News and Announcements [in Japanese]
地磁気センターニュース
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地磁気世界資料解析センター News No.101 2007年1月31日
1.新着地磁気データ
前回ニュース(2006年11月30日発行, No.100)以降入手、または、当センターで入力したデータ
のうち、主なものは以下のとおりです。オンライン利用データの詳細は
(http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/catmap/index-j.html) を、観測所名の省略記号等については、観測所カ
タログ(http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/catmap/obs-j.html) をご参照ください。
また、先週の新着オンライン利用可データは、
(http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/wdc/onnew/onnew-j.html)で御覧になれ、2ヶ月前までさかのぼること
もできます。
Newly Arrived Data
(1)Annual Reports and etc.
NGK (Oct..- Nov., 2001), SOD, QUJ, HAN, NUR (Sept. - Oct., 2006), LRV (2005)
KIR (Jul.,2002 - Jan., 2002)
(2)Kp index: (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/kp/index-j.html)
Nov.- Dec., 2006
2.AE指数とASY/SYM指数
2006年12月分までの1分値ASY/SYM指数を算出し、ホームページに載せました
(http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/aeasy/index-j.html)。
また2006年12月までのQuick Look AE指数も上記アドレスからダウンロード可能です。
3.Provisional Geomagnetic Data Plots について
世界各地で測定された地磁気1分値データをプロットしたProvisional Geomagnetic Data Plotの2006年
10月までのポストスクリプトファイルが利用できるようになりました。図の形式は2日分が1画面です。
(ftp://swdcftp.kugi.kyoto-u.ac.jp/data/pplot)。
4.伊能忠敬の北海道測量(1800年) 東日本太平洋岸測量(1801年) 東北地方日本海側測量(1802年)
北陸測量(1803年)の磁針測量方位角による磁針偏角の解析
伊能忠敬の「山島方位記」(全67巻重文)に記載の磁針方位角から19世紀初頭当時の日本の磁針偏角を
解析することは到底無理とされてきたが、全体像の把握を当面の目標に対馬・種子島・大阪・江戸に続き
1800年蝦夷地測量、1801年東日本東岸測量東北北部、1802年東北地方西部羽越測量及び1803年北陸測量の
一部に付いて測量基点の位置が判明してきたものから拾い出して磁針偏角を解析した。
(1) 北海道南西部から南東部の磁針偏角の解析 寛政12年(北海道は西暦1800年7月10日〜11月4日)
データ総数36種類60件、今回解析対象13種類26件。
◎解析計算の結果(下記全地点でGPS位置測定を実施)
基点の地名 測量対象 磁針偏角 基点の位置
A 厚岸バラサン ヲアカン・メアカン 2°28′42″E N43°01′52.31″E140°50′10.4″雄阿寒雌阿
B クスリ(釧路会所) ヲアカン・メアカン 2°57′00″E N42°58′30.4″E144°22′40.0″雄阿寒雌阿寒
C ヒロウ(広尾駅逓) ヲアカン 3°31′03″E N42°17′08.85″E143°13′13.35″(雌阿寒)
D レブンケ(礼文華) 内浦岳 1°36′24″E N42°34′36.8″E140°36′02″(剣ヶ峰とする)
E ヲシャマンベ(長万部) 内浦岳・シリベツ 0°26′24″E N42°31′00″E140°22′49″(剣ヶ峰・羊蹄山)
F ヤマコシナイ(山越関所)シリベツ 0°35′02″E N42°13′49.0″E140°19′46″(羊蹄山)
G モリ(森) シリベツ 1°16′46″E N42°06′27″E140°34′51″(羊蹄山)
H 函館山(標高点) 内浦岳 0°32′15″W N41°45′02.8″E140°42′15″(砂原岳東端)
I 松前 松前灯台 大島・小島 0°43′30″W N41°27′24.1″E140°05′19″
(但し山島方位記の広尾からのヲアカンは山名の同定間違えでメアカン雌阿寒が正しいと判明)
○クスリ(釧路) は地質技術者中江徹氏考察の釧路会所内東端の弁天社跡想定地(浦見8丁目1番地)とした。
○長万部は旧港湾地の国道分岐点。森は茅部郡森町字地番整理調書参考に新川町のJRと国道の交差地点
<北海道の解析結果から判明した傾向>
北海道は全体としてデータの数が極めて少なく測量基点の表現も詳細を欠くが、解析の結果を30′単位程度
で概観すると、1800年当時の渡島半島南西端では0°30′西偏、内浦湾西岸で0°台の東偏に転じ、東ほど
東偏傾向を増し森や礼文華レブンケでは1°30′東偏になる。 室蘭から日高はデータが無く襟裳岬より東の十勝の
広尾では3°30′の東偏の絶頂になり、それより東では逆に釧路3°東偏、厚岸2°30′東偏となり、
東西での変化が顕著である。全体として東部に対して西部の方が西偏が増す後年の傾向とも整合する。
十勝広尾・釧路での反転は前後の時代の観測と整合性を比較する必要がある。尚、渡島半島南端では津軽海峡
側が西偏に対して駒ケ岳等の山地を挟んで内浦湾側が東偏となったがこの地域での東西0度の詳細位置は不明。
(2) 東北地方太平洋沿岸津軽半島北端測量(1801年)及び東北地方日本海側測量( 1802年)の磁針偏角の解析
「山島方位記」第一巻・第二巻 解析不能分を除きデータ総数59種類191件、今回解析対象45種類139件。
◎解析計算の結果
基点の地名 磁針偏角 測量年 基点の位置
J 竜飛崎崖下 0°17′33″W 1802年 N41°15′39.9″ E140°20′33.76″GPS
K 厩石正面 0°22′36″E 1802年 N41°11′57.8″ E140°25′50.0″GPS
L 三厩本町止宿工藤忠兵衛 0°31′54″E 1802年 N41°11′48.9″ E140°25′46.1″GPS
M 高野崎 0°11′47″E 1801年 N41°13′41″ E140°32′54.5″GPS灯台建物
N 油川止宿近江屋津兵衛(現愛信保育園)
0°11′58.33″E 1802年 N40°51′12.1″ E140°41′54.7″GPS
O 鮫白浜村界(八戸市) 0°09′05.7″E 1801年 N40°32′20.6 E141°34′49.2″
地元住民から聴き込み葦毛崎の円形トーチカ跡中心でGPS
P 末松山波打峠岩手県一戸 0°27′49″E 1801年 N40°14′32″ E141°18′07″台風通行不可図上
Q 大館止宿本陣浜松新六 0°21′11″W 1802年 N40°16′12.1″ E140°33′31.5″GPS
R 金光寺街道追分 0°8′38.6″W 1802年 N40°07′15.575″ E140°04′43.65″GPS
S 宮沢村 (男鹿市)止宿嘉右衛門
0°31′39″W 1802年 N40°01′19.96″ E139°55′26.66″GPS
T 湯沢止宿本陣松井甚太郎 0°01′07″E 1802年 N39°09′43.33 E140°29′31.56″GPS
U 米沢止宿大町遠藤孫三郎 0°00′43.6″ 1802年 N37°54′11″ E140°06′41″
米沢止宿は水帳・住宅地図・国土地理院HP1/25000図上で緯度経度を確認。青森県下北三八地域・岩手県・
宮城県下は止宿基点の事前調査不調。青森県袰月、鯵ヶ沢関村、深浦、松神は不確定要素有り、山形城下入口
(吹張口)は測量対象の山が至近、秋田県北部の八森、岩館止宿は未調査の為保留。
<東北地方北部の解析結果から判明した事項>
1801年から1802年の東北地方を大きく概観すると津軽海峡を渡り青森県津軽半島は東西0°台で竜飛崎では
西偏乍ら三厩以東では東偏となり、本州東寄りの八戸、一戸(浪打峠)は0°台の東偏になる。 西寄りの秋田県
能代平野の山本郡金光寺から南へ湯沢盆地、山形県米沢盆地迄ほぼ東西0°であり、日本海に突き出た男鹿半島
の宮沢では0°30′台の西偏になる。 東西0°の等偏角線は渡島半島から・津軽半島・列島弧上に中央より西側を
南北に伸び、中心より東部は東偏、西部は西偏にそれぞれ0°台で分かれている。
(3) 北陸地方測量(1803年)の一部の磁針偏角の解析 「山島方位記」第六巻・第七巻
◎解析計算の結果
V 寺泊止宿興琳寺(新潟県) データ総数11種類50件、今回解析対象9種類42件 西暦1803年11月2日
基点の位置 N37°38′24″ E138°45′58″興琳寺の西側街道門前と推定 国土地理院HP1/25000図上
磁針偏角 0°00′33″E
W 安宅町網七左衛門(脇本陣) データ総数3種類6件、今回解析対象3種類6件 西暦1803年8月14日石川県
小松市安宅町32番地(旧字河端カバタ) 現北国銀行安宅支店・吉祥庵他(郷土史家茶村外雄氏による)
基点の位置 N36°25′16.5″ E136°25′16.0″吉祥庵西側沿道北隅境界石GPS
磁針偏角 0°12′26″W
<北陸地方の一部解析結果から判明した事項>
解析件数を増やしてから論じるべきであるが1803年の北陸地方寺泊・小松間は海沿いに東西約0度になる。
西偏方向への変化を考慮すれば1800年時点の東西0°は渡島半島南端から東北地方西部沿岸を南下し北陸の日本海
沿岸の海上に達していた可能性がある。
(4) 2006年の主要課題 北海道から本州四国及び九州北部迄の沿岸の偏角の概略を解析する。
(5) 2007年の主要課題 本土西端五島、甑島、鹿児島、屋久島伊豆七島等の離島の偏角の概略を解析する。
北海道から本州四国、九州北部迄の沿岸の補充解析を進める。
(6) 2008年以降の課題 上記結果と前後の海図等による年変化の把握。
MaartenGeritsz Gauss-Weber Fritsche ノット田中館、旧海軍海図、地磁気観測所
記録、今道修一氏等との比較考察。 可能な限り内陸部及び火山周辺地域の解析。
以 上
(本稿の研究調査には日本学術振興会の科学研究費奨励研究補助金を使用しました)
(辻本 元博)
5.地磁気世界資料解析センターデータサービス報告 (2006年1月−12月)
(1)収集・発送(最近5年間)
2002年 2003年 2004年 2005年 2006年
【収集】
データブック 60冊 40冊 35冊 30冊 30冊
データシート 400枚 250枚 300枚 200枚 200枚
ディスク類 60枚 40枚 35枚 50枚 55枚
マグネトグラムの画像データ 130年×観測所 51年×観測所
ネットワーク 4000MB 6GB 8GB 8GB 10GB
リアルタイムデータ秒値 5ヶ所
リアルタイムデータ1分値 20ヶ所
【発送】
データブック 900冊 400冊 430冊 970冊 400冊
データシート 3500枚 3900枚 4400枚 4000枚 2000枚
ディスク類 80枚 15枚 44枚 19枚 10枚
WWWホームページ 3149K 3049K 3669K 4152K 4495K
リクエスト リクエスト リクエスト リクエスト リクエスト
26200MB 33600MB 41470MB 51144MB 63068MB
地磁気データのホームページからのリクエスト件数
地磁気1時間 6254 4895 4889 9893 4374
地磁気1分値 15055 16149 14022 17602 33502
地磁気1秒値 2536 4338 7929 9187 13995
KP指数 2124 2195 2894 3267 3451
(2)印刷・出版
1)データブック
Mid-latitude Geomagnetic Indices ASY and SYM (Provisional) No.16(2005)
Provisional Geomagnetic Data Plots No.32,33 (July 2005 - June 2006)
2)データシート
Provisional Dst Index (Sep.,2005 - Apr.,2006)
3)ニュース
地磁気世界資料解析センターニュース (No.95 - No.100)
4)理科年表2007への図面・データ提供
(3)オンラインデータベース
1) 信楽、峰山磁場観測データのオンラインリアルタイムマグネトグラムサービス
2) 準リアルタイム地磁気データ表示 (信楽、峰山、阿蘇、ピマーイ)
3) Near-realtime,prov,final Dst表示及びダウンロード
4) Quicklook AE表示及びダウンロード)
5) リアルタイムPi2型脈動検出+データ表示(峰山,柿岡,Furstenfeldbruck,York,APL,Teoloyucan)
6) アーカイブ地磁気データ(1秒値,1分値,1時間値)のプロットとデータ出力
7) 地磁気AE/ASY/Kp指数のプロットとデータ出力
8) オンラインデータカタログ(自動更新)
9) 国際標準モデル磁場(IGRF-10)の計算・表示
10) 国際標準電離層モデル(IRI90)による電離層電気伝導度
11) オンラインマイクロ画像データサービス
12) データカタログのPDFファイル化とHPからのサービス
13) 観測所年報のPDFファイル化
6.国際ディジタル地球年(eGY: 2007-2008)の開始
地球物理学の発展に巨大な役割を果たした国際地球観測年(IGY: International Geophysical Year,
1957-1958)から50周年を記念して計画されたいくつかの国際共同計画の中で、IGYに設立された世界資料
センター組織(WDC: World Data Centersystem)の活動と関係の深い国際ディジタル地球年
(eGY: electro-nic GeophysicalYear)が今月から始まりました。日本学術会議の中にも、「地球惑星科学
委員会国際対応分科会eGY小委員会」 の設置が承認されました。関連情報は、http://www.egy.org/
(国際委員会HP)、および http://swdcft49.kugi.kyoto-u.ac.jp/egy/ (国内委員会暫定版HP)を
ご覧ください。
7.2006年のkp指数図表
2006年のKp指数図表 (Bartels musical diagram) を下に示します。オリジナルは
ftp://ftp.gfz-potsdam.de/pub/home/obs/kp-ap/music/ の下にあります。
Kp指数の数値 (1932年以降) 、及び1990年以降のKp指数図表は
(http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/kp/index-j.html) からご利用になれます。 数値データの取得は一度に
10年分まで可能で、最新のKp指数は原則として翌月半ばには利用可能となります。
なお、2006年9月と10月のKp指数と地磁気静穏日、擾乱日は11月28日に訂正されました。それまでに
データ取得されました方は再度取得されますようお願いします。詳細は下記ページをご参照ください。
http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/kp/notice200611.txt