News and Announcements [in Japanese]
地磁気センターニュース


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地磁気世界資料解析センター News No.87 2004年9月30日
 
 
1.新着地磁気データ
 
      前回ニュース(2004年7月30日発行, No.86)以降入手、または、当センターで入力したデータの
  うち、主なものは以下のとおりです。オンライン利用データの詳細は
  (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/catmap/index-j.html) を、観測所名の省略記号等については、観測所カ
  タログ(http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/catmap/obs-j.html) をご参照ください。
  また、先週の新着オンライン利用可データは、
  (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/wdc/onnew/onnew-j.html)で御覧になれ、2ヶ月前までさかのぼること
 もできます。
 
      Newly Arrived Data
 
        (1)Annual Reports and etc.
 
            OUJ, NUR, SOO, HAN (Jun. - Aug., 2004), NGK (Jul. - Aug., 2004)
 
        (2)Kp index: (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/kp/index-j.html)
 
              Jul. - Aug., 2004
 
 
 2.Dst指数、AE指数とASY/SYM指数
 
    2004年3月~6月のDst指数 (Provisional) を配布し、関係機関に配付しました。なお、Quick Look
 Dst指数 (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/dstdir/dst1/quick.html) 、および Quick Look AE指数
 (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/aedir/ae/quick.html) は1日以内の遅れで当センターのホームページから
利用できます。また、2004年5~6月分の1分値ASY/SYM指数を算出しホームページに載せました
 (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/aeasy/index-j.html)。
 
 
3.Provisional Geomagnetic Data Plots について
 
  世界各地で測定された地磁気1分値データをプロットしたProvisional Geomagnetic Data Plotの2004年
7月までのポストスクリプトファイルが利用できるようになりました。図の形式は2日分が1画面です。
(ftp://swdcftp.kugi.kyoto-u.ac.jp/data/pplot) 。また、2004年1月から6月を載せたProvisional Geomagnetic
Data plots No.29 (Jan. - Jun., 2004)も配布しました。新たに配布ご希望の方は、センターまでお申し込みく
ださい。
 
 
4.北西太平洋における海底長期地磁気観測
 
  9月13~16日の4日間、筆者はWDCのI先生に招かれ、特別講義の講師として京都大学の学生
諸君と接する機会を得た。要は、私がここ数年手がけてきた北西太平洋の海底長期地磁気観測データが
最近漸く出始めたので「その紹介をして欲しい」との事であった。退官されてますますお元気になられた
A先生とビール片手に4号館の屋上から大文字山を眺め、T大K研以来旧知の仲であるF先生と百万遍の
K八で酔い潰れたりと、初秋の古都を満喫した数日間であった。以下は、特別講義の抄録である。
 
 図1に、現在北西太平洋で稼動中の「海底電磁気観測ステーション(SFEMS)」を示す。この装置
は、自由落下・自己浮上型の海底測器であり、1年以上の連続無人観測が可能になっている。現在の敷設
位置は、WGS84測地系で(北緯41度05.9855分、東経159度56.9660分、水深
5648m)の地点であり、この点をNWPと呼ぶことにする。NWP点では、これまでに都合3度の
投揚収を経て、計717日間分の毎分値が得られている。計測している成分は、オーバーハウザー磁力計
による全磁力絶対値・フラックスゲート磁力計による磁場直交3成分・電場及び傾斜各水平2成分・温度
の計9成分であり、この他に、ファイバー・オプティカル・ジャイロを用いた方位測定を、数ヶ月に一度
の割合で実施している。磁場観測の最小分解能は10pT、電場は約5mの直交ダイポール間の電位差を
基に60nV/m程度の精度で計測している。方位・傾斜といった姿勢データの精度は数秒~十数秒、
磁場測定精度に換算して数nTである。
 
 
 

 
 <図1: 北西太平洋で現在稼動中の「海底電磁気観測ステーション」の概念図>
 
 
 
    図2に、エルステッド衛星と新旧2世代のIGRFが予測する全磁力値の永年変化と実測値との比較を
示す。最上段の図から分かるように、主に磁場観測衛星エルステッドのデータを用いて決められた
Olsen(2002)による13次までのガウス係数時間微分と、8次までの微係数が与えられている
第8及び第9世代IGRFが、NWPにおいて予測する全磁力値の永年変化はほぼ一致する。しかし、
これら3つのグローバル・モデルが予測する永年変化は、柿岡においては大きく異なる。それを示したの
が中段の図である。右上がりの直線が第8世代IGRF,横ばいの直線がエルステッド、永年変化の減少
を示すのが第9世代IGRFである。最下段には実測値との比較を掲げた。ギザギザした曲線が、NWP
における絶対全磁力日平均値から柿岡のそれを差し引いた半年分のデータである。この実測永年変化の
地点差が示す傾向と最も良く一致するのが、エルステッド衛星から求めた予測地点差変化であり、その次
に良い一致を示すのは第9世代IGRFの予測であることが分かった。しかし、第8世代IGRFが予測
する全磁力永年変化の差は、実測地点差の時間変化をうまく説明できない。その理由は、中段の図が示す
通り、NWPにおける予測誤差ではなく、柿岡での永年変化は増加傾向が続くと第8世代IGRFが予測
している為で、実際には柿岡の全磁力永年変化は1999年を境に減少に転じている(藤井、私信)。
 
 
 

 
 <図2:上から順に、3つのグローバル地磁気モデルがNWP点で予測する永年変化、柿岡に
         おける永年変化予測値、及び、両予測値の差と実際に観測された永年変化の差>
 
 
 
特別講義に居合わせたWDCのMcCreadie博士とその場で検討した結果、第8世代IGRFで
8次まで与えられている時間微分係数は、エルステッド・データを含めて決められているにも関わらず、
恐らくその拘束が弱いため、特に近年顕著な傾向変化を示した観測点では、過去の変化傾向を未だに引き
ずっているのではないか、という結論を得た。従って、もしIGRFを用いて2000年以降の時間点を
計算する必要があるのであれば、IAGAのWG V-8が既に推奨しているように、第9世代を使用する
方が安全である。参考までに、第7世代以降のIGRFとエルステッド衛星から求めた磁場モデルとの
比較を表1に掲げる。
 
 
 

 
<表1: 各世代のIGRFとエルステッド衛星を用いた地球磁場モデルの比較>
 
 
 
  最後に、NWPに地磁気観測点が存在することで、どの程度広域的な地球磁場空間分布が改善できるか
を、波長の短いSq場についての球冠調和解析(Spherical Cap Harmonic 
Analysis; Haines, 1985)により推定してみた。その結果を図3に示す。左側に、
WDCの峰山観測点を含む17点の陸上地磁気観測点だけから求めた2001年8月の地磁気鉛直成分に
対する平均Sq内部磁場分布を、右側に、それにNWP点を加えたSCH解析の結果を掲げた。時刻は
03:00UTC、すなわち、JSTで正午である。平均Sq場は、同月の10静穏日を選び、その算術
平均として定義した。
 こうして定義した平均Sq場のX,Y,Z成分を用い、(北緯30度、東経135度)を中心とする
半径30度の球冠内の地磁気分布を、4次までのSCHで展開してある。水平分解能は1700km弱と
なった。それでも、女満別から1300km余の地点にあるNWPの有無は、日変化のような短波長の
地磁気分布決定には影響力を持ち、NWPを含めるとその周辺にあった負の目玉が消えてしまう。この
ように、NWP点における海底長期磁場観測が、広域磁場参照モデル作成にも寄与し得ることが示された。
 
 以上、NWPにおける海底磁場観測データの有用性を検証する為に、グローバル及びリージョナル・
モデルとの予備的比較/検討を行ってみた。その過程で得た筆者の雑感をまとめると、以下の2点に集約
される。
 
 ① グローバル・モデルの中には、少なくとも時間微分係数が日本周辺では合わないモデルも存在する
   ことが分かった。日本の地磁気観測水準は世界のトップ・レベルにあるにも関わらず、折角の高品
   質データがグローバル・モデル構築の過程に余り反映されていないのは極めて残念なことである。
   今後は日本からもこうした活動に積極的に関わってゆく必要がある。特に、若く有能な研究者の
   参画が求められる。
 
 ② 当面は、日本周辺で通用するJGRFのような広域磁場参照モデルの作成が急務である。
 
 
 

 
<図3 : NWP点を含めない場合のSq内部磁場の空間分布(左)とNWP点を含めた場合の分布(右)。
     2001年8月の平均Sq場を球冠調和解析により求めた。時刻は、03:00UTC、すなわち、
         JSTの正午である。黒ダイヤが陸上磁場観測点、右図で海域に付け加えた黒い★印がNWP点
         である。>
 
 
 
	                 (藤 浩明 - 富山大学・理学部・地球科学 
	  	                     地磁気世界資料解析センター・非常勤講師)
 
 
 
5.2004年7月のKp指数の訂正
 
    上記につきまして、算出元のGeoForschungsZentrum (GFZ) Potsdam
(http://www.gfz-potsdam.de/pb2/pb23/index_e.html) より下記のように訂正通知が来ております。
2004年8月11日に当センターのデータも訂正されましたので、それ以前に取得された方はお手数をおかけしますが
再取得をお願いします。なお、地磁気静穏日、擾乱日はそのままです。
 
Dear colleagues,
 
>Wed Aug 11 19:39:30 2004
Subject: July 2004 Kp recalculation
Status: R
Due to later sent 15-31 July K of Meanook and Ottawa observatories, we had to recalculate the Kp numbers
for 2004 July. You have just received the recalculated tables of this month. The 5 International Quietest
and Most Disturbed Days were not changed. Please excuse me for the troubles which are connected with this.
 
With my best regards
 
Joachim
 
                    20040701 2+2 3-2+2+1+2 2+17+  9  7 12  9  9  5  7  9  8
                    20040702 2-2 2-2 2 2+2+3-17-  6  7  6  7  7  9  9 12  8
                    20040703 2+1+2-1+2-1+2 1-12+  9  5  6  5  6  5  7  3  6
                    20040704 2 1+1+2-1 1+1 2 12-  7  5  5  6  4  5  4  7  5
                    20040705 2+2-0+1 1+1+2 2+12+  9  6  2  4  5  5  7  9  6
                    20040706 1+2+1+1+1-1 1-1- 9+  5  9  5  5  3  4  3  3  5
                    20040707 0+1+1 0+1 0+1-1- 6-  2  5  4  2  4  2  3  3  3
                    20040708 0+0+0+0+1-0+0+0+ 3   2  2  2  2  3  2  2  2  2
                    20040709 1+1+1 0+0+1-1+0+ 7-  5  5  4  2  2  3  5  2  4
                    20040710 1 2 2 1+1 2-2-1+12   4  7  7  5  4  6  6  5  6
                    20040711 3-1 1 3+4+2 4-5 23  12  4  4 18 32  7 22 48 18
                    20040712 4 3-2 1 2-1+2+4 19  27 12  7  4  6  5  9 27 12
                    20040713 4+3 3+2+2 2+3-2+22+ 32 15 18  9  7  9 12  9 14
                    20040714 1 2-2-1+1+2 2+2-13   4  6  6  5  5  7  9  6  6
                    20040715 1 1-1-1-0+2 3-3 11   4  3  3  3  2  7 12 15  6
                    20040716 1 1-1+1+2+2 2 4+15   4  3  5  5  9  7  7 32  9
                    20040717 6 4 4+2+2 1 1+2-23- 80 27 32  9  7  4  5  6 21
                    20040718 1+2 2 2 1-1+1+2-12+  5  7  7  7  3  5  5  6  6
                    20040719 1-2+1+2-2-3-2 3 15+  3  9  5  6  6 12  7 15  8
                    20040720 2-2 1+1+3-2-3-3-16   6  7  5  5 12  6 12 12  8
                    20040721 1 2-2-0+0+1-0+1- 7-  4  6  6  2  2  3  2  3  4
                    20040722 1 0+0+3-4-3+5+7 24-  4  2  2 12 22 18 56132 31
                    20040723 6 5+6 5+5+6-3 1+38  80 56 80 56 56 67 15  5 52
                    20040724 3-3-4+3 6 5 4 6-33+ 12 12 32 15 80 48 27 67 37
                    20040725 7 7+6+8-7+8 7+7+58+132154 94179154207154154154
                    20040726 7+4-2-2 1+2 4-7+29 154 22  6  7  5  7 22154 47
                    20040727 8+8-7+8 9-8+6+6 61-236179154207300236 94 80186
                    20040728 3+3+2+2 3+4-3 3 24  18 18  9  7 18 22 15 15 15
                    20040729 2 2+2 1+1 1+1 1 12   7  9  7  5  4  5  4  4  6
                    20040730 1 1+1+1 1+2-2+3+13+  4  5  5  4  5  6  9 18  7
                    20040731 1+2-1+2-2+2 2-2+14+  5  6  5  6  9  7  6  9  7
 
                                  <訂正後の2004年7月のKp指数>
 
 
 

本ホームページについては右記まで: iyemori@kugi.kyoto-u.ac.jp