News and Announcements [in Japanese]

地磁気センターニュース

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地磁気世界資料解析センター News    No.78 2003年3月28日
 
1.新着地磁気データ
      前回ニュース(2003年1月31日発行, No.77)以降入手、または、当センターで入力したデータの
  うち、主なものは以下のとおりです。オンライン利用データの詳細は
  http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/catmap/index-j.htmlを、観測所名の省略記号等については、観測所カタ
  ログ(http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/catmap/obs-j.html) をご参照ください。
 
      Newly Arrived Data
        (1)Annual Reports and etc.
                    ABG, ETT, HYB, KOD, NGP, PND, SAB, TRD, UJJ, VSK (1997)
                    NGK (Nov., 2002), SFS (2001), HAN, OUJ, NUR, SOD (Jan., 2003)
                    KIR (Jan. - Jun., 2001)
        (2)Normal - Run magnetograms
                    Indian Obs. (UJJ, PON, NGP, ABG, VSK, TRD : 1997)
 
        (3)Digital Data
      Geomagnetic Hourly Values: (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/hyplt/index-j.html)
                    BEL (1966 - 2000), VSS (1915 - 1925)
                    KAK, MMB, KNY (Jan.- Feb., 2003)
                    HTY (Dec., 2002 - Jan., 2003)
 
            Geomagnetic 1 Minute Values: (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/mdplt/index-j.html)
                    BEL (1966 - 2000), HTY (Dec., 2002 - Jan., 2003)
                    KAK, MMB, KNY (Jan.- Feb., 2003)
                    VAL (Jan.- Feb., 2003)
 
            Geomagnetic 1 Second Values: (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/shplt/index-j.html)
                    KAK, MMB, KNY (Jan., 2003)
                    HTY (Dec. 2002 - Jan., 2003)
 
        (4)Kp index: (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/kp/index-j.html)
                    Jan. - Feb., 2003
 
 
 2.1時間値Dst指数の算出と配布・1分値ASY/SYM指数の算出
      2002年12月〜2003年1月のDst指数 (Provisional) を算出し、関係機関に配布しました。ご希望
  の方は、郵便またはファクシミリにて当センターまでお申し込み下さい。なおH-、Quick Look Dst指数
  (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/dstdir/dst1/quick.html) および Quick Look AE指数
  (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/aedir/ae/quick.html) は1日以内の遅れで当センターのホームページから
  利用できます。また、2003年1月分の1分値ASY/SYM指数を算出しホームページに載せました。
 
 
3.オンラインカタログ(http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/catmap/index-j.html)の更新
    ホームページ上の全観測所データカタログが3月5日に更新されました。データカタログのページで
は、指定された緯度・経度の範囲内の観測所についての、印刷されたカタログに準じた観測所情報のリス
ト出力、オンライン利用可データの月別リストなどが利用できます。オンライン利用可データのカタログ
は原則として毎週更新されていますが、先週の新着データ一覧もご覧になれ、4週間前まで遡ることがで
きます。
 
4.Provisional Geomagnetic Data Plots No.26 (Jul.-Dec.,2002) の印刷と配布
    世界各地で測定された地磁気1分値データをプロットしたProvisional Geomagnetic Data Plot No.26を
印刷し、配布致しました。期間は2002年7月から12月までです。新たに配布御希望の方は、センターま
でお申し込み下さい。また、ポストスクリプトファイルによる画像データも、当センターホームページに
追加しました。図の形式は2日分が1画面です。
 
 
5.Mid-latitude Geomagnetic Indices ASY/SYM No.13 (2002)の印刷と配布
    2002年1月〜12月の1分値ASY/SYM 指数のプロット及び表を印刷し配布しました。
新たに配布御希望の方は、センターまでお申し込み下さい。
 
 
6.当センターWebホームページからのIAGA2002形式でのデータ出力について
    地磁気1秒値 (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/shplt/index-j.html)、 地磁気1分値
(http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/mdplt/index-j.html)、及び 地磁気1時間値
(http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/hyplt/index-j.html) のデータ出力形式として、これまでのWDC形式、
IAGA2000形式等に加えて、IAGA2002形式(http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/mdplt/iaga2002.txt) の指定が
可能となりました。ただしカラムの都合上、柿岡等の高精度1秒値D-成分については従来の出力形式より
も有効数字が1桁少なくなりますので注意が必要です。
 
 
7.観測史上(1868年以降)最大のSC
    SC(磁気嵐急始部)は、太陽風衝撃波の動圧増加による地球磁気圏の急圧縮が生じさせる地磁気変化
で、中低緯度では地磁気水平(H-)成分の急増加として観測される。地震波の伝搬から地球内部構造が推
定できるように、磁気圏と地表で観測されるSCの性質から磁気圏の非定常応答を知ることが出来る。
 
 1991年3月24日、極めて特異なSCが観測された。図1に、気象庁柿岡地磁気観測所(茨城県)のH-
成分の1秒値プロットを示した。
 
  
          <図-1>
 
このSCでは、H-成分の立ち上がり(約4分、ピーク値77 nT)のごく初期に鋭く(継続時間約1分)大き
な(振幅:202 nT)パルスが重畳されている。 図1には、このSCと共に、1983-1994年の柿岡の大振幅
SC(50 nT以上、図の右端に振幅を示した)16個を大きなものから順にプロットしてある。91/3/24SCが
大きいだけでなく特異な波形をしていることが分かるであろう。
 
 米国のCRRES衛星は、内部磁気圏の早朝赤道近くで、このSCと同時に強い磁場パルス(振幅:約130
nT)、電場パルス(約80 mV/m,p-p)および高エネルギー荷電粒子が 増加し数分の周期で振動する "drift
echo" 現象を観測した。これは、内部放射線帯がわずか数分間で形成されたことを                   
 
示しており、この時出来た放射線帯は、その後1年以上存在し続けて日本の磁気圏観測衛星「あけぼの
(EXOS-D)」の高エネルギー電子観測によっても確かめられている [Yukimatsu他]。Li et al. [1993] は、
磁気圏界面の地方時15時から夜側へ伝搬する磁気流体波パルスの電場による粒子加速を計算し、この
drift echo現象を説明することに成功した。
 
 このSCは、磁気圏急圧縮が放射線帯形成に寄与することを初めて示したものとして重要である。また、
上述の大パルスを磁気圏内で作ることは難しく太陽風動圧変化に起因すると考えざるを得ないが(残念な
がらこの時の太陽風データは無い)、このように鋭い大パルスは非線形効果により減衰(或いは変形)す
るはずで、太陽面で生じて形を変えずに来たとは思えない。太陽風中のストリーム間相互作用等により
地球近傍で形成されたと考えられ、興味深い研究テーマを提供する。
 
 このSCパルスの柿岡でのH-成分振幅202 nTは、IGY(国際地球観測年;1957-58)以後1994年までの
期間で最大であった。2、3番目の振幅は、146 nT(1991/7/8)、126 nT(1960/4/30)である。これに刺激
されて振幅SCに興味を持ち、柿岡の40 nT以上のSC全て(1924-1994年、140個)のリストを作った結
果、1940年3月24日(奇しくも同月日!)に推定振幅273 nT以上のSCが観測されていることが分かっ
た(図2)。
 
  
 
                                          <図2>
 
 
Mayaud [1980]は、古い観測所を訪ね歩いて1868年から100年間のSCのリストを作った。このリスト
から低緯度観測所の大振幅SCを8番目まで拾い出すと以下の表のようになる。
 
 
            Date      UT      AT      ANS          	Date      UT      AT      ANS
        1892  7/16  	1724    139nT 	 133nT      	1940 	3/24    1536  	310nT   1161nT
        1921  5/13  	1306    127    	  89        	1946 	7/26  	1842  	151   	100
        1928  7/7   	2318    308    	 235        	1947 	7/17  	1736  	133   	109
        1938  1/16  	2230    163    	 129        	1947 	7/17  	1642  	149   	217
 
 
 この表で、AT欄は低緯度観測所Colaba・Alibag(インド)、Batavia(インドネシア)のH-成分振幅の
平均値、ANS欄は中緯度南北2観測所 [北半球:Kew (-1885;英)、Saint-Mauer・ValJoyeux・Chambon
La Foret(仏)、 南半球:Melbourne(-1929)・Toolangi・Amberley・Watheroo(豪)、Christchurch(ニ
ュージーランド)] の平均値(どちらかが欠測の時は片方の値)を示す。AT観測所の記録は1870年以前
は無い。
 
 1928/7/7 (308 nT),1940/3/24 (310 nT) のSCのAT振幅が断然大きい。1928年のSCの柿岡の記録は、こ
れが2段階に増加するSCであり、2段目の最大値までを取っても75nT程度の振幅であることを示してい
る。MayaudリストのANS 235nTも、1940年のSCの1161nTに比べれば小さく、汎世界的には1940年の
SCが大きいことを示唆する。1968、1969両年のATデータは無いが、この期間のSCのANSの最大値は
64nT(1970/1/3)であり、あまり大きなSCは無かったと思える。従って、1940/3/24 (15.6hUT)のSCが
1868年以降最大のSCであったらしいと推論できる。
                                                                                    (荒木 徹)
 
8.SWME/PURAES会議が京都(地磁気センター)で行われました
    3月17日から19日にかけて、Space Weather Magnetometer Experiments (SWME)/ Project for Upgrading
Russian AE Stations(PURAES)会議が地磁気センターと通信総合研究所の共催で地磁気センターの建物内
の共同会議室で行われました。(以下通常参加者の敬称は略させていただきます)。17日はPURAES参
加機関(京大地磁気センター[亀井、家森、荒木、能勢、竹田]、通信総合研究所[菊池、国武、長妻]、ロシ
アAARI[Oleg Troshichev、Sasha Janzhura]、IDG[Julius Zetzer]、アメリカJHU/APL[Ching Meng, Kazue Taka
hashi]、アラスカ大学[Roger Smith, Hans Nielsen])のみで、つい最近のロシアのAE観測所(Pebek、Tixie、
Norilsk、Cape Chelyuskin)への観測機器の設置及びこれらからの気象衛星「ひまわり」によるリアルタイ
ムデータの送信成功を祝い、今までと現状の問題を話し合いました。また、次なる段階としてDixon、
Amdermaの2観測所を整備する事になりました。
 
 18日と19日はSpace Weatherに関係する地上観測のチェインの代表者に参加をしてもらいお互いに
Space WeatherやNASAのILWS計画にどのような共同観測が出来るか、更に、どのような協力が出来る
かをPURAESをひとつの見本として討議しました。参加したプロジェクトはPURAES/SWME(日本・ロ
シア・米国)、SMALL+CHIMAG(中国+アメリカ Yu Fen Gao)、CPMN(日本 湯元)、CANOPUS+
CANMOS+SAMNET(カナダ+UK Ian Mann)、GIAM(アラスカ Hans Nielsen)、MACCS+南極(アメ
リカ+イギリス Mark Engebretson)、USGS(アメリカ Jeffrey Love)、Greenland-Chain+IMAGE(ヨーロ
ッパ Kazue Takahashi代読)、ILWS(NASA Kazue Takahashi紹介)、日本の人工衛星計画(町田 紹介)、
CRLの活動(菊池 紹介)などです。
 
 Convenerは亀井、菊池、Ching Mengが勤め、Chairmanは菊池、Ching Meng、Kazue Takahashi、Roger
Smithが勤めました。この会議では杉浦先生や赤祖父先生も参加され発表されました。またこれからの共
同計画について活発な議論が繰り広げられました。将来はこのような会議をもっとはっきりしたオープン
なものにしようとしています。
                                                                                  (亀井 豊永)