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地磁気センターニュース


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地磁気世界資料解析センター News No.128    2011年7月29日
 
 
 
1.新着地磁気データ 
 
    前回ニュース(2011年7月29日発行, No.128)以降入手、または、当センターで入力したデータのうち、
オンラインデータ以外の主なものは以下のとおりです。
 オンライン利用データの詳細は (http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/catmap/index-j.html) を、観測所名の省略記号等
については、観測所カタログ (http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/catmap/obs-j.html) をご参照ください。
 また、先週の新着オンライン利用可データは、(http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/wdc/onnew/onnew-j.html)で
御覧になれ、ほぼ2ヶ月前までさかのぼることもできます。
 
      Newly Arrived Data
 
          (1)Annual Reports and etc.(off-line)
                NGK (May - Jun., 2011)
 
          (2)Kp index: (http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/kp/index-j.html)
                May - Jun., 2011
 
 
2.AE指数とASY/SYM指数
 
    1-5月のAE指数暫定値を算出し、ホームページに載せました
(http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/ae_provisional/index-j.html)。
また、2011年5-6月のASY/SYM指数を算出し、ホームページに載せました
(http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/aeasy/index-j.html)。
 
 
 
3.メルボルンIUGGでのIAGA決議
 
  6月28日から7月7日までメルボルンで開催された第25回IUGG(国際測地学・地球物理学連合)総会
では、IUGGを構成する8協会(association)の一つであるIAGA (International Association for Geomagnetism
and Aeronomy)が関係するセッションが、後半の7月1日から7月7日に設定されていましたので、私は、6月
30日から7月7日の8日間参加しました。IAGAにはIから Vまで5つの分科会(Division)があり、それぞれ、
地球内部電磁気、超高層大気、磁気圏、太陽風、および地磁気観測に関係する諸問題を取り扱います。この他に、
歴史に関する委員会(commission)、発展途上国に関する委員会および分野横断的に教育とアウトリーチ活動を
議論する委員会があり、学術講演とともに、これらのビジネスミーティングが期間中に開かれます。
 
        http://www.iugg.org/IAGA/iaga_pages/science/sci_structure.htm
 
ここでは、今回、IAGAで採択された決議(resolution)を紹介します。各分科会で提案・議論された決議案は、
執行部(Executive Committee)のもとに作られたResolutions Committeeで検討した上で、各国からの代表者
会議(Conference of Delegates)に提案され、採決されます。今回は4つのIAGA決議が採択されましたが、
我が国に直接関わる決議としては、当センターで算出しています地磁気Dst指数の精度維持に必要となる
地磁気観測所での精密な絶対観測の重要性に言及した下記決議(3)が含まれています。
                                     
また、IAGAからIUGGに提案された決議も1件、IUGGの決議として採択されました。国際的な学術組織で採択
されたこのような決議は、各国の状況に応じ、政府への働きかけなどで有効に活用されることが期待されて
います。過去にも多くの決議があげられましたが、それらは下記webページにまとめられています。
 
    http://www.iugg.org/IAGA/iaga_pages/Resolutions/Resolutions.htm
 
(1)磁場精密観測衛星による継続的観測の必要性についての決議
     (なお、磁場観測と重力観測の重要性をセットにした決議がIUGGの決議として採択されました。)
 
IAGA,
considering the value of continuity in magnetic satellite missions to increase our knowledge of
Earth dynamics;
noting that no successor to ESA’s Swarm mission yet exists;
urges the development of missions by national and international agencies to fill this void
for the period 2016 onwards.
 
(2)高度な実験設備を自由に使えるようにすることの重要性についての決議
 
IAGA,
considering 
the significance of experimental data necessary for understanding the magnetic field and magnetic
properties of Earth and Earth-related materials;
noting the increasing demands on technical performance of up-to-date experimental facilities,
and associated cost increases;
acknowledges the scientific value of open and free access to sophisticated experimental facilities
offered by certain research institutions.
 
(3)Dst指数およびその精度を維持するために、地磁気観測所に於ける精密な絶対観測を継続することの重要性に
      関する決議
 
IAGA,
noting the importance of the Dst index for various applications including geomagnetic field modeling,
space-weather and -climate studies and detection of local anomalous variations,
recognizing that  the absolute accuracy of the data from the contributing observatories, Kakioka,
Honolulu, San Juan, Hermanus and Alibag, is essential,
recommends that all agencies operating these geomagnetic observatories continue to support both
absolute and variation measurements to maintain the required level of accuracy.
 
(4)全世界的な地質学的研究に重要な役割を果たす磁気異常観測データの公開に関する決議
 
IAGA,
considering the importance of homogenous magnetic anomaly data coverage for global geological studies
urges the owners of airborne and marine magnetic anomaly data sets, in particular from equatorial
areas and the southern hemisphere, to release them into the public domain as soon as possible.
 
 
                                                                                      (家森 俊彦)
 
 
 
4.INTERMAGNET会議参加報告
 
   INTERMAGNET(International Real-time Magnetic Observatory Network)とは、地磁気観測に携わる研究者・技術者
が集まって、地磁気観測の国際標準やデータの配布方法を策定している国際組織です。INTERMAGNET会議は毎年夏から秋
にかけて行われており、ホスト国・ホスト機関は毎回異なります。今年はオーストラリア地球科学研究所(Geoscience
Australia)の多大な協力のもと、2011年7月9日から7月11日の3日間の日程でオーストラリア・キャンベラにて行われまし
た。この研究機関は、キャンベラ郊外のCanberra観測所(IAGAコードはCNB)をはじめとして、オーストラリア本土に6箇所、
南極などに3箇所の合計9地磁気観測所を運営しています。研究所本部には地磁気関係のスタッフが4人配置されており、
キャンベラ観測所における絶対観測はスタッフが交代で1週間に1度の頻度で行っているということです。
 
 

<写真1:今回のINTERMAGNET会議に参加したメンバー。>
 
 
  INTERMAGNETの内部組織は、次の4つに分けることができます。(1) 全体の意思決定を行うEXCON (Executive Council)、
(2) 実務を担当するOPSCOM(Operations Committee)、(3) 実際に地磁気の観測を行う100余か所のIMO(INTERMAGNET Magnetic
Observatory)、(4) IMOから地磁気データをリアルタイムで受け取り、その処理を担当する5か所のGIN(Geomagnetic
Information Node)。中枢組織であるEXCONとOPSCOMはそれぞれ4名・10名の委員からなっており、主にヨーロッパと北米の
地磁気観測関係機関のスタッフが任命されています。アジアから中枢組織への参加は日本だけで、私がOPSCOM委員の任に当た
っています。また、GINは5か所のうち1か所が日本・京都大学に設置されており、担当範囲の9箇所のIMOからのデータを受け
取って世界に向けて再配布するための業務を行っています。このように、INTERMAGNETには多くの人員・観測機関・時間が投
入されており、世界中の観測所から或る一定基準以上の質を持つ地磁気観測データを長期間に亘って生み出していくことに
大きな役割を果たしています。
 
  今回の会議で大きな議題となったのは、Quasi-Definitiveデータおよび1秒値データの収集・配布方法についてでした。
Quasi-Definitive Dataとは、データの取得後、すぐにベースラインの補正を行って公開するための、科学解析にも使える
レベルのデータです。ベースラインは過去3ヵ月以内のデータから決めたものを用い、精度としては、後日算出される
Definitive Dataとの差が1カ月平均で5 nT以下であることが求められています。1秒値のデータについては、過去5年間ほどの
会議で多くの話し合いがなされてきました。昨年あたりにようやく大枠が決定され、今年は、テスト段階ながらも実際に1秒
値のデータを収集・配布している状況の報告が行われました。イギリスやフランス、およびそれらが担当しているIMOからは
1秒値データが転送され始めています。特にオーストラリアの観測所からイギリスGINへは平均して10分以内で1秒値の転送が
継続されているそうです。日本のGINが担当しているIMOについては、柿岡・女満別・鹿屋が1秒値データのリアルタイム転送
が可能であるため、現在、関係者と実現に向けての話し合いが進んでいます。これらの1秒値データは、INTERMAGNETのホーム
ページから即時公開される予定ですが、現在はその公開のためのウェブアプリケーションを作成している段階です。また、
1分値と同じように、1秒値データを収録したDVDを毎年発行することになっており、こちらも詳細については議論が続けられて
いるところです。いずれにせよ、近い将来、品質の高い1秒値のデータが広く利用可能になると期待されます。
 
 次回の会議は、カナダ・オタワのカナダ地質調査研究所(Geological Survey of Canada)で2012年9月下旬に行われることに
なっています。3日目の会議終了後には、Canberra地磁気観測所への見学ツアーが開催されました。キャンベラから車で約30分
東に走ったところにあり、野生のカンガルーが出没するような灌木と草原が入り混じった場所です。
 
 
  
<写真2:Canberra観測所の変化観測室。                 <写真3:Canberra 観測所周辺には野生のカンガルー
         右がマスターで左がバックアップ。>                     がいる。立ち止まってこちらを警戒していた。>
 
 
  この観測所は、地磁気指数の一つであるaa指数を算出するのに不可欠なものであり、大変重要な役割を担っています。
変化計室・絶対観測室以外にも磁力計較正室・実験室・データ送信施設などが揃っており、1秒値データは八木アンテナを
用いて電波で直接研究所に送っているということでした。ここから地球の裏側のイギリスへ10分以内でデータが届くわけ
ですから、通信技術の発達やシステムの維持努力に驚かざるを得ませんでした。
 
 
                                                                                                 (能勢 正仁)
 
 
 
 
5.2011年1-6月のKp指数図表
 
  2011年1-6月のKp指数図表 (Bartels musical diagram) を下に示します。オリジナルは
http://www-app3.gfz-potsdam.de/kp_index/download.html 
の下にあります。Kp指数の数値 (1932年以降) 、及び1990年以降のKp指数図表は当センターの
http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/kp/index-j.html 
からもご利用になれます。 最新のKp指数は原則として翌月半ばには利用可能となります。