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マグネトグラムと磁場変化計

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アナログ記録 (マグネトグラム/テルリグラム)

ここではマグネトグラムとは何か、またどのようにして計測・記録され、 使用にあたってはどのような点に注意する必要があるかを記す。

マグネトグラムとは、地磁気の変化がグラフの形式で記録されたもので、 フラックスゲート磁力計に代表されるような現代の磁力計データも ディジタル記録をグラフの形にすればもちろんマグネトグラムである。 しかし通常、マグネトグラムとよばれるのは、 図1に原理を示したような光学記録式のつり下げ型磁場変化計 (variometer)で得られた観測記録である。 このタイプの磁力計は非常に古くからあり、 つい最近の20年くらい前までは世界各地の地磁気観測所の多くは、 このタイプの磁場変化計を用いていた。

原理はいたって簡単で、 金属(燐青銅など)や水晶の糸に吊された小さな磁石が、 外部の磁場変化により受ける力でわずかにする回転を、 磁石に固定された小さな鏡で大きく拡大し、印画紙上に記録する。 鏡で光線の向きを変え離れた点に焦点を結ばせてわずかな回転を拡大する方法は、 傾斜計等地球物理学ではなじみ深い方法である。

から分かるように、 地磁気偏角成分(D)の測定が最も簡単で、 糸に捻りの力を加えなければ、磁石は自然とその地点の磁北を向くため、 それに垂直な力、すなわち偏角方向の力に最も敏感に回転させられる。 水平成分(H)を測定するには、 糸に捻りを与え、磁石が磁北とは垂直な方向に向け、 磁北方向の磁場変化に最も敏感になるようにする。 鉛直成分(Z)は、 上記の説明から推測されるように、 水平に張った糸に捻りを加えて磁石を水平に支える。

に示すように、 通常は3つの光源の位置を調節して、3本の光線を1枚の記録紙に集め、 時計仕掛けでゆっくり回転する印画紙上に記録する。 それゆえ、測定は暗室の中で行う。

時刻は、記録装置の側で1時間毎にタイムマークを印画紙に焼き付けたり、 光線を短時間遮って印画紙上の線を途切らせたりする。 感度は磁石の持つ磁気モーメントと糸の捻れの弾性および鏡と 記録紙までの距離に依存する。 感度すなわち記録紙上で単位長(1mm) がいくらの磁場変化(nT)に対応するかは、通常各月毎にどこかに記されている。 当センターではこのようにして得られた記録をマイクロフィルムに 複写したものを保管している。 通常、フィルムの月初めに感度等が与えられている。 ロシアの記録では、月初めのマグネトグラム上に手書きで書かれている。 マグネトグラムにはスケールを付けてマイクロフィルムに記録されているので、 記録紙上の変化分を実際の磁場変化に直すには、比例係数を求めて、 かけ算する必要がある。

変化計本体は構造が単純で故障は非常に少なく安定であるといえるが、 印画紙の交換・光源の調節等人手を要する。 大きな擾乱があると3本の線が交差して、 マイクロフィルム上では区別がつきにくいという欠点もある。 また、マイクロフィルム化する際にカメラレンズの性質で周囲が 歪んでいる場合も多いので注意を要する。

記録部の構造により、マグネトグラムには1日1枚の標準的なもの (normal run magnetogram)と、 早回し記録(rapid run magnetogram)とよばれるものが存在する。 使用にあたっては上記測定装置の原理を念頭に置いて使用していただきたい。