News and Announcements [in Japanese]
地磁気センターニュース


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 地磁気世界資料解析センター News No.120     2010年3月31日
 
 
 
1.新着地磁気データ
 
    前回ニュース(2010年1月29日発行, No.119)以降入手、または、当センターで入力したデータの
うち、主なものは以下のとおりです。オンライン利用データの詳細は
(http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/catmap/index-j.html) を、観測所名の省略記号等については、観測所カタログ
(http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/catmap/obs-j.html) をご参照ください。
また、先週の新着オンライン利用可データは、
(http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/wdc/onnew/onnew-j.html) で御覧になれ、ほぼ2ヶ月前までさかのぼることも
できます。
 
      Newly Arrived Data
 
        (1)Annual Reports and etc.
              SOD, OUJ, HAN, NUK (Jun. - Aug., 2010), SFS (2008), NGK (Jan. - Feb., 2010)
              Indian Obs. (ABG他10観測所) 2006, LRV (2009)
 
        (2)Kp index: (http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/kp/index-j.html)
              Jan. - Feb., 2010
 
 
 
2.AE指数とASY/SYM指数
 
 2010年2月分までの1分値ASY/SYM指数を算出し、ホームページに載せました
 (http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/aeasy/index-j.html)。
 2010年1月までのProvisional AE指数も上記アドレスからダウンロード可能です。また、2009年分を載せた
「MID-LATITUDE GEOMAGNETIC INDICES ASY and SYM (PROVISIONAL) No.20 (2009)」を出版し配布致しました。
新たに配布ご希望の方は当センターまでお申し込み下さい。
 
 
  
    <最新 (2010年1月31日) の暫定値AE指数>
 
 
 
3.データカタログNo.29の出版と配布
 
  当センターで収集・整理・サービスしております観測所地磁気データのカタログNo.29 (Feb., 2010) を
出版し、関連機関に配布しました。残部がまだ多少ありますので、新たにご希望の方は当センターまでお申し
出下さい。また、当センターのホームページからもPDF版が利用できます。
http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/wdc/pdf/Catalogue/Catalogue.pdf
なお、オンライン利用可データのカタログはこれとは別に、原則として毎週更新されており、8週間前から
先週までの新着データ一覧と共に下記URLからご覧になれます。
http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/wdc/onnew/onnew-j.html
 
 
 
4.地磁気センターパンフレットの発行について
 
  当センターの概要・地磁気の研究などについて記したフルカラーパンフレット2010年版ができました。
ご希望の方はお申し出下さい。
 
 
  
  <左からデータカタログ、ASY/SYM、センターパンフレット>
 
 
 
5.ピマイ観測所訪問記(2010.3.7-2010.3.11)
 
  地磁気の絶対観測、フラックスゲート磁力計の点検と整備、データサーバーの交換等を目的として、タイ
のピマイ大気科学観測所を訪問する、地磁気センターの家森俊彦教授、能勢正仁助教、小山幸伸研究員に、私
も同行させていただきました。2010年3月7日午前に関空発の飛行機に乗り、同日の午後バンコクに到着しま
した。帰国は、3月10日23時50分バンコク発、翌日の朝に関空到着するという強行軍の日程でした。
 
 バンコク市内で一泊した翌日、橋爪道郎教授とチュラロンコーン大学の二名の学生・トンさんとプットさん
と合流し、車で約6時間かけて観測所まで移動しました。観測所の敷地内は、一面、胸までの背丈の草が生い
茂り、磁力計が置いてあるセンサーハウスが全く見えない状態でした。
 
 センサーハウス周辺の草を刈りとっていただいた後、空が暗くなり始めてから、北極星の天測を行いました。
タイは赤道近くに位置するため、北極星は水平線近くに位置します。普段見慣れている夜空と星の位置が違う
ため、北極星を見つけるのには苦労しましたが、家森先生があっという間に見つけてくださいました。
 
  翌日、能勢先生指導のもと、地磁気の偏角と伏角の観測を行いました。観測に慣れておらず、手間取ってし
まったため、30℃を超える炎天下の中で長時間の作業となってしまいました。地磁気の伏角を計測する際に、
望遠鏡が鉛直近くになり、目盛りが読めないというトラブルも発生しました。プリズムの入ったアイピースを
使う事によって、目盛りの数十分の単位までは読み取る事ができましたが、それ以下の値は読み取れず、伏角
の観測に誤差がでてしまったことが残念でした。伏角・偏角の観測の前後には、地磁気の全磁力観測も行いま
した。
 
 
        
     <観測の様子>                                  <観測親小屋の前で。左から3番目が橋爪
                                                      教授、両端がトンさんとプットさん>
 
 
 
 観測棟では、フラックスゲート磁力計に関わる機材の点検と整備、データのサーバーとなるPCの交換等を
行っていました。トンさんがサーバーについて熱心に質問している姿が印象に残りました。
 
 また、不調だったフラックスゲート磁力計を調べるために、密閉されたセンサーハウスを開けました。セン
サーハウス内では蟻が巣を作っていました。磁力計は、保護していたビニールが蟻に食い破られ、蟻が出した
ゴミに埋もれていました。南国の昆虫の生命力の強さを感じました。結局、このフラックスゲート磁力計と、
土中に埋没されていたセンサーは、共に修理の為に京都に持ち帰ることになりました。センサーハウス内を
掃除した後、再び閉じました。
 
 3月9日には、チュラロンコーン大学およびキングモンクート工科大学の職員の皆さん4名が見学にいらっ
しゃいました。夕食は皆でタイ料理を囲みました。タイの料理は、その全てがおいしく、さらにビールも非常
においしく、旅や観測の疲れを吹き飛ばしてくれました。
 
 

<チュラロンコーン大学の皆さんと。夕食のひととき>
 
 
 この翌日の午前の二時間、ピマイを初めて訪れた小山研究員と私は、チュラロンコーン大学の皆さんに
案内していただき、ピマイ歴史公園と博物館を見学しました。ピマイ歴史公園には11-12世紀に建てられた
寺院の遺跡があります。公園は広く、緑の芝生と大きな木と遺跡が美しかったです。限られた時間の中で
しか見学できなかったのが残念でした。博物館には、仏像はもちろんのこと、ヒンドゥー教の 神である
シヴァ神やガネーシャの像・レリーフ等がたくさん展示してあり、インドの文化の影響力に驚きました。
 
 今回のピマイ訪問では、日頃使用している地磁気データがどのように取得されているのか、地磁気データ
を得ることがいかに大変であるかを、直接知ることができました。データの大切さを改めて感じ、その管理
と使用には注意を払おうと、改めて思いました。                                                  
 
 
                                                     (京都大学大学院 理学研究科 地球惑星科学専攻
                                                                          博士課程3年・寺本万里子)
                       
 
 
6.ピマイ観測所における伏角・偏角・全磁力の年変化
 
 
 
  2010年3月8日から3月9日の二日間、タイ東北部に位置するピマイ大気科学観測所(Phimai,北緯15°
11′00.2″,東経102°33′51.2″,高度210m)において地磁気絶対観測を行いました。3月8日に北極星
の天測を行い、3月9日に偏角と伏角を観測しました。観測によって偏角(D)は00°29′12.6″Wであり、
伏角(I)は17°20′29″(測定誤差±2′30″)という結果を得ました。さらに携帯用プロトン磁力計を
用いた観測から、全磁力(F)は42658.9nTという結果を得ました。                                                
 今回得られた偏角と伏角の観測結果と、過去7回(2005年4月28日:4回、2006年2月20日:1回、2008年
9月1日:2回)の結果をまとめました(図1、図2、丸印)。
 
 
        
    <図1>                                              <図2>
 
 
 偏角は西向きを正としています。×印はIGRF-11によって得られた値を示します。2010年の観測誤差は
エラーバーによって表されています。IGRF-11モデルによれば、年が経つに連れ、偏角と伏角ともに徐々に
増加しています。観測によって得られた偏角の年変化はモデルと比べ、ばらつきが見られます。一方、伏角
は、モデル値に比べ少し小さい値でしたが、 モデル値と同様に、年を経るごとに増加していることがわかり
ます。なお、図1、図2では、地磁気擾乱や日変化の影響は差し引かれていません。
 
 
  
    <図3>
 
 
 図3は、過去に8回 (2005年4月28日:5回、2006年9月28日・10月15日:各1回、2008年8月30日:1回) の
全磁力(F)の測定と今回の観測結果をまとめた図です。観測は、伏角・偏角を観測したピラー上(●印)
とピラーから北東に約7m離れた地点(◆印)、二カ所で行われています。IGRF-11モデルによると、ピマイ
観測所周辺の全磁力は年々増加する傾向がみられます(×印)。これと同様に、観測値も全磁力の増加傾向
を示しています。                              
           
                                                                                    (寺本万里子)
 
 
 
7.「超高層大気長期変動の全球地上ネットワーク観測・研究」(略称:IUGONET)プロジェクト報告
 
  日本の5機関7組織が参加しており、地磁気センターも積極的に参加しているIUGONETでは、全地球に
展開している磁力計、レーダー、光学観測装置、太陽望遠鏡等を用いた超高層大気の地上観測ネットワーク
において、これまで長年にわたって蓄積された多種多様な観測データに関するメタデータ・データベース
システムを構築しています。
 
「地磁気世界資料解析センター News No.119」発行後のIUGONETの活動の中から、2010年2月28日〜3月2日
に開催された第2回データ工学と情報マネージメントに関するフォーラム
(DEIM、http://db-event.jpn.org/deim2010/)
について紹介させて頂きます。このフォーラムが行われた淡路夢舞台国際会議場は、安藤忠雄氏によるユニ
ークなデザインの建物です。また、淡路島にかかる巨大な明石海峡大橋、大阪湾、播磨灘と見所が満載です。
 
 
  
    <淡路夢舞台国際会議場と大阪湾>
 
 
 当センターからは小山幸伸が「超高層物理学分野におけるメタデータ・データベースの構築」というテーマ
で発表を行いました。DEIMは情報系分野の若手研究者主体のフォーラムではありますが、「科学データの管理
とデータベース」というセッションもあり、分野横断的な研究を掲げるIUGONETに適した発表の場であり、
貴重な意見交換を行うことが出来ました。発表の中には、地震に関連した情報工学の話題もあり、DEIM開催
直前に起こったチリ地震の話題が発表の導入部分で多く取り上げられていました。
 
 このように地震に関する発表を聞いたこと、私の滞在ホテルがオーシャンビューだったこと、昨年の3月まで
チリで働いていたこと、が重なって非常に印象深い3日間になりました。
 
 2010年に入り、IUGONETの活動は益々活発になっております。本紙面では書ききれなかったことも多数あり
ますので、ぜひともIUGONETのホームページ(http://www.iugonet.org/)にアクセスし、進捗状況をチェック
して頂ければと思います。
 
 
           
     <iPhoneによるIUGONETホームページの閲覧>          <iPhoneにIUGONETアイコンを登録した画面>
 
 
 
                                         (小山幸伸)