News and Announcements [in Japanese]
地磁気センターニュース
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地磁気世界資料解析センター News No.130 2011年11月30日
1.新着地磁気データ
前回ニュース(2011年9月30日発行, No.129)以降入手、または、当センターで入力したデータの
うち、オンラインデータ以外の主なものは以下のとおりです。
オンライン利用データの詳細は (http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/catmap/index-j.html) を、観測所名の省略
記号等については、観測所カタログ (http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/catmap/obs-j.html) をご参照ください。
また、先週の新着オンライン利用可データは、(http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/wdc/onnew/onnew-j.html)で
御覧になれ、ほぼ2ヶ月前までさかのぼることもできます。
Newly Arrived Data
(1)Annual Reports and etc.(off-line)
KIR (2010)、NGK (Sep., 2011)
(2)Kp index: (http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/kp/index-j.html)
Sep. - Oct., 2011
2.AE指数とASY/SYM指数
2011年6月-9月のAE指数暫定値を算出し、ホームページに載せました
(http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/ae_provisional/index-j.html)。
また、2011年9-10月のASY/SYM指数を算出し、ホームページに載せました
(http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/aeasy/index-j.html)。(下段参照)
3.2011年9月までのProvisional AE指数算出のお知らせ
近年は、人工衛星データでさえ、取得から公開までにそれほど長くの時間を待つ必要が無くなってきま
した。そうした状況を踏まえて、サブストーム発生基準として広く使われているAE指数も、人工ノイズな
どを含んでいてモニター目的であるrealtimeバージョンから、科学解析に利用可能なprovisionalバージョン
へのアップグレードをなるべく迅速に行うように努力しています。このアップグレードには、人工ノイズの
除去や各観測所の地磁気ベースラインの決定など人手がかかる点や、時には観測所への問い合わせが必要な
場合があるため、最短で数か月程度の遅れを目標としています。
最近はロシア国内の4観測所も、関係各機関との折衝や技術提供の結果、3観測所からは比較的安定にデ
ータがリアルタイムで送付されるようになってきました。残りの1観測所も来年を目途にデータのリアルタ
イム転送が行われることになっています。
現時点で、11観測所のデータを用いて算出したProvisional AE指数が2011年9月までの期間について利
用可能になっています。データサービスのWebアドレスは以下の通りです。
http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/ae_provisional/index-j.html
なお、Provisional AE指数算出には、科学研究費補助金(研究成果公開促進費・データベース)の援助を受け
ています。
<2011年9月27日のProvisional AE指数>
4.Budkov地磁気観測所訪問
筆者は,(独)日本学術振興会平成23年度特定国派遣研究者として,2011年9月上旬から一ヶ月間プ
ラハに滞在した。その間チェコ共和国唯一の地磁気観測所であるBudkov Observatoryを訪問する事が
できたので,以下にその現状を簡単に報告する。
Budkov地磁気観測所はプラハの南南西約百kmに位置しており,プラハから車で約二時間弱,ここまで
来ると最寄りのドイツ国境まで約60kmという南ボヘミア山中の静かなBudkov村に在る。ここでの地磁気
観測は,国際地球観測年(IGY)を契機に始まったとされているが,IGY当時はまだ臨時の観測点でしか
なく,チェコ共和国の地磁気観測所として正式に長期観測が始まったのは1967年からである。
チェコでの地磁気観測は,1839年にKarl Kreil(1798~1862,プラハ・カレル大学天文学教室教授)が
プラハ天文台で偏角(~N16oW)と水平分力を測定したのが,その嚆矢とされている。ガウスが“Allgemeine
Theorie des Erdmagnetismus”を著し,世界で初めて地磁気の球面調和関数展開を行ったのが1838年である
から,その直後くらいから装置による地磁気測定がチェコでは行われていた事になる。その後1926年まで
はプラハ市内での地磁気観測が断続的に続けられたが,市内を走る電車によるノイズのため中断を余儀無
くされた。漸く継続的な地磁気観測が再開されたのは,世界恐慌や第二次世界大戦を挟んだ1946年,プ
ラハ中心部から南東へ約14km離れたPr?honice(プルホニツェ)においてであった。Pr?honiceでの地磁
気観測は,Budkovで長期観測が開始されてからも1972年まで約五年間にわたって維持された。これらの
三か所における地磁気偏角の永年変化を見ると(Hejda and Hora?ek, 2006),チェコ国内では1800年代前
半には15度を優に超える西偏であったが1980年代前半に東偏に転じた事や,これら異なる点での絶対測
定結果が(バイアスを除き)互いに矛盾しない事,また,近隣諸国の連続観測結果(例えば,スロヴァキ
アのStara ?ala - Hurbanovo)とも整合する事等が分かる。
<写真1:完成間もないBudkov <写真2:観測所敷地入口> <写真3:敷地内に点在する
地磁気観測所庁舎> 各地磁気測定小屋>
写真1にBudkov観測所の新庁舎を掲げる。この建物の一階には二,三の研究室と広い食堂があり,二階
には最大十人程度は宿泊できる施設が併設されている。大学その他の教育機関の野外実習やチェコ国内の地
球化学関連研究機関の研修等に利用されているとの事であった。小規模のワークショップであれば,一階の
食堂兼会議室と二階の宿泊施設を使って泊まり込みで開催する事ができ,羨ましい限りであった。地磁気測
定自体は,庁舎隣の門(写真2)をくぐった観測所敷地内に散在する各測定小屋(写真3)で行われており、
そこからデータが新庁舎へ送られて来る。送られて来たデータは,庁舎内の研究室で最終処理を行い,GFU
へと転送される。写真2にも見える”GFU”とは,チェコ語のGeoFyzikalni Ustavの略で,英語ではInstitute
of Geophysicsである。すなわち,この観測所は「チェコ科学アカデミー・プラハ地球物理学研究所」の傘
下にあり,我々(私と私の受入研究者であるカレル大数物学部Jakub Velimsky助教授)を、自らが運転する
公用車でBudkovまで連れて来てくれたのは,他ならぬ現GFU所長のPavel Hejda氏(写真4)であった。
所長自らが引率して来てくれたお蔭で,観測所の現状をきめ細かく教えてもらう事ができたのは幸運だった。
<写真4:手前からHejda, Vlk, <写真5:CANMOSコンソールール> <写真6:GDASコンソール>
Velimskyの各氏>
Budkovでは,8 Hzで生データを測定し,それらから毎秒値・毎分値・毎時値を算出している。主任技術
者Michel Vlk氏によれば,毎秒値の提供は原理的には可能だが,リアルタイム・データ転送に問題がある、
との事であった。この地磁気観測所では,現在二つのデジタル地磁気計測システムが並行して稼働しており、
一つはCANMOS(写真5),もう一つはGDAS(写真6)と称されている。1993年に導入された前者の方が古く,
後者は十年後の2003年から運用されている。各々のセンサーは,前者がカナダNarod社製三軸フラックス
ゲート磁力計と英国ELSEC社製スカラープロトン磁力計,後者がデンマーク気象庁製吊り下げ式ベクトル
フラックスゲート磁力計とカナダGEM社製オーバーハウザー型スカラープロトン磁力計の組み合わせであ
る。後者のシステムは,実際にはWDCエディンバラが供与したものであった。
<写真7:絶対測定用セオドライト> <写真8:落雷により頂が消失した敷地内の樹木>
旧式のCANMOSは耐用年数が来次第退役の予定であり,その後はGDASシステムのみで運用を続ける
方針との事。実際,CANMOSシステムによるデータで確定値を算出したのは2009年が最後であり,2010
年以降の確定値はGDASシステムに準拠している。また,写真7のZeiss社製磁気儀を用い,地磁気絶対観
測は週二回の頻度で行われており,その為にプラハのGFUから技術者二人が毎週交代で派遣されている。
彼らの都合がつかない場合には,Budkovに唯一常駐しているVlk氏が業務を代行する,との事であった。
Vlk氏によれば,Budkovは静かで良い所だが時折強い雷雨に襲われる事があり,最近では2011年春の落雷
(写真8参照)により停電が起き観測所の全システムが止まってしまい,その復旧にかなりの時日と労力
を要したそうである。
表1.チェコ共和国Budkov地磁気観測所のメタデータ
ABB lat. lon mlat mlon elevation H D I
*これらは2007年の値。
最後に,Budkov観測所の主なメタデータを掲げる(表1)。Budkovは1994年にINTERMAGNET観測所の認定
を受け,1998年以降はプラハのGFUを介してTVメディアへ地磁気活動情報を天気予報の一環として供給
している。最近では,GFUの超高層物理学部門の宇宙天気プロジェクトにも参画しており,欧州地磁気繰
り返し測量計画MagNetにおいてはチェコ全土に八か所ある一等磁気測量点の参照点としても重要視されて
いる。Hejda氏によれば(Budkovもご多分に洩れず)その維持管理予算の獲得に苦労が絶えない様である
が,庁舎の新築に成功したり,純増の常駐技術者1名を含む複数の維持管理スタッフにより週二回の絶対観
測を欠かさず実施する等,地磁気観測発祥の地である欧州ならではの伝統を感じさせられた訪問でもあった。
参考文献
Hejda, P. and J. Hora?ek (2006) History of magnetic measurements on the territory of the Czech
Republic, paper presented at XIIth IAGA Workshop on Geomagnetic Observatory Instruments,
Data Acquisition and Processing, June 19-24, Belsk, Poland.
(藤 浩明)
5.「超高層大気長期変動の全球地上ネットワーク観測・研究」(略称:IUGONET)プロジェクト報告
<@iugonetのTwitter>
日本の5機関7組織が参加しており、地磁気センターも参加して
いるIUGONETプロジェクトでは、全地球に展開している磁力計、
レーダー、光学観測装置、太陽望遠鏡等を用いた超高層大気の地上観
測ネットワークにおいて、これまで長年にわたって蓄積された多種多
様な観測データに関するメタデータ・データベースシステム
(http://search.iugonet.org/iugonet)、ならびに様々な観測データを
取り扱える解析ソフトウェア (UDAS: iUgonet Data Analysis Software
suite) を、2011年初旬からβ公開しております。
IUGONETの比較的最近の話題として、Twitterを用いた情報提供
を開始したことを紹介します。
American Geophysical Unionや日本地球惑星科学連合は、Twitter
を用いた情報提供を行ってます。また2011年の日本地球惑星科学
連合大会においては、「ソーシャルメディアと地球惑星科学」という
1セッションが設けられるほど、Twitter等 のソーシャルメディアを
用いた情報発信・収集が益々注目を集めています。それらに倣って、
IUGONETではTwitterを用いた情報提供を始めました。メタデータ・
データベースや解析ソフトウェアの開発に関する進捗状況、研究集会
の案内、サイエンスの話題など徐々に充実させていきますので、ぜひ
@iugonetをフォローしていただければと思います。
(小山幸伸)
6. 地磁気世界資料解析センターホームページアクセス統計
最近までの月別および国別ホームページアクセス統計を以下に示します。本年4月以降のアクセス数増加には
主にAE指数リアルタイムプロットページへのアクセス増加が寄与しています。
<月別アクセス数>
<国別アクセス数>
7.本年の観測所地磁気データ確定/暫定値サービス統計
当センターで本年1月から11月19日までにホームページからサービスした観測所地磁気データ確定/暫定値
サービス統計です。年代別では以下のようで、1時間値は1960年代がもっとも多く、データの高時間分解能化に
対応して1分値では2000年代が、1秒値では最近の2年間が最も多くなっています。