1997: No. 41 [Jan], No. 42 [Mar], No. 43 [May], No. 44 [Jul], No. 45 [Sep], No. 46 [Nov]
1998: No. 47 [Jan], No. 48 [Mar], No. 49 [May], No. 50 [Jul], No. 51 [Sep], No. 52 [Nov]
1999: No. 53 [Jan], No. 54 [Mar], No. 55 [May], No. 56 [Jul], No. 57 [Sep], No. 58 [Nov]
2000: No. 59 [Jan], No. 60 [Mar], No. 61 [May]
★地磁気センターニュース No.62/2000年7月14日発行★ 1.新着地磁気データ 前回ニュース(2000年5月26日発行,No.61)以降入手、または、当センターで入力したデータ の内、主なものは以下のとおりです。(観測所名の省略記号等については、データカタログ (http://swdcdb.kugi.kyoto-u.ac.jp/catmap/obs-j.html) をご参照ください。) Newly Arrived Data (1)Analogue Data Annual Reports and etc.: Indian Obs.(ABG, PON*, NGP*, TRO, UJJ, HYB, KOD, SAB, ETT, 1995) Finnish Obs.(SUD, OUJ, HAN, NUR, May 2000), LOZ(1999), MMK(Jan.-Jun. 1999) TUM*(Jul.-Dec. 1999), Tatuoka(1996-97), Syowa(1998), HER,HBK(1999) Niemegk(May-Jun. 2000) (2)Digital Data Geomagnetic Hourly Values: API,EYR,SBA(1999), CLF(1951-55), ESA(Nov.-Dec. 1999, Jan.2000) KNZ(Nov.-Dec. 1999, Jan.2000), MIZ(Nov.-Dec. 1999, Jan.2000), HTY(Jan.-May 2000) ABK(1961,66,67,78,80-94,97), LOV(1929-57,60-97), KAK,MMB,KNY(May-Jun. 2000) CBI(Jul.-Dec. 1999), ABG,PND,NGP,TRD,UJJ(1995) Geomagnetic 1 Minute Values: VAL(May 2000), KAK,MMB,KNY(May-Jun. 2000), HTY(May 2000), CBI(Jul.-Dec. 1999) LOV(1982-86, 92-95, 97-98), ABK(1981, 90-92, 95, 97-98) Geomagnetic 1 Second Values: KAK,MMB,KNY(May-Jun. 2000), HTY(May 2000) (3)Kp index Kp-Index Table(May-Jun. 2000) *新観測所 TUM: Turmanny(GGlat 69.14N, 35.82E, Gmlat 64.1N) PON: Pondicherry(GGlat 11.92N, 79.92E, Gmlat 2.4N) NGP: Nagpur(GGlat 21.15N, 79.08E, Gmlat 11.6N) 2.一時間値Dst指数の算出と配布・1分値ASY/SYM指数の算出 2000年4 月のDst指数(Provisional)を算出し、関係機関に配布しました。ご希望の方は、郵便またはフ ァクシミリにて、京都大学大学院理学研究科地磁気世界資料解析センターまでお申し込み下さい。なお、Q uick Look Dst指数 (http://swdcdb.kugi.kyoto-u.ac.jp/dstdir/)および Quick Look AE指数 (http://swdcdb.kugi.kyot o-u.ac.jp/aedir/ae/quick.html) は2〜3日の遅れで当センターのホームページから利用できます。また、2000 年5月までの1分値ASY/SYM指数を算出しホームページに載せました。 3.第9回IAGAワークショップに参加して 地磁気観測所は京都大学と「地磁気及び太陽風データの国際即時交換の推進とそれを用いた宇宙天気の研 究」という共同研究を行っています.このたび,この共同研究の一環として,6月12日から18日にかけて スロバキアで開催されたIAGAワークショップに参加して参りました. ワークショップ前半の6月12〜14日にはフルバノボ地磁気観測所(絶対観測室の外観及びその内部)において Measurement Sessionが行われました。 世界各国の地磁気観測機関が使用する観測器を持参して,フルバノボの磁力計の値と比較するものです。 偏角(D),伏角(I)については各国からおよそ30〜40台の測器が持ちよられて,3つの器械 台を用いて交代で測定が行われました.観測データはフルバノボ観測所にて集計し,後日結果を送付すると の由です.朝から夕方までDとIの測定を行った後,夜間は全磁力の比較測定が行われました. 当所からも磁力計一台(カールツァイス製の非磁性経緯儀にバーティントン社製のフラックスゲート磁力 計を載せたタイプのもので,D,Iを分解能1秒で測定できる)を持っていって比較観測に参加しました. 現地の観測方法は柿岡で行っているものとはかなり異なっていて,観測回数が少ないのもさることながら, 磁力計セッティング位置のずれや,観測中のレベル変動についての補正がまったく行われていないのには, 面食らいました.特に当地の伏角(約64度)では,レベルが1秒動くとDに約2秒の影響が出るので,こ れを無視するのはいささか大胆ではないかと. 後半の15〜17日にはScientific Sessionが行われました.観測測器,観測の実施,データ処理等に関する 諸問題についての発表が行われました.観測機関からの参加者が多いこともあってか,実務的な発表が多か ったように思います.また,当所からはJR水戸線を用いて行った直流電化鉄道による磁場擾乱実験につい て,ポスターセッションにて発表しました.直流電車による磁場擾乱は広範囲にわたり影響を及ぼすため, 地磁気観測にとっては深刻な問題となります.なかでもフランス,スペインといった国の地磁気観測所から 参加した方々の強い関心を引いたようで,あとでポスターのコピーを送るように頼まれました. 今回のワークショップは参加者が80名くらいでした.フルバノボ観測所では天文や重力の観測も行って いて,今回のワークショップは地磁気関係以外のスタッフが協力してこなしていた由です.このワークショ ップは2年に一度開催されていますが,次回は南アフリカのハマナスで,そしてその次の2004年には柿岡 で開催されることになっています.今回参加してみて,スタッフの数や言葉の問題など,これを柿岡でホス トするのはなかなか大変だとすこし不安になりました. さて,小生がスロバキアを訪れたのは,今回が初めてですが,なかなか厳しい目に会いました.行きの飛 行機が2時間遅れで,ウィーン着が23時.フルバノボのスタッフが迎えに来ていましたが,国境で小生だ け「ビザが無い」として入国拒否!いくら「これは公用旅券だからビザはいらんのだ」と説明してもだめで 仕方なく,ひとりでオーストリアの名も知らぬ町のホテルに泊まるはめに・・・. 翌日日本に問い合わせたら,やっぱりビザは不要の由.再度バスで国境越えを試みましたが,この日オー ストリアは祝日だったようで,銀行も開いてない.両替ができないから何も食えない.30ドルほどをホテ ルで替えてもらってましたが,バス代がいくらかかるか分からないので,前日の機内食で出たクラッカーで 飢えをしのいで,バスを待つ.今度の国境は何事も無く越えられて,初日の夕方にようやくワークショップ に合流できました. 宿泊はスモレニス城というお城で,Scientific Sessionはこのなかで行われましたが,Measurement Session が行われたフルバノボ観測所まではバスで2時間弱とかなりかかりました.特に前半には観測史上2番目の 暑さを記録した由で,夏時間のため何時までも明るく,また空調というものが建物にもバスにも殆ど存在し ない彼の国では,夕暮れどきにお城で飲むビールがなによりの楽しみでした. 最後に,今回の出張に際しましては,日本学術振興会科学技術研究費補助金を使用させて頂きました.ま た家森教授を始め関係の皆様には事務手続き等大変お世話になりました.記して感謝申し上げます. (気象庁地磁気観測所観測課 源 泰拓) 4.SuperDARN 2000 Annual Meetingに出席して 2000年5月23日から26日までの4日間、オーストラリアビクトリア州のビーチワースという街で開 催されたSuperDARN 2000 Annual Meetingに参加してきましたので報告致します。SuperDARN (Super Dual Auroral Radar Network)は、短波レーダーの国際共同観測プロジェクトで、世界中の様々な国の協力によって 運営されています。この会議は一年に一度開催され、レーダーの運用状況や新しいプロジェクトの提案、S uperDARNを用いた研究の発表などが行われます。開催国は加盟国の持ち回りで、今年度はタスマニア島の レーダーが新しく運用を開始したことを記念してオーストラリアで開かれました。SuperDARNは国際共同 観測のプロジェクトですのでアメリカ、カナダ、イギリス、フランス、日本、イタリア、フィンランド、ス ウェーデン、南アフリカ、オーストラリアの計10ヶ国から計60人程度の参加者がありました。日本からは 南極昭和基地にレーダーを2基持っている国立極地研究所、アラスカでレーダーの運用を計画中の郵政省通 信総合研究所、名古屋大学STE研、東海大から10人程の方が参加されました。 会議は、まず各レーダーのPIがレーダーの運用状況を報告することから始められました。SuperDARN では、現在南北両半球において14基 (2基が計画中)のレーダーを定常運用していますので、すべての報告 が終わるまでにかなりの時間がかかりました。続いて、これから行うべき新しい観測の提案などが行われま した。これまでよりもより高緯度にレーダーを建設し、極冠域を集中的に観測するという計画 (PolarDARN プロジェクト)の話に個人的には興味を持ちました。それに引き続き、全部で50件程の研究発表が順に行わ れました。SuperDARNは電離圏のプラズマ対流の速度を観測していますので、研究発表もプラズマ対流の 時間発展を扱ったものが中心ですが、それ以外にも電波の反射体であるプラズマ密度不規則構造の性質やレ ーダーによって観測されるULF波動などさまざまな内容の発表がありました。ここ数年盛んに取り組まれ てきたグローバルな電離圏プラズマ対流の時間発展を調べる研究は一時期の盛り上がりに比べると多少下火 になってきているようです。それに対して、昼間側のリコネクションに伴うカスプ域の高速プラズマ流に関 する研究がこれからのトレンドとなりそうな雰囲気でした。また、全体としてSuperDARNと何か他の観測 手段を組み合わせようとする動きが目立ちました。具体的には以下にあげたような同時観測結果が報告され ました。 ・EISCAT (イギリス、フィンランド、スウェーデン) ・ポーラー衛星オーロライメージ (アメリカ、カナダ) ・オーロラ全天カメラ & 地上磁場 (日本、イギリス) ・クラスター衛星 (フランス 計画中) 特に、クラスター衛星との同時観測は、昼間側リコネクションの振る舞いをレーダーと衛星で同時に見れる ということで注目を集めていました。 研究発表のセッションの後には、PIミーティング (各レーダーのPIによるSuperDARNに関する総合 的な話し合い)、ソフトウェアワーキンググループ (運用、解析に用いるソフトウェアに関する議論)、オペ レーションワーキンググループ (運用の日程、共同観測などの打ち合わせ)などが行われていました。私は レーダーのオペレーションには関わっていませんので、このいずれにも出られませんでしたが、ワークショ ップの最後に各々のミーティングの責任者から議論の結果が報告され、これからSuperDARNコミュニティ が全体としてどのような方向に進もうとしているのかをおぼろげに理解することができました。 会議の日程は4日間で比較的ゆっくりとしたスケジューリングだったように思います。SuperDARNの コミュニティ自体がそれほど大きいものではないので、皆が顔見知りのような感じで、非常に過ごしやすい 雰囲気でした。エクスカーションの時に訪れたワインレストランで、SuperDARNプロジェクトを立ち上げ たR.A. Greenwaldさん(ジョンズホプキンズ大、応用物理研究所)と同席した際に彼が言った次のような言葉 が印象的でした「最初は、数人で始めたプロジェクトだったけど、今はワークショップにこれだけたくさん の人が来てくれる。まったく驚きだよ。」なお、来年のワークショップはイタリアで、再来年はアラスカで 開催される予定です。 最後に、今回ワークショップ参加に際しましては、国立極地研究所からご援助頂き、佐藤夏雄先生を始 め関係の皆様には大変お世話になりました。この場をかりまして御礼申し上げます。 (京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻 細川敬祐) 図の注釈 : 南半球のレーダーの視野。TIGER Tasmaniaというレーダーが昨年度から新しく運用を開始した。 SuperDARNのレーダーの中でもっとも低い緯度に位置し、新しい観測結果が期待される。