News and Announcements [in Japanese]
地磁気センターニュース


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 地磁気世界資料解析センター News No.116     2009年7月30日
 
 
 
1.新着地磁気データ
 
    前回ニュース(2009年5月19日発行, No.115)以降入手、または、当センターで入力したデータのうち、
主なものは以下のとおりです。オンライン利用データの詳細は
(http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/catmap/index-j.html) を、観測所名の省略記号等については、観測所カタ
ログ(http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/catmap/obs-j.html) をご参照ください。
また、先週の新着オンライン利用可データは、
  (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/wdc/onnew/onnew-j.html)で御覧になれ、ほぼ2ヶ月前までさかのぼる
 こと
もできます。
 
      Newly Arrived Data
 
        (1)Annual Reports and etc.
                  NGK (Apr., - May, 2009) , SOD, HAN, NUR, OUJ (Aug. - Oct., 2008)
                  Indian Observatories (ABG 他, 2005)
 
        (2)Kp index: (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/kp/index-j.html)
                  May. - Jun., 2009
 
 
 
2.AE指数とASY/SYM指数
 
   2009年5月分までの1分値ASY/SYM指数を算出し、ホームページに載せました
 (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/aeasy/index-j.html)。また2009年4月までのProvisional AE指数も上記
アドレスからダウンロード可能です。
 
 
 
3.RapidMag Team Meetingの開催報告
 
  北極海を取り囲むオーロラ帯に位置する、12ヶ所の地磁気観測所で得られた磁場観測データを基に算出
されるAE指数は、磁気圏サブストームをはじめとする極域の地磁気擾乱の程度を定量的に示す指標として、
宇宙空間現象の研究や、宇宙天気予報からオーロラ観望ツアーにいたるまで、幅広くかつ極めて多くの人々に
利用されています。しかし、シベリアの過酷な自然環境にある4ヶ所のロシアの地磁気観測所データについては、
データの欠測、質、はては観測所の閉鎖など、多くの問題が1980年代後半から発生しました。磁場観測もアナロ
グ記録からディジタル記録に移行しつつありましたが、ロシアの地磁気観測はその点でも遅れていましたので、
観測の質を高めるとともに、リアルタイムデータ転送を実現し、算出の迅速化を推進する国際プロジェクトを
1990年代初頭から進めてきました。
 
 その一環として、6月17日から19日まで、京都大学理学部1号館の地磁気センターで、RapidMag Team
Meetingを開催しました。RapidMag は、Russian auroral and polar ionospheric disturbance Magnetometers
の略称で、地磁気AE指数の改善と算出の迅速化をめざしたPURAES (Project for Upgrading Russian AE
Stations) を発展させた日本とロシアおよび米国の関係者で進めている国際協同プロジェクです。前回は
NICTのお世話で2007年8月に開催しましたが、今回はAE指数を算出している当センターで開催させていただ
きました。ロシアからはAARIのOleg Troshichev、IDGのJulius ZetserとBoris Gavrilovの3氏、米国から
はAPL/JHUの高橋主衛、Ching Mengの両氏、日本からは、NICTの村田健史、石井守、長妻努、國武学の4氏、
地磁気センターからは、能勢正仁、藤浩明および家森俊彦の3名が出席しました。
 
 
       
           <参加者一同>         
 
 
  初日は各機関からRapidMagに関する活動報告等を行い、特に最近データ転送が途絶えがちであった3つの観測所
の状況がロシア側から詳しく報告されました。2日目は、この状況を改善するための行動計画を中心に議論され、
また、それを進めるための協定文書のドラフトが作成されました。最終日は、参加者から、研究面での発表が行わ
れました。実質2日半の短い会議でしたが、参加者全員が、プロジェクトの目的達成に向け大きな進捗があったと
認めることのできた有意義な会議でした。
  
 
 
4.「超高層大気長期変動の全球地上ネットワーク観測・研究」プロジェクト報告
 
    2009年6月25日、東京都立川市の国立極地研究所において、当地磁気センターが参加している「超高
層大気長期変動の全球地上ネットワーク観測・研究」プロジェクトのキックオフミーティングが開催されました。
本プロジェクトは、超高層大気変動の原因解明に向け、下記の5機関7組織が全地球に展開しているレーダー・
光学、地磁気等の超高層大気の地上ネットワーク観測の連携を促進し、観測データベースを有機的に結合させる
ことで、国内外の関連研究者の緊密な研究協力体制を構築することを目的とします。
 
 
       
           < キックオフミーティング集合写真 >
 
 
[プロジェクト参加機関]     
 ・京都大学(地磁気センター、生存圏研究所、天文台)
 ・名古屋大学・太陽地球環境研究所
 ・東北大学理学研究科附属惑星プラズマ・大気研究センター
 ・九州大学・宙空環境研究センター
 ・国立極地研究所
 
  今回のミーティングには、直接およびTV会議システムを通じて22名の研究者が参加(地磁気センターから
は小山幸伸が直接参加、吉田大紀がTV会議システムの運用を行いながら遠隔での参加)し、本プロジェクトの
核となる"超高層大気ネットワーク観測データベース"の開発方針や今後の活動などについて活発な議論が行わ
れました。
 
  2009年7月8日、前述のキックオフミーティングにおいて決定された第一回開発者ミーティングがWeb
会議システムを用いてオンラインで開催されました。
 
 
       
    <第一回開発者ミーティング(オンライン)>
 
 
  今回の会議では「超高層大気ネットワーク観測データベース」を構築するためのメタデータフォーマットの
基本案が提案されました。その他、データベースシステム等を調査するサブグループの設置が決定され、作業
分担をしながら開発を進めていくことが合意されました。なお、今後は開発者ミーティングを1週間毎に開催し、
緊密な連絡を取りながらプロジェクトを強力に推進していくことを確認しました。
 
 
                                             (小山幸伸)
 
 
 
5.2009年1-6月のkp指数図表
 
    2009年前半のKp指数図表 (Bartels musical diagram) を下に示します。オリジナルは
http://www-app3.gfz-potsdam.de/kp_index/definitive.html
の下にあります。
 
 
       
 
 
  Kp指数の数値 (1932年以降) 、及び1990年以降のKp指数図表は
http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/kp/index-j.html
からご利用になれます。最新のKp指数は原則として翌月半ばには利用可能となります。
 
 
 
6.2008年の観測所別地磁気確定/暫定値データサービス件数
 
    当センターで2008年1年間にサービスされた地磁気確定/暫定値データサービス件数 (データ出力とプロット
出力の和) を1時間値、1分値、1秒値各々について観測所別上位20位までの統計を下に示します。
 
 
       
 
 
 
7.奄美大島・皆既日食観測ツアー〜日食で地磁気と地面が揺れるか?〜
 
    今回の皆既日食で、屋久島やトカラ列島・中之島と諏訪之瀬島、奄美、上海、沖縄、阿蘇、桜島などで、
微気圧変動と地磁気変動およびGPS受信機によるTEC変動、HFドップラー観測による電離層電場の精密な観測
を同時にかつ多点で行う観測を行い、私は奄美大島で微気圧観測を担当しました。
 
  「19日からすごい人で、島の人口が2倍になって。空港のお客さんがいっぱいで乗り切れず、お盆も正月でも
今までこんなの初めてです。19日も臨時便を3便出したけど、それでも乗り切れなくて。日食の22日はバスは
走ってますよ、ただ道路がどうなるか分からんです。フェリーで車が入り放題でしょ。もしたどり着かなかった
ら、道路の途中でも停めて、見てもらうしかないです。私らも交通規制がかかると思ってたんですが、結局何も
規制されないんで。まあ警察からは日食で暗くなるその時はバスの運行を止めてくれって言われているんで、もし
バスを走らせなくても文句は言われないです。」バスの運転手さん談。いっぱいです。
  今回は鹿児島県奄美市笠利町の赤木名地区にある、県立大島北高等学校に観測地提供の協力をいただきました。
 
  日食前日の設置作業は次の通りです。設置場所はグランド北端に建つ、野球部ピッチングマシン保管小屋で、南側
はバッティングゲージとテニスコートに隣接しています。小屋周辺は北東及び北西側に高さ3m ほどの木が立ち、微
気圧センサーは終日小屋の影となる地面へ、温度センサーは北側窓外の地面より高さ約1.4mに設置しました。小屋
内部には電源が無く、長尺の電源ケーブルを準備していなかったため、電源延長リールを学校から拝借し、対処しま
した。微気圧センサーボックスの上にシートで覆いましたが、よく知らない人には完全に不審物の様...。今回は問題
はありませんでしたが、今後は張り紙を用意することにします。空調が全く無い環境で日中は小屋内部が高温となる
ため、窓を常時開け換気を図りました。21日9時半頃から開始し25日9時まで観測しました。
 
 
           
      <準備中の微気圧センサーボックス>             <小屋内部>
 
 
  7月22日日食当日、朝6時頃は晴れていたものの徐々にくもり。途中の渋滞のため9:10 頃に高校に着くと、すでに
奄美高校科学部など中高校生+教員や、観測チームがスタンバイしていました。風が強く、荷物で重しをしない
とレジャーシートがめくれ上がり、グランドの砂が舞います。終始、南南西の風。前日からの気圧観測状況を確認
し、その後カメラ・ビデオを設置に取りかかりました。偏光フィルターは、曇りではFUJIFILM ND4.0では暗
すぎるので、ND3.0を使うことにします。
 
 
           
           <大島北高等学校グランドでの日食観測の様子>
 
 
 教員によって、日食の第一接触前から「○分前 〜!」と大声でコールされ、日食開始後も「食分0.○」「第二
接触まであと○分!準備は良いか〜」と教えてくれるので、こちらも助かります。それまでND3.0なら何とか太陽
の形が目視で確認できていたものの、10時を境に雲が厚くなり、太陽の位置は分かるものの、形はボンヤリとしか
見えなくなりました。カメラでは全く光りを捉えられません。露光調整などいろいろ試みるものの、一向にダメ。
 
 アブラゼミとクマゼミ(少数)の鳴き声は確認、その他にもニイニイゼミ(?)かオオシマゼミ(?)よく分から
ない別の種類のセミが鳴いています。皆既直前、西側からすごい勢いで影が迫り、気付くと街路灯も点いていました。
 
  直前からは願いを込めたカウントダウンの声が上がるものの、皆既の瞬間、空から太陽が完全に消えてしまい、
太陽の位置が全く確認できない状態。コロナが光っているのかもしれませんが全く見えません。真っ暗ではなく
日没直後ほどの暗さなので、準備されていた大型テントの「大島北高校」の文字はしっかり見えます。セミが完全
に鳴き止んだので辺りは静まりかえる中、カラスだけは騒いでいました。飛行機のジェット音が不自然なほど響き
渡っていました。風はあまり無く、涼しかったです。
 
 徐々に西側の空が夜明け前のような空になったかと思うと、皆既終了の瞬間、明るい光で太陽の位置がやっと
分かりました。口々に「出た!」と言う声。
 
 12:20頃、小屋にデータを確認しに行くと、気温は29.1℃の表示と、モニターの気圧グラフは、徐々に全体的
に気圧を下げながら、その中で特徴的な4分ほどの周期でブレ(波)が発生しており、そのピーク高さは徐々に
低くなっているように読み取れました。配線ミスとか、何かミスをしたのではないかと今さらながら少々焦り、
確認するものの異常なし。
 
 その後、グランド地表面近くを飛ぶ青黒地に模様のあるアオタテハモドキを発見しました。その羽の模様は、
まるで私たちが見たかった空に浮かぶ皆既日食!?
 
 
           
 
 
 7月末からトカラ列島等のデータ回収を開始し、今後解析してゆく予定です。
 
                                            (小田木洋子)
 
 
 
8.上海で観測された皆既日食と部分日食(速報)