地磁気世界資料解析センター News No.126 2011年3月31日 1.新着地磁気データ 前回ニュース(2011年1月31日発行, No.125)以降入手、または、当センターで入力したデータの うち、オンラインデータ以外の主なものは以下のとおりです。 オンライン利用データの詳細は (http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/catmap/index-j.html) を、観測所名の省略 記号等については、観測所カタログ (http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/catmap/obs-j.html) をご参照ください。 また、先週の新着オンライン利用可データは、(http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/wdc/onnew/onnew-j.html)で 御覧になれ、ほぼ2ヶ月前までさかのぼることもできます。 Newly Arrived Data (1)Annual Reports and etc.(off-line) NGK (Jan. - Feb., 2011)、CAT (2008 - 2009) (2)Kp index: (http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/kp/index-j.html) Jan. - Feb. 2011 2.AE指数とASY/SYM指数 2010年10-12月のAE指数暫定値の算出を行いました。 (http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/ae_provisional/index-j.html) また、2011年2月分までの1分値ASY/SYM指数を算出し、ホームページに載せました (http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/aeasy/index-j.html)。 さらに、2010年分を載せた「MID-LATITUDE GEOMAGNETIC INDICES ASY and SYM (PROVISIONAL) No.21 (2010)」を出版し配布致しました。新たに配布ご希望の方は当センターまでお申し込み下さい。 3.PDF版観測所データ全カタログ No.29'/2011年2月が利用可能となりました。 http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/wdc/pdf/Catalogue/Catalogue.pdf 昨年印刷出版されカタログ、No.29/2010年2月版の改訂版で、それ以降到着の観測所データの追加のほか、 観測所年平均値の変更などの観測所情報の更新もなされています。ただし今回の印刷出版予定はありません ので必要な場合には上記PDFファイルをダウンロードして印刷願います。 4.Dst指数、AE指数及びASY/SYM指数のIAGA2002-likeフォーマットでのデータ出力について 上記について、ご要望にお応えして可能となりました。 Dst指数とAE指数1時間値はDst指数と 1時間値AE指数のプロットとデータ出力 のページ http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/dstae/index-j.html から最大10年分、AE指数1分値とASY/SYM指数はASY/SYM指数とAE指数のプロットとデータ出力の ページ http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/aeasy/index-j.html から最大1年分 (ただしどの場合についても確定値/暫定値/速報値の種別を明らかにする必要などから1ヶ月 毎にヘッダーが付く)が一度に取得可能です。以下にデータ例を示します。<Dst指数の例> Format IAGA-2002 | Source of Data WDC for Geomagnetism, Kyoto | Station Name Equatorial Dst index | IAGA CODE DST | Geodetic Latitude | Geodetic Longitude | Elevation | Reported H | Sensor Orientation | Digital Sampling | Data Interval Type 1-hour | Data Type Provisional | # Converted to IAGA2002 format | # by WDC for Geomagnetism, Kyoto. 2011-03-23 | # The values in the raw of 00:00:00:00.000 are those converted | # from those in the column of 21-24 which are usually | # the mean values between 00:00UT and 01:00UT, etc.. | DATE TIME DOY DST | 2005-01-01 00:00:00.000 001 -15.00 2005-01-01 01:00:00.000 001 -14.00 2005-01-01 02:00:00.000 001 -13.00 2005-01-01 03:00:00.000 001 -12.00 2005-01-01 04:00:00.000 001 -10.00 2005-01-01 05:00:00.000 001 -16.00 2005-01-01 06:00:00.000 001 -23.00 2005-01-01 07:00:00.000 001 -23.00 2005-01-01 08:00:00.000 001 -19.00 2005-01-01 09:00:00.000 001 -15.00 <1分値AE指数の例> Format IAGA-2002 | Source of Data WDC for Geomagnetism, Kyoto | Station Name AE Indices | IAGA CODE AE | Geodetic Latitude | Geodetic Longitude | Elevation | Reported AE,AU,AL,AO | Sensor Orientation | Digital Sampling | Data Interval Type 1-minute | Data Type Provisional | # Converted to IAGA2002 format | # by WDC for Geomagnetism, Kyoto. 2011-03-23 | DATE TIME DOY AE AU AL AO | 2005-01-01 00:00:00.000 001 68.00 10.00 -58.00 -24.00 2005-01-01 00:01:00.000 001 63.00 14.00 -49.00 -18.00 2005-01-01 00:02:00.000 001 96.00 14.00 -82.00 -34.00 2005-01-01 00:03:00.000 001 120.00 16.00 -104.00 -44.00 2005-01-01 00:04:00.000 001 116.00 17.00 -99.00 -41.00 2005-01-01 00:05:00.000 001 106.00 19.00 -87.00 -34.00 2005-01-01 00:06:00.000 001 102.00 24.00 -78.00 -27.00 2005-01-01 00:07:00.000 001 111.00 33.00 -78.00 -23.00 2005-01-01 00:08:00.000 001 97.00 31.00 -66.00 -18.00 2005-01-01 00:09:00.000 001 100.00 30.00 -70.00 -20.00 5.東北沖太平洋地震発生当日の磁場変動-速報 3月11日世界時5時46分(日本時間14時46分)に発生したマグニチュード9.0の巨大地震当日の地磁気 変動指数、および、峰山観測室で観測された磁場および微気圧変動を速報します。
<図1:3月の地磁気Dst指数 (上) および3月11日の地磁気AE指数 (下)。 地震当日は、小さな磁気嵐が進行中であった。> 当センターで算出しています地磁気Dst指数およびAE指数(図1)に見られるように、前日(10日)から開始 した弱い磁気嵐のため、地震に伴って発生すると考えられている小さな磁場変動は見えにくくはなってい ますが、京都大学防災研究所峰山観測室(北緯 35° 34' 22.6", 東経 135° 03' 00.8"、標高 146m)で行っ ています磁場観測データおよび微気圧観測データには、地震発生に伴うと考えられる明瞭な変動が検出され ました。図2は、フィルターにより短周期変動をとりだしたもので、05:51UT付近には、長周期の地震波動 の到達に伴う地面の上下運動によると考えられる微気圧変動と、磁力計センサーの動きあるいは地殻ダイナ モ作用によると思われる磁場の変動が観測されています(記号A)。次に、地震発生の11分後の05:57UTから周 期4分前後の変動が、主として地磁気D成分(おおよそ東西方向)に現れていますが、これはスマトラ地震の 場合(Iyemori et al., GRL, 2005)をはじめ、これまでにもたびたび報告してきましたメカニズム、すなわち、 地震により励起された大気波動(音波モードや内部重力波モード)が鉛直上方に電離圏まで伝搬し、そこで励 起した電流の効果であると考えられます(記号B)。また、記号Cで囲いました微気圧変動については、地震により 励起された大気波動が水平方向に伝搬してきたものと思われますが、現段階では、そのモードおよび伝搬経路 など不明です。この他、各地で様々な変動が観測されており、それらと比較しつつ今後詳細な解析を行う 予定です。
<図2:防災研究所峰山観測室で観測した地磁気および微気圧変動> A: 長周期地震波動の到達に伴う変動 B: 震源から上空に伝搬した大気波動が原因と考えられる磁場変化 C: 水平に伝搬してきたと思われる大気波動 6. 島根半島の松江市千酌(チクミ)公民館での生涯学習講演会 松江では松江城ができて400年を迎え、歴史を見なおす催しが盛んに行われています。松江市では伊 能忠敬の測量事業、及び伊能図(大日本沿海輿地図)よりも1年前に完成した詳細地図「出雲十郡絵図」等 々、江戸時代の出雲の地図、及び伊能測量隊の磁針測量方位角から解析した、測量当日の測量実施地点の地 磁気偏角・測量実施地点の復元詳細位置・測量対象地点の同定結果を入れた日本最初の最先端の講義内容の 地域生涯学習講演会を、続々と開催中です。今回は下記講演会が行われましたので報告致します。
<松江市千酌公民館での地域生涯学習講演会の模様> 日時:2月26日 午後7時 内容:「伊能忠敬の測った千酌」 島根半島松江市千酌(チクミ)公民館にて 広間に座布団に座っての講演会 講師: 乾隆明・面谷明俊 会場: 千酌地区公民館 <乾隆明氏の発表> ● 伊能忠敬の測量事業と直後の地元松江での自主的な詳細地図作成への発展。終始親しみやすい、出雲訛り の松江弁丁寧語での講義でした。 ① 伊能忠敬が生まれてから測量地図に携わり、島根半島測量に至った経緯の説明。 ② 伊能測量隊は、島根半島測量で文化三年七月二十六日(1806年9月7日)千酌に来て、蓮華寺に宿泊して 真那佐山(現山名は麻仁祖山マニソヤマ)を測量したこと。 ③ 伊能測量隊は全国を磁針で測量し「山島方位記」には推計約20万件もの測量方位角が記録されているこ と。 当地での測量対象には、モータリゼーションの現在では通る人も無く、すっかり草木に埋もれてしまっ たが、嘗ての千酌から松江への徒歩行で、人々が必ず山道を近道して越えた峠の近くの山が、「山島方位 記」に文道寺山と記録されていること(「出雲十郡絵図」では文道路峠)。昔は文道路峠を挟んだ日本海 側の千酌小学校や野波小学校と、中海側の本庄小学校の合同運動会があり、日本海側から文道路峠越えを して参加しておりました。 <伊能図の出雲についての説明>
④ 伊能測量隊の、出雲国での測量以前の、松江藩内 での元禄出雲国絵図他、さまざまな絵図が紹介さ れ伊能の大日本沿海輿地図、そして松江藩から賄 役(まかないやく)として派遣され、伊能隊を世 話して技術を取得した神田助右衛門により、松江 藩では伊能測量後に直ちに改良にかかり伊能図に は描かれなかった山間部の山々や村落、農地がわ かりやすく描き入られ非常に詳しい地元作成の詳 細地図「出雲十郡絵図」が伊能忠敬の大日本沿海 輿地図完成の前年の文政三年(1820)年に完成し ました。 尚、厳密には測量当日伊能忠敬は近くの松江で 病気加療の為弟子達の測量になりました。
<面谷明俊氏の発表> ● 測量実施地点の詳細位置 ● 測量対象地点の同定結果 ● 測量当日の現地の地磁気偏角 ● 山島方位記には、0度5分~0度3分程度の高精度の磁針 測量方位角が記録されております。 ● 解析方法に付いて説明 景観再現ソフトを、カシミールで景観を再現しながら、測量対象の山や島の方位角に合わせて測量対象の 山や島を同定し、その緯度経度を知ります。測量対象の複数の山や島への真方位角と、山島方位記に記載の 磁針方位との差(地磁気偏角)が、できる限りより近似になる地点を測量実施地点として求めます。緯度経 度秒単位の測量実施地点の位置を求める。できる限り計算で出した現地の位置へ行って、実際の景観を確認 して、人工衛星とのGPSにより詳しい緯度経度を計測して位置を決めます。 ● 山島方位記の方位角を解析復元計算すると、測量実施地点の極めて詳細な緯度経度位置が判明し、千酌 の公民館のすぐ近く村内を流れる千酌川の河口でも測量しており、千酌の東の麻仁祖山を測量していること もわかりました。<島根半島の北側の千酌チクミ付近、東の半島の尖った山が麻仁祖山マニソヤマ172m> ● 磁針の指す北(磁北)は、地磁気の影響で真北とは少しずれます。これを地磁気偏角(=磁針偏差)と言 います。地磁気偏角は全国の場所によって異なり、且つ長年のうちに永年変化します。現在島根半島では約 6度西へ偏っていますが、「山島方位記」に記載の、磁針による方位角から解析すると、文化三年七月二十 六日1806年9月7日に、伊能測量隊が千酌で測量したときの地磁気の偏角が、「山島方位記」からの解析でわ かりました。 千酌での偏角は、測量実施地点を千酌村の海岸の千酌川の河口としますと、2度48分、そしてすぐ東の麻仁 祖山の山上での偏角は、2度49分西偏という結果が出ました。 伊能測量当時の、文化三年1806年の島根半島の山並みの南の宍道湖及び中海の東西南北の沿岸では、松江 末次京屋灘座敷(松江市茶町フコク生命敷地西側路地付近)、島根半島東端脊梁の馬着山の西に位置する美 保関日和山も含む、10地点での地磁気偏角解析値は、いずれもほぼ約1度西偏程度ですが、千酌や麻仁祖山 では、地層を構成する火成岩に、磁性を帯びた鉄分が含まれている可能性がないかが今後の課題です。 <伊能忠敬の磁心測量方位角帳国宝 「山島方位記」を解説する面谷明俊氏>
① 真那佐山山上(現山名 麻仁祖山) 逆算位置N35度33分56.15秒E133度09分46.1秒 測量対象は、隠岐島の大満寺山、大山、星神山他 27地点 偏角2度49分12.76秒西偏 ② 七月廿六日千酌村川印より初め(始め)(測量実施 地点 千酌村の海岸の千酌川の河口N35度33分47秒 E133度08分20秒) 測量対象真那佐山 (現山名 麻仁祖山N35度33分58秒E133度09分47秒) 磁針方位寅二四度=84度 真方位81度11分48.30秒 偏角2度48.分11.70秒西偏 ● 伊能測量隊は、隠岐から大山や三瓶山とともに、 島根半島の千酌周辺を詳細に測量している。千酌は、 隠岐からも島根半島の東と西の山並みがくびれた谷 になっており、針の様に尖った麻仁祖山等が、景観 上非常にわかりやすいこともわかりました。
このことに付いて乾隆明氏よりコメント。航海の目標として、千酌は隠岐からも極めてとらえやすく、江 戸時代の隠岐航路の一大拠点になっていた根拠がよくわかりました。 ● 伊能図と人工衛星写真を重ねて比べると、島根半島は実によく一致しており、極めて精密であることが判 明しましたが、出雲平野の西海岸では、伊能図が人口衛星の写真より西の海中にせり出していますが、原因 を確認中です。<講師: 面谷オモタニ明俊氏(左)乾隆明氏(右)> 乾隆明氏は松江市文化財審議員で、出雲の郷土史に詳しく、 面谷明俊氏は数学及びコンピューターの専門家で、大変な 手間であった解析計算等のエクセルによる連続化を実現。 <住民からの意見や質問は> ① 先ず千酌の説明には、昔の文道路峠を実際に日常越えていた最後の世代として集まった人達から、大変懐 かしむ強い反応がありました。 ② 千酌の集落の千酌川で、伊能測量隊が測量したことに付いてはただ驚き。 ③ 島根半島から約50㎞沖合にある隠岐は、現在もはっきりと見えることが少ないのに、伊能隊が一週間かけ て島根半島の日本海側を測量した時に、毎日のように隠岐を測量したことに驚き。 ④ 千酌集落から測量した麻仁祖山の地磁気の偏角が、やや独特の結果になったことに触れ、山の麓で和鋼製 造のたたら跡ではないかと思えるものと、鉄滓の様なものも見た様に思うが、どうか。 ⑤ 夜の天体測量のときの目盛りを読むには、どの様な明かりが使われましたか。との質問が有り、伊能忠敬 記念館に確認することにしました。 <辻本元博 会場でのコメント> 「山島方位記」の解析計算により、地磁気偏角が正確に算出されるだけでなく、測量を実施した地点の極 めて詳細な位置や、測量対象の山や島の同定が可能になり、地磁気学と歴史地理学の両方にわたる二個卵の 成果が同時に出ます。 特に200年前の歴史的な測量実施地点の詳細位置は勿論、面谷明俊氏が解析してこられた旧街道の詳細 位置等環境の詳細復元は、従来の絵図や文献の文面では到底に不可能なことです。位置の復元は、公会堂の この部屋の中ぐらいの範囲になることもあります。順次日本全国の解析をして、地球全体の資料に組み入れ ようとしています。世界でこうした測量台帳が残っておれば、二個卵の研究ができることを訴えます。 今夜の講演会の様子は学会等で発表させていただきます。 (辻本元博 - 日本国際地図学会) 7.第1回ICSU/WDS会議の案内情報の更新 詳細は、2nd サーキュラー (http://wds-kyoto-2011.org/) をご覧ください。
First ICSU World Data System Conference - Global Data for Global Science - September 3-6, 2011, Kyoto University, Kyoto, Japan
Second circular: http://wds-kyoto-2011.org/ Abstract deadline: June 3, 2011 Registration page will be available from July 1st, 2011.
<Session Schedule>
September 3 (Sat) Session 1 (S1): Opening talks Convener: B. Minster Session 2 (S2): What is ICSU WDS Convener: T. Watanabe Session 3: (S3) Partnership and coordination Convener: M. Mokrane Session 4 (Part 1): Activity reports of WDS members Conveners: D. Clark and A. Kadokura September 4 (Sun) Session 4 (Part 2): Activity reports of WDS members Conveners: L. Rickards + TBD Section 5 (S5): Data Intensive Multi-Disciplinary Science Co-convened with ICSU Integrated Risk Disaster Research (IRDR) programme September 5 (Mon) Session 6 (S6): Application of information technologies to data system Conveners: M. Zgurovzky and B. Yan Session 7 (S7): Data publications Convener: M. Diepenbroek Conference banquet September 6 (Tue) ICSU WDS members' and partners' open forum Conveners: R. Chen and R. Neilan Session 8 (S8): Summary of the conference