地磁気世界資料解析センター News No.81 2003年9月30日 1.新着地磁気データ 前回ニュース(2003年7月31日発行, No.80)以降入手、または、当センターで入力したデータの うち、主なものは以下のとおりです。オンライン利用データの詳細は (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/catmap/index-j.html) を、観測所名の省略記号等については、観測所カ タログ(http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/catmap/obs-j.html) をご参照ください。 また、先週の新着オンライン利用可データは、 (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/wdc/onnew/onnew-j.html)で御覧になれます。 Newly Arrived Data (1)Annual Reports and etc. NGK (May. - Aug., 2003), MMK, TUM (Jul. - Dec., 2002), LOV (Jul. - Aug., Oct. - Dec., 2002), SOD, OUJ, HAN, NUR (Jun. - Aug., 2003) (2)Digital Data Geomagnetic Hourly Values: (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/hyplt/index-j.html) KAK, MMB (Jul., 2003), HTY (Jun. - Jul., 2003) Geomagnetic 1 Minute Values: (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/mdplt/index-j.html) KAK, MMB (Jul., 2003), VAL (Jul., 2003), HTY (Jun. - Jul., 2003) Geomagnetic 1 Second Values: (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/igrf/index-j.html ) KAK, MMB (Jul., 2003), HTY (Jun. - Jul., 2003) (3)Kp index: (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/kp/index-j.html) Jul. - Aug., 2003 (4)Revised IGRF 2000 (9th generation): (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/igrf/index-j.html) 2.1時間値Dst指数の算出と配布および1分値ASY/SYM指数の算出 2003年5月〜2003年6月のDst指数 (Provisional) を算出し、関係機関に配布しました。ご希望 の方は、郵便またはファクシミリにて当センターまでお申し込み下さい。なお、Quick Look Dst指数 (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/dstdir/dst1/quick.html) および Quick Look AE指数 (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/aedir/ae/quick.html) は1日以内の遅れで当センターのホームページ から利用できます。また、2003年7〜8月分の1分値ASY/SYM指数を算出しホームページに載せまし た (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/aeasy/index-j.html)。 3.フルステンフェルドブルク観測所訪問記 2003年9月1日から4日まで、ドイツにあるフルステンフェルドブルク(Furstenfeldburck, FUR)観測所を訪問してきました。訪問の目的は、後で詳しく述べるように、古いラピッドランマグ ネトグラム(早回し地磁気記録紙)のデジタルイメージ化について作業と話し合いを行うことです。 観測所では、Dr. Jurgen Matzkaにお世話になりました。図1: フルステンフェルドブルク観測所の位置。ミュンヘンの西に位置している。
図2: 観測所の正面 フルステンフェルドブルクは、ドイツの南端に位置する小さな町で、ミュンヘンの西方約30kmの ところにあります(図1)。観測所までは、ミュンヘンからS-bahnという列車に約20分乗った後、山 道を約15分歩かなければなりません。観測所は林のそばにあり、まわりには緑がいっぱいの美しい 風景が広がっていました。(図2)。フルステンフェルドブルク観測所は1939年に開設されて以来、今 日まで連続して地磁気の観測を続けています。前身をたどると1841年開設のミュンヘン(Munchen) 観測所とその後1927年に移転したマイザ(Maisach)観測所になりますから、約160年間断続的に地 磁気観測を続けてきたことになります。スポンサーはLudwig-Maximillians Universitat of Munchenという長い名前の大学です。観測所は、その大学のGeophysik Institutに所属しています。 INTERMAGNETにも参加しており、毎日データを提供しているとのことでした。地磁気観測には2 セットの観測器が使われています。メイン観測器として、観測小屋の地下室にプロトン磁力計(GEM 製)とフラックスゲート磁力計(DMI製)が設置してあり(図3)、バックアップ観測器としては、別の観 測小屋にプロトン磁力計(GEM製)とフラックスゲート磁力計(Magson製)が設置されています(図4)。 これらの観測小屋は温度管理がなされていました。メイン観測器では、絶対磁場強度と地磁気3成分 をそれぞれ0.2Hz、0.67Hzで取得しており、それを1分平均値にしたものをINTERMAGNETに提 供しているそうです。バックアップ観測器は、絶対磁場強度と地磁気3成分をそれぞれ0.2Hz、4Hz で取得しており、地磁気3成分のデータには3秒のローパスフィルターを掛けたあと、1秒値データ を作っているということでした。また、セシウムとカリウムの両方を使った光ポンピング磁力計によ る絶対観測のための小屋もあり、週に1度の割合で絶対観測をしているとのことでした(図5)。方角 を求めるための固定目印としては近くにある教会の塔の先端を利用していると聞き、なるほどそれは 固定点に最適だと思いました。データの利用者としては、こうした継続的な努力に頭が下がります。 なお、この絶対観測小屋には、展示用として昔に使われていた鏡吊り下げ式の磁力計が置いてありま した。 観測所はS-bahn の線路からだいたい2kmしか離れていないそうですが、S-bahnは交流電源を使っ ているので、観測にはほとんど影響がないとのことでした。
図3 : メイン観測器は中央の小屋の地下室にある右の小屋では光ポンピング磁力計のテストを行っている。
図4 : バックアップ観測器の小屋。左にはフラックスゲート磁力計、右にはプロトン磁力計が納められて いる。 今回の目的であるラピッドランマグネトグラムは地下の資料室に保管されていました。 A. Korschunowという人によって、1960年から1986年まで継続的に記録されたものです。 Korschunow氏自身は、1960年から1971年のデータを用いてPc2-Pc5脈動の解析しており、その解 析結果がフルステンフェルドブルク観測所の報告書に残っていますが、それ以外に解析されたことは 無いようです。ラピッドランマグネトグラムのデジタルイメージ化については、観測所のほうで作業 場所やライトを用意しておいてもらい、日本からはデジタルカメラ一式を持っていくことで、すぐ に作業に取り掛かることができました(図6)。テスト撮影や光源の調整などに少し時間がかかりまし たが、今回の滞在中に1960年前半と1984年の1.5年分のデジタルイメージを作成することができま した。残りの約24年分については、観測所の方で学生を雇ってもらい作業をしてもらうことになり ました。驚くべきことに、1898年から2003年までのノーマルランマグネトグラムも保管されている ことも分かりました。(ただし、1898-1940年の間には約20年分のデータギャップがあるそうです) 大変貴重なデータですので、引き続き共同作業を続けていこうということになりました。
図5 : 絶対観測小屋の内部。中央手前にあるのはセオドライト。
図6 : マグネトグラムをデジタルイメージ化するために使った作業台。 手前の台の上にデジタルカメラが取り付けられている。 ドイツ訪問は初めてでしたが、ミュンヘンはビールも食べ物も大変おいしく、楽しい滞在でした。 町の中では空港などを除いて英語表記をほとんど見かけることはありませんでした。日本と同じよう に英会話学校の広告が貼ってあるのには面白く感じました。フルステンフェルドブルク観測所のホー ムページ(http://obsfur.geophysik.uni-muenchen.de)では、地磁気変動をリアルタイムで見ることが できます。また、2001年以降のプロットも見ることができます。 (能勢正仁) <Photo Gallery of Germany > 左から:LM大学の本部建物内、オペラハウス、旧市庁舎 左から:LM大学地球物理学教室の建物、ミュンヘン中央駅、滞在中に発生したPc3脈動