News and Announcements [in Japanese]
地磁気センターニュース
★ 一覧 ★
1.新着地磁気データ
前回ニュース(2009年1月28日発行, No.113)以降入手、または、当センターで入力したデータのうち、
主なものは以下のとおりです。オンライン利用データの詳細は
(http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/catmap/index-j.html) を、観測所名の省略記号等については、観測所カタログ
(http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/catmap/obs-j.html) をご参照ください。
また、先週の新着オンライン利用可データは、
(http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/wdc/onnew/onnew-j.html)で御覧になれ、ほぼ2ヶ月前までさかのぼることも
できます。
Newly Arrived Data
(1)Annual Reports and etc.
NGK (Jan. - Feb., 2009), LOZ, MMK, TUM (2007 - Jun., 2008),
SOD, HAN, NUR, OUJ (Jul., 2008)
(2)Kp index: (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/kp/index-j.html)
Jan. - Feb., 2009
2.AE指数とASY/SYM指数
2009年2月分までの1分値ASY/SYM指数を算出し、ホームページに載せました
(http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/aeasy/index-j.html)。また2009年1月までのProvisional AE指数も上記アド
レスからダウンロード可能です。
3.PDF版観測所データ全カタログ No.28a/2009年2月が利用可能となりました。
http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/wdc/pdf/Catalogue/Catalogue.pdf
印刷出版予定はありませんので必要ならPDFファイルをダウンロードの上印刷願います。
4.当センターの移転について
当センターは、建物の耐震補強工事に伴い、本年五月下旬に現在の建物 (理学研究科4号館) から、理学
研究科1号館5階に移転する予定です。下図のように同じ京都大学北部構内ではありますが、やや南寄りで
京都市バス京大農学部前からは近くなります。なお、住所やホームページやメールのアドレスは変更ありません。
移転に伴い上記移転の前後に期間には、ホームページサービスの停止等、データサービスが一時的に滞りご迷惑
をおかけすることもあるかと思いますがご了承願います。
5.地磁気世界資料解析センターデータサービス報告
1. 収集・発送(最近6年間)
2003 2004 2005 2006 2007 2008
【収集】
データブック 40冊 35冊 30冊 30冊 30冊 30冊
データシート 250枚 300枚 200枚 200枚 200枚 200枚
ディスク類 40枚 35枚 50枚 55枚 79枚 58枚
マグネトグラムの画像データ化 130年×観測所 51年×観測所 102年×観測所 44年×観測所
リアルタイムデータ1秒値 5ヶ所 5ヶ所 6カ所
リアルタイムデータ1分値 20ヶ所 25ヶ所 30ヶ所
【発送】
データブック 400冊 430冊 970冊 400冊 400冊 1000冊
データシート 3900枚 4400枚 4000枚 2000枚 4000枚 2000枚
ディスク類 15枚 44枚 19枚 10枚 10枚 10枚
WWWホームページ 3049K 3669K 4152K 4495K 8879K 8280K
リクエスト リクエスト リクエスト リクエスト リクエスト リクエスト
地磁気データのホームページからのリクエスト件数
地磁気1時間値 4895 4889 9893 4374 6163 8929
地磁気1分値 16149 14022 17602 33502 60815 70996
地磁気1秒値 4338 7929 9187 13995 15695 103589
Kp指数 2195 2894 3267 3451 5016 17412
2. 印刷・出版 (2008年)
(1)データカタログ
Data Catalogue No. 28
(2)データブック
Mid-latitude Geomagnetic Indices ASY and SYM (Provisional) No.18 (2007)
Provisional Geomagnetic Data Plots No.36, 37 (July 2007 - June 2008)
(3)ニュース
地磁気世界資料解析センターニュース (No. 107-112)
(4)地磁気世界資料解析センターパンフレット 2008/2009年版 (日本語版・英語版)
(5)理科年表2009への図面・データ提供
3. オンラインデータベース (2008年)
( 1) Realtime, Provisional, Final Dst指数表示及びダウンロード
( 2) Realtime, Provisional, Final AE指数表示及びダウンロード
( 3) 信楽、峰山磁場観測データのオンラインリアルタイムマグネトグラムサービス
( 4) 準リアルタイム地磁気データ表示 (信楽、峰山、阿蘇、ピマーイ、イズニック)
( 5) リアルタイムPi2脈動検出+データ表示(5カ所)
( 6) アーカイブ地磁気データ(1秒値,1分値,1時間値)のプロットとデータ出力
( 7) 地磁気AE/ASY/Kp指数のプロットとデータ出力
( 8) オンラインデータカタログ(自動更新)
( 9) 国際標準モデル磁場(IGRF-10)の計算・表示
(10) 国際標準電離層モデル(IRI2007)による電離層電気伝導度
(11) オンラインマイクロ画像データサービス
(12) データカタログのPDFファイル化とHPからのサービス
(13) 観測所年報のPDFファイル化
6.ホームページへのアクセス統計
7.HFドップラー阿蘇受信点の新設
2009年3月18〜19日の二日間をかけ、京都大学理学研究科附属地球熱学施設阿蘇火山研究センターにおいて、
短波(HF)ドップラー受信点を新たに設けたので、本稿ではその概略について報告する。尚、本受信点
を
始めとするHFドップラー観測点の新規設置は、電気通信大学菅平宇宙電波観測所および京都大学火山研究セン
ター(阿蘇)と地磁気世界資料解析センターとの共同研究の一環である。
当解析センターでは、上記の二機関を含め多くの研究機関と共同して、HFドップラー・GPS・地磁気・微気圧
といった多種目の多点同時観測を行い、電離圏の動態を多角的に捉える事を目的とした共同研究を推進
している。特に今年七月は、近年稀に見る長時間皆既日食が日本でも観測可能である事から、この時期に合わせ
中国東岸から西日本にかけての各地で観測点の増設を図っている。阿蘇観測点の新設も、上海・トカラ列島・
鹿児島といった日食帯における観測点展開の一部であった。
<写真1:(左)阿蘇南側外輪山を背に今回新設したアクティヴ・ループアンテナ。右は、今回の設置
でも大変お世話になった火山研究センターの宇津木助教。
(右)新設したループアンテナ頭部(↓)と微気圧センサー(←)及びアンテナ・ケーブ
ルの引き込み口(→)。アンテナテラスに立っているのは、当センターの能勢助教。>
写真1左に、今回新設したHFドップラーシフト測定用アクティヴ・ループアンテナを示す。このアンテナは、
50dB程度のゲインを持つ小型軽量で感度の良い広帯域アンテナである。水平/垂直ループどちらでも受信可能
であるが、現地で受信テストを実施した結果、垂直の方が水平の場合と比べ一桁程度受信強度が上がる事が判明
した為、今回は垂直ループを採用した。
また、予定送信点が、西方向の中国標準電波局[陝西省浦城](BPM:5000kHz)、東方向の電通大実験局[東京都
調布市](JG2XA: 8006kHz)およびラジオNIKKEI [千葉県長柄町](JOZ2:6055kHz及びJOZ3:9595kHz)の阿蘇から
見てほぼ東西方向に位置する三点であった為、垂直受信ループ指向方向も東西に配置した。すなわち、京大阿蘇
火山研究センターの南に面したテラスに東西の見通しの良い方向に、根元を土嚢とコンクリートブロックから
なるアンカーに速乾セメントで固定したアクティヴ・ループアンテナを垂直に立ち上げ、ステンレス線と化繊
ロープを用いて南壁面に三重に固縛した。更に、30φのアルミ固定ポールから塩ビパイプを伸ばし、ループ
上端と結わえて強風時のループの変形防止を図った。また、ループの左右から化繊ロープによるステイを壁面に
取り、ループの回転を防止した。
その後、アンテナ・ケーブルを壁面に沿わせて降ろし、階下の観測室に引き込んだ。写真1(右)からも
分かる通り、既設の微気圧センサーはこの階のテラスに置いてある。幸い観測室へは、20mの同軸ケーブルで
十分届いた。表に、受信周波数の一覧を掲げる。
<観測する短波送信局の詳細>
今回設置したシステムでは、観測室内に設置した受信機(写真2)で表に掲げた四周波を同時に受け、
ドップラーシフトのアナログ出力をロガーPCの16bitA/D変換器でデジタル化して集録する、という構成に
なっている。当初は中国BPM局の10MHz標準電波も受信する予定であったが、使用したルビジウム発振器
の出力10MHzと干渉と起こしてしまい、ドップラーシフトを安定に検出できない事が分かった為、現場で
局部発振器一台の設定を変更し、民放局ラジオNIKKEIの9595kHzを受信する事にした。
<写真2:(左)観測室内に設置したHFドップラー受信集録装置の外観。モニタは微気圧計ロガーと
共用であり、机上のPCは実は微気圧データ用のロガーである。HFドップラー記録用
PCは、机の下のUPSの奥にあり、写真では見えない。左は、受信機の製作者でもある
電通大四年生の千葉君。
(右)受信機の天板を外すと、高精度ルビジウム(Rb)発振器、四段重ねの局発部とこれも四段
重ねの受信部が現れる。>
HFドップラー用のロガーPCに集録したバイナリーデータ(binファイル; 四周波で約70MB/日)とその
サマリー出力(hfdファイル)は、図1に示した流れで、阿蘇火山研究センター内のサーバーを経由し電通
大及び京都へ配信されている。地磁気はリアルタイム、微気圧は五分毎、HFドップラーデータは毎日午前
一時に前日分がまとめて送信される。
<図1.火山研究センターにおける地磁気・微気圧・HFドップラー同時観測データの流れ図。>
図2に、実際に阿蘇で受信したHFドップラー・データの例を示す。四周波とも良好に受信できている事
が見て取れる。
<図2: 中国標準電波BPM:5000kHz(左上)、電通大実験局JG2XA:8006kHz(右上)、
ラジオNIKKEI JOZ2:6055kHz(左下)、ラジオNIKKEI JOZ3:9595kHz(右下)
の受信結果。各パネル上段がドップラーシフト量(Hz)、下段は出力振幅
(dBμV)。観測データには http://tomi12.ee.uec.ac.jp/HFD/ からアクセスできる。>
図3は、同時間帯のリアルタイムAE指数を示している。この日の地磁気活動度は非常に静穏だったが、日本
時間18時ごろに弱いサブストームが発生していた。このサブストームの発生は、図2に示されたBPM, JOZ2
の負のドップラーシフト(東向き電場)に関係しているかもしれない。
<図3:図2の時間帯のリアルタイムAE指数。日本時間18時ごろの弱いサブストームの発生は、図2
に示されたBPM, JOZ2の負のドップラーシフト(東向き電場)に関係しているかもしれない。>
図4には、火山研究センターを訪問した日に構内で計測された地磁気の1日プロットを示す。世界時12時
40分ごろに、サブストームに伴うポジティブベイが現れていたことが分かる。
<図4:訪問した日(2009年3月19日)に阿蘇・火山研究センターで取得された地磁気データ。
リアルタイムプロットは、http://kagi.coe21.kyoto-u.ac.jp/asoから見ることができる。>
受信ループアンテナを屋外のどこにどう設置するかや、受信したデータをロガーからどういう経路
で電通大と京都へ送り出すか等、実際の現場では試行錯誤に時間を要する場面もあったが、阿蘇火山
研究センターの方々のご協力により、どうにか良いデータを受信できる様になった。HFドップラーに
加えて、地磁気・微気圧データも無事送信できている事を確認した後、雄大な阿蘇の風景を惜しみつつ
帰途に着いた。
謝辞 このHFドップラー受信点の新設に際しては、京都大学理学研究科附属地球熱学研究施設火山研究
センター(阿蘇)の皆様に多大なご支援を頂きました。記して感謝致します。
(藤 浩明)