限り、家は一件もない。観測所としてはすご く好条件の所である。ただここは、ツンドラ(永久凍土)で、土を掘ってアース を取る事も出来ず、はるか遠く(500m位)の不凍湖に銅板を沈めて、そこからア ース線をひいているとの事。苦労しているなあと思った。ツ ンドラの夏は、日本 で言う高山植物が咲き乱れ大変美しい。ここは常に北極海からの風(北風)が 吹 くのだが、このおかげで空気は大変きれいで、日本なら息をすれば鼻と言わず肺 まで汚れてしまうのに、ここで息をすれば体の中まで澄んで透明になるのではな いかと思った。夏のツンドラは蚊が襲って来ると聞いていたのだが、常に強い北 風が吹いたおかげで蚊にはほとんど悩まされなかった。  仕事は、一番心配していた送信機のセットアップは簡単に済んでしまった。こ の送信機はUSGSから提供を受けたもので、私のソフトで動作している。これはデ ータを気象衛星「ひまわり」に送り通総研平磯を経て京都に入ってくる様にする 為のものだが、残念ながらまだロシアからの送信免許が下りていないので、今回 は電波は出せずフロッピーにすいあげてもらう様に頼んでおいた。が、どの程度 操作を理解してくれているかは全く分からない。HDZ磁力計はボリスベロフ製のク バルツタイプという鏡を用いたディジタル磁力計を用意してくれたので、これを 使わざるを得なかった。ただプロトン磁力計はいわゆる田中技研製のものを今回 もって行ってセットしたが、これが輸送中の振動か何かで、入力部分のアース回 路のはんだが外れていたり、電源ノイズが消えなかったりしで、この理由を探し たり対策を考えたりで時間を食われてしまった。ボリスの方も、どうも接点に問 題が多い様で、両方完全でない状態で帰らざるを得なかった。次回免許が取れて 再度行く時に、プロトンは取り替えクバルツは再度調整となると思われる。  もう一つのティクシーのAARIの観測所に行きたいと言っておいて、最終日に行 く事にしようと言っていたのだが、結局連絡が取れなかったとの事で、行く事は できなかった。93年と94年のデータの一部は欠測という事を聞いているので 今も止まっているのだろうと判断した。IKFIAの方で公開していないが、光記録の マグネトグラムがあるので、これを次回行った時マイクロフィルムに写させても らう事で話をつけてきた。  帰る前に天気が悪くなって、前々日のヤクーツクからの飛行機は欠航したとい う話を聞き、ひょっとしたら私の飛行機も欠航するかもしれないと思ったが、当 日晴れて予定通り帰る事が出来た。 帰りのティクシー空港には、国際旅行者用の特権カウンターや入口は無く、競争 でバスに乗り、競争で席を取った(国内便は自由席なのだ)。帰りの飛行機は好 天に恵まれ、草原のティクシーも美しかったが、白樺のタイガ(森林地帯)にあ るイガルカに降りる時は、川、森林、湖で囲まれたおとぎの国に行く様であった。 しかし、この美しい自然は残念ながら人々を引きつけなくなっている様で、モス クワに人々は集まり、狭い場所で窮屈に生活する方が良くなってしまっている。 残念な事だと思う。         (亀井 豊永)



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