News and Announcements [in Japanese]
地磁気センターニュース


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 地磁気世界資料解析センター News No.118     2009年11月25日
 
 
 
1.新着地磁気データ
 
    前回ニュース(2009年9月30日発行, No.117)以降入手、または、当センターで入力したデータのうち、主なものは
以下のとおりです。オンライン利用データの詳細は
(http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/catmap/index-j.html) を、観測所名の省略記号等については、観測所カタログ
(http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/catmap/obs-j.html) をご参照ください。
また、先週の新着オンライン利用可データは、
(http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/wdc/onnew/onnew-j.html)で御覧になれ、ほぼ2ヶ月前までさかのぼることも
できます。
 
      Newly Arrived Data
 
        (1)Annual Reports and etc.
              NGK (Aug - Sep., 2009) , SOD, HAN, NUR, OUJ (Apr., 2009), LRV(2008)
 
        (2)Kp index: (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/kp/index-j.html)
              Sep. - Oct., 2009
 
 
 
2.AE指数とASY/SYM指数
 
   2009年9月分までの1分値ASY/SYM指数を算出し、ホームページに載せました
 (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/aeasy/index-j.html)。
 
 
 
3.2007年確定値サービス開始のお知らせ
 
  2007年の1分値・1時間値につきましては、当センターに個別に報告のあった観測所からのデータ
のみをサービスしていましたが、この度、INTERMAGNET経由で104か所のデータを受け取りました
ので、同様にご利用いただけるようになりました。データサービスのWebアドレスは、以下の通りです。
http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/caplot/index-j.html
 
 
 
4.トビリシ(グルジア)観測所毎秒値の公開
 
  2007年にグルジアのトビリシ市郊外にありますDusheti観測所に設置しましたフラックスゲート磁力計に
よるデータ取得は、極端な電源の不安定やロシアとの紛争のため、中断していましたが、ようやく昨年末より
安定的に取得できるようになりましたので、公開することにしました。
http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/shplt/index-j.html
からダウンロードあるいはプロットすることができます。磁力計はデンマーク気象研究所製(FGE91)で、490Hz
でA/D変換した値を平均して、毎秒値で記録したもので、ベース値(絶対値)は仮の値を付加しています。
センサーおよび本体の温度データも記録していますが、温度変化の補正等は行っていませんので、ご使用に
あたってはその点、ご留意願います。なお、この磁力計の設置は、科学研究費補助金(課題番号17403008)の
一環として、グルジアのM.Nodia Institute of Geophysicsとの協力の下、行ったものです。
 
 
 
5.ホームページ上の電離層電気伝導度計算サービスのバージョンアップ
 
  IRI2007モデルを用いた高さ積分された電離層電気伝導度の計算ページができました。
http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/ionocond/sightcal/index-j.html
今まではある一点での電離層電気伝導度の高さ分布を求めるページしかなく、その計算結果ページに高さ積分
された値の値も付記されるものの、全地球的電気伝導度分布を求めるにはサブミットを繰り返す必要があり
ました。今回新設されたこのページからサブミットすれば指定された年月日時間(UT)での全地球的分布が一度
に計算されます。
 
 座標は地理座標で、メッシュは緯度10度、経度15度(=LT1時間)となっており、高さ積分の範囲は80-1000km
の範囲内で指定できます (図1)。結果はリストとポストスクリプト形式での図面が作成され、選択画面が表示され
るのでいずれか、あるいは双方を選んで取得できます。また、選択画面 (図2) にはpng形式に変換された図も付い
ていて、クリックするともう少し大きいpng形式の図もご覧になれます。計算方法、出力フォーマットあるいは
電離層電気伝導度の意味など詳細については上記ページにリンクが置かれているのでそちらをご参照ください。
 
 
            
       <図1:高さ積分された電離層                           <図2:計算終了後の選択画面>
      電気伝導度を計算するページ>
      
 
            
            <図3:計算結果プロット出力例>                              <図4:計算結果リスト出力例> 
 
 
 また、従来からの電離層電気伝導度の高さ分布を計算するプログラム
http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/ionocond/sightcal/index-j.html
の方も合わせて改訂され、計算が終わると選択画面が表示され (図5) 、高さ分布の図もご覧になれるようになりました。
 

  <図5:電離層電気伝導度高さ分布計算終了後の選択画面>
 
 
 以下は、電離層電気伝導度についてのホームページにある説明
http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/ionocond/sightcal  からの抜粋です。
 
 
 電離層はおおむね地上60〜1000kmの高さで、中性粒子が主に太陽紫外線によって荷電粒子 (電子と正
イオン) に電離されるため、地球上空で一番 (自由)電子密度が高い領域である。ここでは電波が反射、吸収、
屈折されるほか、電流が流れやすくなっていて、数日以下の速い地磁気変化を引き起こす電流のうち多くが
流れている。オームの法則はほぼ成り立つが、電気伝導度は地磁気の影響で非等方になり、平行、ペダーセン、
ホールの3伝導度が基本的な伝導度として定義されるほか、場合により2次元伝導度も用いられる。それぞれ
の意味は以下の通りであり、単位はS/m (=1/(Ωm))、高さ積分されるとSである。
 
 
    
                        <図6.電離層の3つの電気伝導度>
 
 
○ 平行伝導度 (Parallel conductivity)
 
  磁力線に平行方向への電気伝導度を平行伝導度という。縦伝導度 (Longitudinal conductivity) あるいは直接
伝導度 (Direct conductivity) ということもある。これは磁場がないときの伝導度と同じで、ペダーセン、ホール
伝導度よりも大きく、特に電離層上部では数桁以上大きくなる 。
 
○ ペダーセン伝導度 (Pedersen conductivity)
 
  磁力線に垂直な電場による電場方向への電気伝導度をペダーセン伝導度という。これは電離層より下の、
荷電粒子と中性粒子の衝突が極めて頻繁な領域では平行伝導度と一致する。高さが高くなるにつれて荷電粒子
の密度が増大することと中性粒子との衝突が減少するために高さ110-130kmくらいまでは増加するが、さら
に高い領域では衝突が希になることにより荷電粒子は電場と磁場双方に垂直な方向へ電場ドリフトするのみで、
磁力線に垂直な電場の方向にはほとんど動かなくなるために小さくなる。
 
○ ホール伝導度 (Hall conductivity)
 
  磁力線に垂直な電場による、磁場と電場双方に垂直方向への電気伝導度をホール伝導度という。荷電粒子が
電場と磁場双方に垂直な方向へ電場ドリフトするのが原因であるが、電場ドリフトの向きは電荷の符号によら
ないため、電離層のように全体としては中性と見なせる媒質では、正負両荷電粒子のドリフト運動の差がホール
伝導度として現れる。高さ90-130kmくらいの領域では、正イオンは中性粒子と頻繁に衝突するためドリフト
が妨げられるのに対し電子はより自由にドリフトするためホール伝導度が大きく、向きは磁場の向きから電場の
向きへ右ねじを回したときに進む方向となる。これより下の領域ではそもそも荷電粒子密度が小さいことに加え
て衝突により電子の電場ドリフトも妨げられるため、上の領域では衝突が希で電子と正イオンがほとんど同じ
速さでドリフトするため、どちらでも非常に小さい。
 
 
 
6.「超高層大気長期変動の全球地上ネットワーク観測・研究」(略称:IUGONET)プロジェクト報告
 
  IUGONETでは国立極地研究所、東北大学、名古屋大学、京都大学、および九州大学の5機関が連携し、
全地球に展開しているレーダー、磁力計、光学観測装置、太陽望遠鏡等を用いた超高層大気の地上観測ネット
ワークにおいて、これまで長年にわたって蓄積された多種多様な観測データに関するメタデータ・データベース
システムを構築します。これにより、各研究機関が所有する各種観測データを有機的に利用した総合解析を促進
し、国内外の関連研究者の緊密な研究協力体制のもと、様々な現象が複雑に絡み合う超高層大気の長期変動の
メカニズム解明を目指します。                        
 
 2009年11月11日、東京都立川市の国立極地研究所にてIUGONETの第2回全体会議が開催されました。
今回のミーティングには、直接およびTV会議システムを通じて21名の研究者が参加(地磁気センターからは
能勢正仁、吉田大紀、小山幸伸が参加)し、IUGONETの核となるメタデータ・データベースシステム、超高層
分野の観測データに関する詳細情報を記述するのに適したメタデータ・フォーマット、そして解析ソフトウェア
に関する報告が行われ、これらに関する技術的な質疑や今後のプロジェクト活動等について活発な議論が行
われました。
 
 
    
          < 第2回全体会議集合写真 >
 
 
 上述の全体会議はプロジェクト参加機関に閉じられたビジネスミーティングでしたが、他方でIUGONETの進捗
状況を外部の研究者に紹介するため、宇宙天気研究会、第126回地球電磁気・地球惑星圏学会、第33回極域宙空
圏シンポジウムで発表を行い、多くの研究者と意見交換を行いました。そしてプロジェクト外の研究者と、
主にメタデータ・フォーマットに関する情報交換を不定期で開催することに合意し、意見交換会もスタート
しました。
 
 
 最後に、本プロジェクトの略称IUGONET(読み: ユウゴネット)及び英語名(Inter-university Upper atmosphere
Global Observation NETwork)が決定し、2009年9月19日に本プロジェクトの公式ホームページ
http://www.iugonet.org/ を公開したことをお知らせします。今後、このホームページ上で本プロジェクトの
様々な情報を発信していきます。
      
 

                          <ホームページのスナップショット>
 
 
 
                                              (小山幸伸)