News and Announcements [in Japanese]

地磁気センターニュース

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地磁気世界資料解析センター News   No.76 2002年11月29日
 
1.新着地磁気データ
      前回ニュース(2002年9月20日発行, No.75)以降入手、または、当センターで入力した
データのうち、主なものは以下のとおりです。オンライン利用データの詳細は
  http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/catmap/index-j.htmlを、観測所名の省略記号等については、観測所
カタログ(http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/catmap/obs-j.html) をご参照ください。
 
 
      Newly Arrived Data
        (1)Annual Reports and etc.
                LRV (2001), SOD (2001), SPT, GUI (1999-2000)
                HAN, NUR, OUJ, SOD (Sep. - Oct., 2002), NGK (Aug. - Oct., 2002)
 
        (2)Digital Data
      Geomagnetic Hourly Values: (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/hyplt/index-j.html)
                CBI (Jan. - Apr., 2002), KAN, KNY, MMB (Sep. - Oct., 2002)
                HTY (Aug., 2002), ABG, NGP, PND, TRD, UJJ, VSK (1997)
                PIL (1941 - 1951, 1956 - 1985)
 
            Geomagnetic 1 Minute Values: (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/mdplt/index-j.html)
                CBI (Jan. - Apr., 2002), KAK, KNY, MMB (Sep. - Oct., 2002)
                HTY(Aug., 2002)
 
            Geomagnetic 1 Second Values: (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/shplt/index-j.html)
                KAK, KNY, MMB (Sep. - Oct., 2002)
 
        (3)Kp index: (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/kp/index-j.html)
                Sep. - Oct., 2002
 
 
 2.1時間値Dst指数の算出と配布・1分値ASY/SYM指数の算出
      2002年 8 月〜2002年 9 月のDst指数 (Provisional) を算出し、関係機関に配布しました。
ご希望の方は、郵便またはファクシミリにて当センターまでお申し込み下さい。なお、Quick Look Dst指数
  (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/dstdir/dst1/quick.html) および Quick Look AE指数
  (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/aedir/ae/quick.html) は2〜3日の遅れで当センターのホームページから
利用できます。また、2002年8月〜10月分の1分値ASY/SYM指数を算出しホームページに載せました。
 
 
3.データカタログNo.26の印刷と配布
    当センターで収集・整理・サービスしております地磁気データのカタログNo.26を印刷し、関連機関
に配布しました。残部がまだ多少ありますので、新たにご希望の方は郵便またはファクシミリにて当セン
ターまでお申し込み下さい。
 当センターのホームページの全データカタログも同様に更新されているほか、上記カタログのPDF版
(http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/wdc/pdf/Catalogue/Catalogue02.PDF)も利用できる予定です。
 なお、オンライン利用可データのカタログは原則として毎週更新されているほか、4週間前から先週ま
での新着データ一覧も下記URLからご覧になれます。
http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/wdc/onnew/onnew-j.html
  また、下記URLアドレスから、指定された緯度・経度の範囲内の観測所についての印刷されたカタロ
グに準じた観測所情報のリスト出力が可能です。
http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/catmap/obs-j.html
 
 
4.新規採用
  11月18日付けで、後藤紘子研究支援推進員(非常勤職員)着任
 
 
5.第四回エールステッド衛星国際科学班会議に出席して
  9月の23日から27日までデンマークの首都
コペンハーゲンで開かれたエールステッド衛星国際科学班会議に出席しました。113人の参加者の内日本
人は私と家森先生、松岡彩子先生(宇宙研)の3人でした。今回で4回目になるそうで、1999年2月の
打ち上げからは2回目の会議になります。この場で会議に出席した感想を報告します。
 
  
 
  Oersted衛星は高度550-850kmの低高度極軌道衛星で、Magsat衛星以来20年ぶりの地球主磁場精密
観測を主目的にしています。GPS受信機で位置情報を得ているため、報告された研究結果も大きく分け
て磁場を使った物とGPSによる物が主でした。また
Oersted衛星とほぼ同じ性能のSAC-C(アルゼンチン)を使った研究やCHAMP衛星(ドイツ、電場
磁場重力場観測)からの結果も報告されていました。従来と違った方法(要は球面調和関数を使わない)
で外部寄与と内部寄与の磁場を分離する試みなどは国内であまり聞かない内容で、極域FACの研究も
いくつかありました。とりわけGPSを使った研究は幅が広く電離層を対象とした物はもちろん海洋や
気象がらみの物までありました。将来計画では小型の衛星を4つ1組にして磁場観測をするSWARMが
個人的には楽しみです。4衛星使うためその場の電流を逐一求める事ができるわけで、ほぼデータが
取れた後はぜひ使ってみたいと思います。
 
  
 
 会議があったのはコペンハーゲン中央駅から歩いて10分ほどのところにある会議場で運河沿いに
ありました。運河は街の中を縫う様に流れており、ヨットやフェリー、なぜか戦艦まで停泊しています。
25日の晩は出席者全員で小さめのフェリーで運河をクルー ジングしながらのコペンハーゲン市内案内
の後、夕食を食べたりと非常に楽しいものでした。
 
  
 
 最終日の27日に会議を抜け出してコペンハーゲン市内とシェイクスピアの「ハムレット」の舞台に
なったクロンボー城を観光しました。クロンボー城はさすが陰欝で不気味な迫力があり、おそらくは城と
しては質素であろうと思われるのですが、それがなかなかの雰囲気を持っていました。
 
  
 
コペンハーゲン市内は、チボリ(遊園地)は夏の間しか営業していないため覗く事もできませんでしたが、
北欧の国らしい渋い落ち着いた街並でした。ちなみにデンマーク人の誇りは「この美しい街を守るために
ナチスドイツにいち早く降参した(現地老人談)ことらしいです。
 
  北欧最大の歩行者天国の通りにはレストランや土産屋、デパートが軒を連ねる中、ストリート
ミュージシャンや大道芸人がちらほらといて、歩いているだけでも退屈しませんでした。
 
  
 
コペンハーゲンの運河沿いにはアンデルセン童話の「人魚姫」の像があるわけで、「世界三大がっかり」
の一つらしいのですが、そう聞いて見てきました。ほぼ等身大と思われる大きさの像でなるほど納得の
しょぼさでした。ちなみに残りの2つはシンガポールのマーライオンとブリュッセルの小便小僧だそうです。
 
     
                                                          (京都大学・大学院理学研究科・
                                                       博士課程2年・山下 哲)
 
6.精密磁場観測衛星の進歩と地上磁場観測の意義
 
 上記会議に出席して強く印象づけられたのは、約20年余り前にNASAが打ち上げ、低高度衛星による
地球磁場精密観測に画期的進歩をもたらしたMagsatに比較して、更に一桁近く精度が向上したことで、
低高度衛星観測でありながら、1nTの絶対精度を議論する領域に近づいてきたことです。しかも、現在
は3機が飛翔していて、更に数年後には数機上がる可能性が高く、連続観測という点でも、地上観測と
比肩する状況になっています。空間的には、極軌道衛星は海洋上を含め、全緯度経度をカバーしますから、
地上あるいは海洋底で観測する意義が何かということを再確認する必要があると考えます。
地上観測の利点とされてきた長期精密連続観測が、もはや衛星観測に脅かされている訳で、ここに来て、
地球磁場のモデリングやグローバルスケールでの現象に関する地上観測の重要性の第一義は、電離層・
磁気圏電流による磁場と地球内部電流による磁場の分離ということに移ったという印象を受けました。
すなわち、このような高精度観測を生かして大きな学問的進展をもたらすためには、地上観測と衛星
観測を用いて、電離層・磁気圏電流を精密にモデリングすることがこれから非常に重要であると考えられ
ます。もちろん、衛星観測では困難な、火山活動等による局地的異常に関しては、地上観測の重要性は
従来と変わりません。
 今回の会議では、我が国でもこのような低高度衛星による精密磁場観測をやりたい(!)とつくづく
思いました。    
 
(家森 俊彦)